子どもは遊びの中で世界を知り、手を使いながら「感じる力」と「考える力」を育てていきます。
積み木を重ねる、小さなものを集める、折り紙を折る──これらは単なる遊びではなく、脳と身体の発達を支える大切なプロセスです。
1歳頃は「めちゃくちゃ描き」や「水遊び」など、感覚的な探索が中心ですが、年齢を重ねるごとに、ごっこ遊びや工作、そして複雑な創造へと発展していきます。さらに7〜8歳になると、子ども自身の中に「こうしたい!」という明確な目的が芽生え、遊びが計画的・協働的な活動へと変わっていきます。
本記事では、1歳から8歳までの探索・操作の発達を月齢ごとに整理し、男女の傾向や背景となる脳の発達にもふれながらわかりやすく解説します。お子さんの成長を見守るうえでのヒントとして、ぜひご活用ください。
🧠 探索・操作の発達一覧(0〜7歳)
🍼 1歳前後(12〜24か月)
| 月齢 | 主な操作行動 | 特徴 |
|---|---|---|
| 12か月 | ・鉛筆でめちゃくちゃ書きをする | 自分の動きが紙に残ることに興味を持ち始める |
| 15か月 | ・高いところから物を落とす ・水遊びを好む ・小物を容器に入れたり出したりする ・扉を開け閉めする | 原因と結果を楽しむ探索行動が活発に |
| 18か月 | ・積み木を2〜3個重ねる ・紐でおもちゃを引っ張る ・車に見立てて押して歩く ・砂遊び(水・容器の移し替え) ・家具の下や箱に入る ・大人の掃除を真似る | 見立て遊びや模倣が始まる |
| 21か月 | ・ぐるぐる丸を描く ・物を包んで遊ぶ ・おもちゃの電話で「モシモシ」 ・ボールの投げ・受け遊び ・人形を抱いたりおぶったり | イメージ遊び・社会的模倣が発達 |
| 24か月 | ・積み木を横に2〜3個並べる ・ままごと道具を並べる | 並べる・整えるといった秩序的操作が出現 |
🚼 2〜3歳(30〜42か月)
| 月齢 | 主な操作行動 | 特徴 |
|---|---|---|
| 30か月 | ・乗り物ごっこ、ままごとごっこ ・ハサミで紙や布を切る | ごっこ遊びの拡がりと初歩的な道具操作 |
| 36か月 | ・積み木でトンネル・門を作る ・丸や顔の絵を描く ・のり貼り ・積み木のスリルを楽しむ ・木の実を集める ・消防車や線路など見立て遊び ・歌を作って歌う | 創造力と構成力が急速に伸びる時期 |
| 42か月 | ・砂遊び(女子)/トンネル・線路作り(男子) ・紙飛行機に挑戦(男子) ・釘打ち(男子) ・黒板に絵(女子) ・ハサミで形を切る(女子) | 男女差が見え始める。集中した工作・構成遊びが増える |
👧 4〜5歳(48〜60か月)
| 月齢 | 主な操作行動 | 特徴 |
|---|---|---|
| 48か月 | ・友達と会話しながら工作 ・紙飛行機(女子) ・黒板に絵(男子) | 協働・社会的な遊びが強まる |
| 54か月 | ・砂場で川・池を作る(男子) ・線路づくり ・ハサミ・のりで簡単な制作 ・「昨日の続き」で遊ぶ ・イスや積み木で構造物を作る | 継続的な構成遊び、想像力の定着 |
| 60か月 | ・絵にモチーフを描く(花・電車など) ・飛行機を折る(男子) ・虫取り(男子) ・ピアノを自由に弾く(女子) | 想像の世界を形にする力が強くなる |
🧒 5〜6歳(66〜78か月)
| 月齢 | 主な操作行動 | 特徴 |
|---|---|---|
| 66か月 | ・飛行機の折り方・飛ばし方を工夫(男子) ・虫集め(男子) ・経験したことの絵 | 創造性と再現力が伸びる |
| 72か月 | ・虫取り(女子) ・地図や地球儀に興味(男子) ・絵の具で描く(女子) | 興味・好奇心がより抽象的な対象へ |
| 78か月 | ・釘打ち(女子) ・砂場の線路づくり(女子) ・のこぎり(男子) ・簡単な模型制作(男子) ・折り紙・楽譜の読み(女子) | 手先の器用さと構成力の完成期 |
👦 6〜7歳(84か月)
| 月齢 | 主な操作行動 | 特徴 |
|---|---|---|
| 84か月 | ・模型制作(女子) ・折り紙(男子) ・ピアノ演奏(男子) ・地図や地球儀への興味 | 趣味・特性が分化しやすい年齢 |
📝 特徴まとめ(横断的視点)
| 領域 | 発達の流れ |
|---|---|
| 感覚・運動 | 落とす・入れる → 並べる → 積む・切る → 絵・工作へ発展 |
| 模倣・象徴 | 大人のまね → ままごと・ごっこ → 想像・創作へ |
| 道具操作 | 容器 → 積み木 → ハサミ・のり → 釘・のこぎり・模型 |
| 興味の広がり | 感覚遊び → ごっこ → 集団遊び・制作 → 趣味的活動 |
🧠 探索・操作の発達 一覧表(男女別)
| 月齢 | 共通の操作・遊び行動 | 男子の特徴 | 女子の特徴 |
|---|---|---|---|
| 12か月 | めちゃくちゃ書き | ー | ー |
| 15か月 | 物を落とす、水遊び、小物の出し入れ、扉の開閉 | ー | ー |
| 18か月 | 積み木2〜3個、引っ張る遊び、砂遊び、水の移し替え、真似 | ー | ー |
| 21か月 | ぐるぐる丸、人形あそび、電話ごっこ、ボール遊び | ー | ー |
| 24か月 | 積み木を並べる、ままごと道具を並べる | ー | ー |
| 30か月 | ごっこ遊び、ハサミで紙を切る | ー | ー |
| 36か月 | 積み木でトンネル・門、顔の絵、のり貼り、木の実集め、見立て遊び、歌う | 消防車・線路・ハンドル遊び、砂山・型抜き、長時間砂場遊び | ままごと遊び(家庭的な動作)、きれいなものへの感心、砂遊び、長時間砂場遊び |
| 42か月 | 紙飛行機、釘打ち、砂・線路・トンネル遊び | 紙飛行機に挑戦、積み木で線路・駅、釘打ち | 砂遊び(型抜き・山)、ハサミ、黒板に絵 |
| 48か月 | 友達と工作、会話を交えた遊び | 黒板に絵 | 紙飛行機に挑戦 |
| 54か月 | ハサミ・のり工作、「昨日の続き」遊び、砂遊び(池・川) | 砂場で水流し、線路・山づくり | 小物集め、家具遊び(寝台・応接セット) |
| 60か月 | 絵を描く(電車・花など)、虫取り、ピアノ遊び | 飛行機折り、虫捕り、小物集め | ピアノを自由に弾く、砂遊び(トンネル・川) |
| 66か月 | 飛行機の工夫、虫集め、経験したことの絵 | よく飛ぶように折り方を工夫、虫あつめ | 飛行機折り |
| 72か月 | 地図・地球儀への興味、絵の具遊び、虫取り | 地図・地球儀に興味 | 絵の具で描く |
| 78か月 | 模型制作、折り紙、釘打ち、絵の具 | のこぎり工作、模型作り、絵の具 | 釘打ち、砂場工作、折り紙、ピアノ演奏、簡単な楽譜 |
| 84か月 | 模型制作、折り紙、ピアノ演奏、地図・地球儀 | 折り紙、ピアノ演奏 | 模型作り、地図・地球儀への興味 |
📝 男女別の傾向まとめ
| 項目 | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| ごっこ遊び | 乗り物・線路・構造物の見立て遊び | 家庭的ままごと、生活シーンの再現 |
| 工作・操作 | 積み木・釘・のこぎり・紙飛行機・模型 | 折り紙・ハサミ・のり・ピアノ・砂遊び |
| 興味の対象 | 乗り物・道具・構造 | 美的・感覚的な要素(きれい・色・形) |
| 集中・持続 | 工作や線路づくりに長時間集中 | 砂遊びや創作遊びに長時間集中 |
| 抽象的興味 | 地図・地球儀・模型(6歳〜) | 折り紙・楽譜・ピアノ・地球儀(6歳〜) |
1歳前後(12〜24か月)の「操作」の発達

この時期の子どもは、身のまわりの「もの」を通じて世界を学んでいきます。
積み木を重ねたり、ドアを開けたり閉めたり、水をこぼしたり……。
大人にとってはちょっとした「いたずら」に見える行動も、実は脳と手の協応(目と手の連携)を育てる、とても大切な発達過程なのです。
12か月ごろ:「めちゃくちゃ書き」からはじまる探索
1歳前後になると、鉛筆やクレヨンを握って紙の上に線を引こうとする姿が見られます。まだ意図的な形ではなく、いわゆる「めちゃくちゃ書き」。
しかし、この「線を引く」という行為こそ、手の巧緻性(細かな動き)と感覚運動の統合の始まりです。
- 鉛筆で紙に線をなぐり描きする
- 手首や腕を使って、大きな弧を描くような動きが増える
- 自分の行為が「跡」として残ることを楽しむ
👉この時期の行動は、脳内で「運動と結果」の対応関係を形成する重要なプロセスとされています(視覚—運動協応の基礎)。
15か月ごろ:入れる・出す・こぼすを楽しむ
この頃になると、より複雑な操作ができるようになります。
「高いところから物を落とす」「コップに入れる」「水をこぼす」といった行動が盛んになります。
- 高いところ(階段や窓など)から物を落とす
- 小さなものをコップやビンに入れたり出したりする
- 水遊びを好み、水をこぼすことを楽しむ
- 障子やふすま、扉を自分で開け閉めする
👉落とす・入れる・出すなどの反復行動は、「原因と結果の理解」を深め、空間認知力や手先の操作スキルの発達を促します。
18か月ごろ:再現と模倣があそびの中心に
1歳半になると、積み木を2〜3個積む、紐を引っ張って歩くといった動作が増えます。
大人のまね(掃除のまね・運転のまね)も活発になります。
- 積み木を2~3個積む
- おもちゃを紐で引いて歩く
- 何でも車に見立てて押して歩く
- 砂遊びが始まり、容器に砂を入れたり出したりする
- 水をコップからコップへ移して喜ぶ
- 机やイスの下にもぐる、箱の中に入るなど空間探索を楽しむ
- 母親の掃除をまねる
👉この時期は、運動計画(motor planning)が急速に発達する時期です。模倣行動は「社会的学習」の入り口でもあります。
24か月ごろ:並べる・組み合わせる
2歳になると、ものを並べたり、ままごとセットを使って遊んだりと、遊びの中に「意図」が出てきます。
- 積み木を横に2〜3個並べる
- ままごと道具を並べて遊ぶ
- 並べる順序や形にこだわる姿も見られる
👉この頃の「並べる」は、空間認知・構成能力の発達を反映しています。また、想像力の萌芽が見られる時期でもあります。
1歳前後の発達における科学的背景
この時期は、感覚運動期と呼ばれ、感覚と運動の統合が急速に進む時期です。
- 前頭前野と頭頂葉の協応が始まり、目と手の協調(視覚運動統合)が発達。
- 手の巧緻性(fine motor skill)が、探索的操作を通して伸びていく。
- 原始反射が消失し、随意運動が主流になることで、より意図的な行動が増える。
👉特に「落とす」「入れる」「描く」といった単純な反復は、神経ネットワークの強化に直結する重要な遊びです。
まとめ
1歳前後の子どもの操作行動は、「ただの遊び」ではなく、脳の発達と学習の土台をつくる非常に重要なステップです。
落とす・こぼす・描く・並べる――こうした行動を大人が見守り、環境を整えることで、子どもの発達は自然と広がっていきます。
2〜3歳(30〜42か月)の「操作」の発達

2〜3歳になると、子どもは「再現」や「まねっこ」を超えて、自分の意図をもって操作する力が急速に伸びていきます。
積み木で形を作る、ハサミを使う、ままごと遊びに物語性が出てくる――。
この時期は、単なる感覚運動期から「前操作期」への移行段階であり、思考と操作が結びつく大事な発達の節目です。
30か月ごろ:ごっこの芽生えと手先の分化
2歳半になると、「乗り物ごっこ」や「ままごとごっこ」が盛んになり、ハサミなどの道具も扱い始めます。
操作の中に「想像」が入り、行動にストーリー性が生まれていきます。
- 乗り物ごっこ、ままごと遊びをよくする
- ハサミで紙や布を切る(細かくは切れなくても、自分でやろうとする)
👉この頃は、前頭前野と運動野の連携が強まり、道具の使用が進みます。手の巧緻性が飛躍的に伸びる時期です。
👉また、ごっこ遊びの中で社会的役割やストーリーを理解する力も育ち始めます。
36か月ごろ:構成遊びと物語的な遊びの広がり
3歳になると、積み木やクレヨンの扱いがさらに発達します。
積み木で「トンネル」や「門」のような形を作ったり、「顔」のような絵を描いたりと、操作に構成力と象徴性が加わります。
- 積み木でトンネル・門の形をつくる
- 鉛筆やクレヨンで丸を一つ描く(意図的な形)
- 顔らしい絵を描き、目や口をつける
- のりを使って貼る
- 積み木を高く積んで倒れそうになるスリルを楽しむ
- 木の実・ドングリを集める
- ままごと遊びに必要なものを積み木で作る
- 砂遊びがさらに発展(山・型抜き・長時間遊ぶ)
- 想像した乗り物(車・消防車など)で遊ぶ
👉この時期は構成能力と象徴的思考の爆発期です。
👉積み木や砂遊びには、空間認知・構成スキル・想像力が複合的に関与しています。
男女の特徴傾向(36か月前後)
- 男子傾向:砂遊び・積み木・乗り物遊び・構築遊びへの関心が高い。乗り物(消防車・線路・車庫など)を想像して遊ぶ姿が多い。
- 女子傾向:ままごと遊びが盛んになり、起きる・寝る・食事するなど「生活の再現」が豊かになる。
👉男女差は個人差が大きいものの、この時期に見られる「遊びの傾向」は、その子の興味や認知スタイルの個性を知るヒントにもなります。
42か月ごろ:創造性と集中力が高まる
3歳半を過ぎると、絵を画用紙いっぱいに描いたり、砂遊びや積み木遊びに30分以上集中できる子も出てきます。
また、ハサミで簡単な形を切ったり、紙飛行機を折ろうとする姿も見られます。
- 画用紙いっぱいに絵を描き、色を塗る
- 紙飛行機を折ろうとする(完成度は低くても意図がある)
- 積み木で線路や駅を作って30分以上遊ぶ
- 砂山にトンネルを作る
- 釘打ち(木片に金づちを打つ)なども始まる
- ままごと遊びで生活場面を再現
- ハサミで簡単な形を切り抜く
👉この頃には、**運動計画能力(motor planning)**がさらに高まり、手先を使った活動に集中できるようになります。
👉作品や遊びの中に「意図」「構成」「ストーリー」が見えるようになり、認知発達が質的に変化している段階です。
2〜3歳の発達における科学的背景
この時期は、感覚運動から象徴的操作への移行期。
- 頭頂葉・小脳・前頭前野の連携が強まり、空間認知と手の操作精度が向上。
- 視覚—運動協応の発達とともに、**構成的な遊び(constructive play)**が増える。
- 象徴的な遊びが、言語発達と並行して広がっていく。
👉手先を使った操作遊びは、この後の「読み書き・空間認知・論理的思考」の土台となります。
まとめ
2〜3歳は「自分の意図をもって操作する力」がぐんと伸びる時期です。
積み木・ハサミ・砂遊び・ままごとといった遊びは、楽しみながら**脳のネットワークを広げる「学びの土台」**です。
大人が環境を整え、失敗を見守ることで、子どもの創造力と集中力は大きく伸びていきます。
4〜5歳(48〜60か月)の「操作」の発達

4〜5歳になると、子どもの手先の操作はより正確になり、意図をもって作品を作る力が育っていきます。
積み木や砂遊びといった基本的な操作に加え、ハサミ・のり・折り紙などの複合的な道具の使用が進み、想像したものを形にできるようになります。
また、集中力が高まり、30分以上ひとつの活動に没頭する姿も見られるようになります。
48か月ごろ:共同的な遊びと表現の広がり
4歳になると、遊びに「仲間」が加わり始めます。
お友達と会話を交わしながら、積み木や紙飛行機、黒板などを使って一緒に遊ぶようになります。
- 友達同士で会話しながら何かを作る
- 紙飛行機を自分で折ろうとする(細部への注意はまだ曖昧)
- 黒板やホワイトボードに絵を描く
👉この時期は「協働的な構成遊び」の始まり。前頭前野の社会的認知と運動機能が結びつき、他者と共有する遊びの世界が広がっていきます。
54か月ごろ:複合的な道具の使用と「遊びの継続性」
4歳半ごろには、ハサミやのりを併用して工作を楽しむ姿が増えてきます。
「昨日の続きをしよう」といったように、遊びに持続性と計画性が出てくるのもこの頃です。
- 砂場に池や川を作り、水を流すなどして遊ぶ
- ハサミとノリで簡単なものを作る
- 科学図鑑などの絵を興味をもって見る
- 「昨日の続きをしよう」と言って遊びを展開する
- 小さなものを集めてためる(収集行動)
- 椅子や積み木で寝台や応接セットを作る
👉空間認知・手の巧緻性・構成力・記憶力の発達が複合的に絡み合い、遊びが一過性ではなくプロジェクト化していきます。
60か月ごろ:創造力の爆発期
5歳前後では、想像したものを自分で表現する力が大きく伸びます。
絵、砂遊び、虫取り、ピアノ遊びなど、領域を横断した操作活動が活発化します。
- 思ったものを絵に描く(電車・花・人など)
- 紙飛行機を自分で折る
- 虫取り網で蝶やバッタを捕まえる
- 想像したものを絵で表現
- ピアノを好きなように弾く
👉この頃には、視覚—運動協応・空間認知・感情表現が統合され、創造的な活動が大きく発展します。
👉また、集中力が高まり、制作物の完成度も目に見えて上がります。
男女の特徴傾向(48〜60か月)
- 男子傾向:虫取り・飛行機・線路や構造物の工作など、探索的・構築的な遊びが多い。
- 女子傾向:ままごと・ごっこ遊び・折り紙・ピアノなど、再現的・表現的な遊びが多い。
👉この男女差は固定的なものではなく、「興味・関心の方向性の傾向」としてとらえるとよいでしょう。
4〜5歳の発達における科学的背景
この時期は、象徴的遊びが最も豊かになる時期です。
- 頭頂葉・小脳・前頭前野の機能がさらに成熟し、空間構成能力や計画性が高まる。
- 手の巧緻性と運動計画能力の発達により、複合的な道具使用が可能になる。
- 遊びを通して記憶・言語・社会性・創造性が相互に発達していく。
👉特に、**「遊びの中で意図を形にする力」**は、この時期の大きな発達的飛躍です。
まとめ
4〜5歳は、遊びを通して「想像を現実にする力」が急成長する時期です。
複数の道具を使いこなし、友達と協働しながら作品や物語を作り上げることができます。
この時期に十分な遊びの機会と道具を与えることは、将来の創造力・論理的思考・社会性の基盤をつくるうえで非常に重要です。
5〜6歳(66〜78か月):創造力と巧緻性がぐんと伸びる時期

この時期の子どもは、目と手の協応(協調運動)がさらに洗練され、より細かな操作や複数工程の作業ができるようになります。
また、遊びの中ではイメージを現実の形にうつし出す力が育ち、「ただ遊ぶ」から「作品をつくる」段階へと移行します。
🧠 発達の背景
5〜6歳になると、脳の運動野・頭頂葉・前頭葉のネットワークが成熟し、空間認知力や作業記憶の精度が高まります。
この時期は「プランニング能力(計画して形にする力)」の基盤が強化される重要な時期です。
また、**微細運動能力(fine motor skills)**も大きく発達するため、ハサミやのこぎりなどの道具操作、折り紙、模型づくりなど「正確さ」が求められる遊びにも夢中になります。
これは、将来的な学習行動(文字を書く・図形を描く・算数的操作など)にも直結する発達です。
🧒 66〜78か月ごろの主な探索・操作遊び
| 月齢 | 主な操作・遊び行動 | 男の子に多くみられる傾向 | 女の子に多くみられる傾向 |
|---|---|---|---|
| 66か月 | 飛行機の折り方や形を工夫する、虫集め、経験を絵に描く | 飛行機の形を競う・虫集めなど観察・収集活動 | 絵日記のように経験を絵で表す遊びが増える |
| 72か月 | 地図・地球儀に興味、虫取り、絵の具あそび | 地図を広げて場所を探すなど空間遊び | 絵の具を使った色表現、模様づくり |
| 78か月 | 釘打ち、砂場での構造工作、のこぎり・折り紙・ピアノ | 工具・構造物の制作、実験的な遊び | 折り紙や工作、ピアノなどの繊細な操作遊び |
🌱 男の子と女の子の傾向差
5〜6歳になると、興味の方向性と遊びのスケールに明確な差が現れることがあります。
- 男の子は「構造物」「空間」「仕組み」に興味をもち、虫・地図・工具・乗り物といった“外向き”の活動が増えやすい傾向があります。
- 女の子は「表現」「感情」「細やかな手仕事」に興味をもち、絵・折り紙・音楽・ごっこ遊びの精度が高くなっていく傾向があります。
もちろん、これは統計的な傾向であり、個人差が大きいことが大前提です。大切なのは子ども自身の“好き”を起点に環境を整えることです。
🧠 支援・環境づくりのポイント
- ✅ 多様な素材(木材・紙・粘土・絵の具・工具など)に触れられる環境を整える
- ✅ 安全性を確保しながら「道具を使う経験」を積ませる
- ✅ 完成度を求めすぎず、「自分なりの工夫」を尊重する
- ✅ 興味に合わせて発展的なテーマ(地図→旅、虫→図鑑づくり など)につなげる
このような環境を整えることで、**「創造力」「自己効力感」「集中力」**といった、学びの土台になる力が自然に伸びていきます。
7〜8歳(84〜96か月):複雑な構想と「自分の世界」をつくる時期

この時期の子どもたちは、単なる「工作」や「ごっこ」からさらに一歩進み、構想力と計画的な作業能力が大きく伸びていきます。
「こういうものを作りたい」「こういうふうに遊びたい」という目的意識がはっきりし、遊びがより社会的・創造的な活動へと広がっていくのが特徴です。
🧠 発達の背景
7〜8歳になると、脳の前頭前野や頭頂葉のネットワークがさらに発達し、論理的思考や因果関係の理解が深まります。
また、**両側の大脳半球の連携(脳梁の成熟)**が進むことで、右脳的なイメージ力と左脳的な言語・論理力を組み合わせることが可能になっていきます。
この時期の特徴的な変化は、
- 作業を複数ステップに分けて実行できる
- 他者と役割分担をして協働できる
- 興味のある分野で深く集中できる
といった、いわゆる「自己主導的な学び」の芽生えです。
🧒 84〜96か月ごろの主な探索・操作遊び
| 月齢 | 主な操作・遊び行動 | 男の子に多くみられる傾向 | 女の子に多くみられる傾向 |
|---|---|---|---|
| 84か月 | 模型づくり、折り紙、ピアノ演奏、地図・地球儀への興味 | 構造物・模型作り、地図・乗り物・冒険系への興味 | 折り紙や装飾的な工作、音楽・リズム活動 |
| 90か月 | 図鑑・地図・虫・鉄道など興味分野を深掘り、友だちとの共同制作 | 図鑑を見ながら虫取りや探検をするなど実践的活動 | 工作・絵・物語づくりなど表現を深める |
| 96か月 | 図面を描く・模型を組み立てる・グループでテーマ遊び | プロジェクト的な遊び(基地・ロボット・鉄道など) | グループごっこ・劇あそび・装飾・企画づくり |
🌱 男の子と女の子の傾向差
7〜8歳になると、興味や活動の内容がさらに専門的・個性的になり、遊びの「テーマ性」と「スケール」が広がります。
- 男の子は「構造的・システム的」な興味(模型・機械・地図・探検)が強まりやすく、仕組みを考える遊びが活発になります。
- 女の子は「表現・感情・関係性」を重視する傾向があり、劇あそび・工作・音楽などの共同的で創造的な遊びが豊かになります。
この頃には性差による遊びの方向性がより明確になりますが、いずれの遊びも認知・感情・社会性の発達を促す重要な活動です。
🧠 支援・環境づくりのポイント
- ✅ 子どもの興味の「テーマ」をよく観察し、それを深めるための素材や環境を整える
- ✅ 自分で考えて計画し、形にできる機会をつくる
- ✅ 仲間との協働をサポートし、役割を尊重する
- ✅ 「完成度」よりも「過程」を大切にすることで、達成感と自己効力感を育てる
このような環境づくりは、創造性(creativity)・実行機能(executive function)・社会的スキルの成長に大きく寄与します。
まとめ
探索・操作の発達は、単に「器用になる」ことではなく、脳と心、身体の成長をつなぐ大切なプロセスです。
1歳では感覚的な探索からはじまり、2〜3歳では象徴的なごっこ遊びへ、5〜6歳では創造と工夫が広がり、7〜8歳では自分の意図を形にする力が育っていきます。
こうした遊びを通して、子どもは空間認知力や計画力、社会的スキル、創造力など、学習や生活の土台となる力を自然に身につけます。
大人がしてあげるべきことは、特別なことではなく、自由に遊び・試し・工夫できる環境を用意すること。
「遊び」は、子どもにとって最高の学びの時間です。
月齢・年齢に応じた成長の目安を知ることで、焦らず、その子らしいペースで見守ることができるようになります。


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