発達障害のお子さんのなかには、文字や図形の問題を抱えている子がいます。
これから解説する話は、こういったお子さんの問題を解決するために必要となる内容です。
意外かもしれませんが、形の把握には、見てその形を認識するだけでなく、実は、体の動きも重要となってきます!
考えてみてください。
丸や四角を書くとき、手を動かします。どの方向に、どの程度手を動かせばよいのか、目で見た(あるいは頭で想像した)形を、手の運動に置き換えているのです。
形を把握するということは、運動や空間を把握することでもあるわけです。
これを踏まえて、形や図形の把握、模写の適切な時期の解説と、形の把握についての発達をどのように促せばよいのか、実践方法も合わせて解説します。
0歳
生活の中で、形状、形態、構造などに対する認識をつちかっていきます。
実践方法
子どもが自分で動いて、体から色々な感覚を実感する環境を整えます。
見る :動きの面白いものをみるおもちゃが良いでしょう。
さわる:いろいろな形、大きさ、硬さなど安全に配慮したうえで触ることが効果的です。
1歳
1歳半ころになると、はめ込み遊びや簡単なパズルなど、同じ形のものにはめ込むことができるようになります。空箱にものをいっぱい入れて遊ぶといったことを好んでおこないます。
また、なぐり書きや落書き(スクリブル)が始まるのも1歳ころからです。
実践方法
体を使った遊び :手遊びやリズム遊び、飛び跳ねたりするダイナミックな動きを使った遊びをする
ボール転がしなどで、距離感や体の動きをやしなう。
パズル・型はめ遊び :大きなピースのモノやデコボコしたようなものなどを用いて形にはめ込む。
ほかにもアート・ダンスなど、見たり、触ったり、動いたりすることで感覚を養う。
2歳
2歳ころになると「○」や線が描けるようになります。
2歳半ころからは、形や空間に対して興味が出始め、形を考えたり、物を組み合わせたり、積み上げたりする遊びに興味が出始めます。
形に関する言葉にも興味を覚え、それについて話しだします。
実践方法
きれいに並べたり、形によって分類する遊び:ケースや箱などにコインなどを分類しながら入れる
3歳
図形①まるは、ほぼ100% 模写ができます。
図形②十字、図形③ばつは、およそ50%の子が模写を行うことができるようになります。
実践方法
・正方形、長方形などの形状のパターンを認識させる:ナプキンやタオルをたたむ、簡単な折り紙等。
・生活のなかで、形状、位置、尺度に関連する言葉(ボールの形、箱の形、中に入れる、上下、長い、短い等)を使いながら、習得させる。
3歳4か月から5歳にかけて
3歳4か月からそれ以降にかけて、次のようなことができるようになってきます。
実践方法
・ものを比較する際に「大きい」「小さい」「重い」「軽い」などの言葉を使う。
・位置や方向に関することば「前」「後ろ」「上」「下」などを使ったゲーム、おもちゃ。
・日常の生活の中から、形に関連する物について話す。
この3歳4か月から5歳にかけての成長を土台として、形や模写の発達の様子を年代別に見ていきます。これ以降の実践方法は上記の実践方法にプラスアルファしたものと、とらえて下さい。
4歳
図形①まる、図形②十字、図形③バツは、ほぼ100%の子が模写できるようになります。
図形⑤重なる丸は、89%の子が模写できます。
図形④四角は、およそ14%の子が模写できます。
実践方法
・様々な大きさの同じ形の物を使って遊ぶ。
・室内や屋外で箱などを使い、隠れ家などを作る遊びをする。
・散歩や外遊びの中で、場所、位置を表す表現を使い、説明する。
5歳
この年齢では、四角を確実に見分けることができます。一方で、三角を見分けるのは四角より後です。
模写については次の通りです。
図形① ② ③は100%の子ができます。
図形⑤重なる丸は、94%が模写できます。
図形⑥と⑦は、50%以上の子が模写できます。
一方で、図形④四角は45%の子が模写できます。
実践方法
・子どもたちが自由に物の長さを測ったり、色々な形を体験できるスペースを作る。
・形状に関する子どもの興味、観察:類似点と相違点を答えさせる。似ている物と違う物を見分けるあそび。
・位置や関係性を考え、マッチングする能力を養うための似ている形探し
6歳
ここにあがった図形のすべてを60%の子が模写できます。
一方で、正三角形や菱形はまだまだ難しい描画課題となります。
・位置や方向を示す手がかりを探す:例えば、「公園を周って、店を通りすぎて、」など
・周囲環境や自然の中で、形や長さ、重さや様々なパターンを見つける遊び
・散歩や外遊びの中で、場所、位置を表す表現を使い、説明する。
まとめ
図形は3歳を過ぎたころから、形の認識や立体への理解などがぐんぐん深まっていきます。おもちゃをつかうことによって楽しく学習できます。
年齢が上がってくるにしたがって、それを言葉で説明することも重要になってきます。
たのしく遊びながら学ぶための学習教材も有効です!
そして、もっとも重要なことが「日常の中」で学ぶ機会を設けることです。同じ形のものを探す、カテゴリーに分ける、大きい・小さい、どの方向になにがあるなど、親から子へ、子から親へといろいろな機会を作ってコミュニケーションをとることで、自然に学んでいきます。
子どもに良い学びの機会を!
こんな知育教材もありますよ!
形を認識する能力、思考力、そしてアートなど、記事で解説したことがふんだんに含まれています!
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思考力、アート、おもちゃの教材により感覚を刺激する。あたらしい教育プログラムです。
引用文献
・森知子,中川香子:子どもの数量・図形の理解に関する研究:保育内容の指導法考案に向けた発達過程表の作成.聖和短期大学紀要(4).56-63.2018
・横井一之他:領域「環境」における日英比較-幼稚園での数量や図形指導に注目して-.7-28
・島田由紀子:チェコ共和国の子どもによる図形の見立て(2)描画の特徴と性差. 和洋女子大学紀要 53.167-178.2013
・石岡由紀:幼児における図形模写能力の発達. 九州ルーテル学院大学発達心理臨床センター年報(2).51-57.2003
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