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「逆上がりができない」は筋力不足だけじゃない?DCDの子どもに合った練習法

目次
  1. 発達性協調運動障害(DCD)とは
  2. 逆上がりが難しい理由(発達性協調運動障害の視点から)
  3. 逆上がりの練習方法
  4. DCD(発達性協調運動障害)の子どもに有効な「逆上がり」練習法
  5. 「逆上がり」段階的プラン(実例:4段階)
  6. 逆上がり習得のための段階的トレーニングプログラム(例:12週間)
  7. まとめ
もっと知りたい小児の知識

「どうしてもうちの子は逆上がりができないんだろう…」
小学校の体育の時間や公園の鉄棒で、何度挑戦しても上手く回れず、悔しそうな顔をしているわが子を見て、胸が締めつけられる思いをしたことはありませんか?

逆上がりは、ただ腕の力や腹筋があればできるものではなく、体のバランスをとりながら、タイミングよく腕で引き上げ、足を蹴り上げるという複雑な協調運動です。そのため、発達性協調運動障害(DCD)のある子どもにとっては特に難しく、繰り返す失敗が「運動嫌い」や「自信のなさ」につながってしまうこともあります。

この記事では、DCDの子どもが逆上がりを苦手とする理由と、少しずつ成功体験を積み重ねていくための練習の工夫について解説していきます。

  1. 発達性協調運動障害(DCD)とは
  2. 逆上がりが難しい理由(発達性協調運動障害の視点から)
    1. 1. 「先読み」が苦手
    2. 2. 体の位置がわかりにくい
    3. 3. 体幹の安定とバランスの難しさ
    4. 4. タイミングのズレ
    5. 5. 練習しても上達しにくい
    6. 6. 心の影響も大きい
    7. まとめ
  3. 逆上がりの練習方法
    1. ① 腕の引きつけを練習する
    2. ② 足の振り上げを練習する
    3. ③ タイミングをつかむ
    4. ④ 分解練習を組み合わせる
    5. ⑤ 環境を工夫する
  4. DCD(発達性協調運動障害)の子どもに有効な「逆上がり」練習法
      1. なぜこのアプローチが必要か
    1. 実際に効果が期待できる練習法
      1. 1)**課題の分解(part-practice)**を行う
      2. 2)外的フィードバック(視覚・聴覚・触覚)を分かりやすく使う
      3. 3)物理的補助(支え)を段階的に使う
      4. 4)モーターイメージ(心の中で動く練習)と行動観察(動画・模倣)
      5. 5)視線(gaze)や注意の訓練
      6. 6)感覚(固有感覚・前庭)を強化する遊び
      7. 7)筋力・体幹の機能訓練は“課題練習とセットで”行う
      8. 8)練習の進め方:短く、頻度を高く、成功体験を重視する
      9. 9)学習のフェーズに合わせて「変化(バリエーション)」を導入する
  5. 「逆上がり」段階的プラン(実例:4段階)
    1. さらに効果を高めるアドバイス
    2. まとめ
  6. 逆上がり習得のための段階的トレーニングプログラム(例:12週間)
    1. Stage A:準備期(Week 1–2/基礎づくり)
    2. Stage B:要素練習期(Week 3–6)
    3. Stage C:補助付きフル動作(Week 7–10)
    4. Stage D:安定化・汎化(Week 11–12以降)
      1. 練習メニューのコツ
  7. まとめ

発達性協調運動障害(DCD)とは

発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は、「不器用さ」が日常生活や学習に影響を及ぼす発達特性のひとつです。走る・跳ぶ・書く・着替えるといった動作がぎこちなく、同年代の子に比べて時間がかかることがあります。

背景には、小脳・前頭葉・基底核といった脳の働きの違いが関わっていると考えられており、単に「努力不足」や「運動神経が悪い」だけでは説明できません。

逆上がりは、腕の筋力だけでなく、タイミングよく足を蹴り上げる協調性、体幹の安定、そして自分の体の位置をつかむ感覚(身体感覚の統合)が求められるため、DCDのある子どもにとって特に難しい課題のひとつなのです。

逆上がりが難しい理由(発達性協調運動障害の視点から)

「逆上がりって、腕の力さえあればできるんじゃないの?」と思われる方も多いかもしれません。実はそうではありません。逆上がりは、筋力だけでなく、タイミング・体幹の安定・感覚の働きなどが複雑に組み合わさった高度な運動なのです。

発達性協調運動障害(DCD)のある子どもにとって、この動きは特に難しく感じられることが少なくありません。その理由をいくつかの視点から見てみましょう。


1. 「先読み」が苦手

逆上がりでは、鉄棒にぶら下がった瞬間から「腕で体を引き上げる」「足を蹴り上げる」「体を丸める」といった動きを一気に連動させる必要があります。
私たちの脳は、動作を始める前に「このあと体がどう動くか」を予測(=内部モデル)して準備しています。
しかしDCDの子どもはこの予測が苦手なため、動き出しが遅れたり、力を入れるタイミングがずれてしまうのです。


2. 体の位置がわかりにくい

逆上がりは「自分の体が今どこにあるか」を感じ取る力(=固有感覚)がとても大事です。
DCDの子どもはこの感覚がつかみにくく、手足や体幹の位置を正確に把握することが難しいといわれています。
そのため、「足をどの角度で蹴り上げればよいか」「体を鉄棒にどのくらい近づければよいか」が分かりにくく、回転の動作につながりにくいのです。


3. 体幹の安定とバランスの難しさ

逆上がりでは、一瞬の間にお腹や背中の筋肉をぐっと固め、体を安定させたまま腕で引き寄せる必要があります。
しかしDCDでは、バランスをとったり姿勢を安定させる力が弱いため、体幹がふらついて力が分散してしまいます。結果的に「あと少し!」のところで体が落ちてしまうことが多いのです。


4. タイミングのズレ

逆上がりが成功するかどうかは、「腕で引く」と「足を蹴る」をぴったり同時に行えるかどうかにかかっています。
DCDの子どもは、このタイミングを合わせることが難しく、毎回動きがバラバラになりやすいのです。たとえ筋力が十分あっても、動きのズレで回り切れないことがあります。


5. 練習しても上達しにくい

通常は、失敗を繰り返すうちに「もっと強く蹴ればいいんだな」「タイミングを早めよう」といった修正ができるようになります。
ところがDCDの子どもは、失敗からの学習(誤差修正)がうまく働きにくいため、同じ練習をしてもなかなか成果が出ないことがあります。
その結果、「やっぱり自分にはできない」と感じやすくなり、挑戦する気持ちが弱まってしまうこともあります。


6. 心の影響も大きい

逆上がりの練習で失敗が続くと、子どもは「どうせできない」と思い込んでしまい、挑戦そのものを避けるようになります。
これは努力不足ではなく、DCDの特性として「複雑な動作が学びにくい」ことが背景にあります。ですから、少しの工夫で「できた!」という経験を積むことが何より大切です。


まとめ

逆上がりが難しいのは、単に「腕の力が足りない」からではありません。
DCDの子どもにとっては、

  • 予測して動くこと
  • 体の位置を感じ取ること
  • バランスを保ちながら力を伝えること
  • タイミングを合わせること
  • 失敗から学んで修正すること

といった複数のハードルが重なっているのです。

だからこそ、練習方法を工夫すれば、「自分もできる!」という達成感を得られる可能性があります。次の章では、そのための具体的な工夫について紹介していきます。

逆上がりの練習方法

逆上がりは「腕の引きつけ」「体の持ち上げ」「タイミングよく足を振り上げる」など、複数の動作を組み合わせる必要があります。DCDの子どもにとっては、それぞれの要素を分けて練習することが大切です。

① 腕の引きつけを練習する

  • 鉄棒の高さを低くして、ぶら下がる → 肘を曲げて体を持ち上げる動きを反復する
  • 懸垂のような動作を遊び感覚で取り入れる(できなくても「肘を曲げる」だけでOK)

② 足の振り上げを練習する

  • 鉄棒にぶら下がって「足を前後に振る」だけの練習をする
  • マットに寝て「足を頭の方へ振り上げる」動きを繰り返す(後転の動作に近い)

③ タイミングをつかむ

  • 大人が補助しながら「足を振り上げる瞬間に体を引きつける」感覚を教える
  • ゴムチューブやタオルを鉄棒にかけ、子どもの体を支えて成功体験を積ませる

④ 分解練習を組み合わせる

  • 「腕を引きつける」→「足を振る」→「体を回す」とステップを順に練習
  • 一度に全部やろうとせず、少しずつ成功体験を重ねる

⑤ 環境を工夫する

  • 低い鉄棒を使って安全に挑戦できる場をつくる
  • 下にマットを敷いて安心感を持たせる
  • 補助ベルトを使い、大人が軽く支えて回しやすくする

👉 ポイントは、「逆上がりを完成させる」よりも「体をコントロールできた!」という小さな成功を積み重ねることです。

DCD(発達性協調運動障害)の子どもに有効な「逆上がり」練習法

DCDの子どもには、「課題を小さく分ける(分解練習)」「課題に即した(task-oriented)トレーニング」「外からの分かりやすい手がかり(視覚・音・補助)」を組み合わせる方法が有効です。さらに、モーターイメージ(心のリハーサル)や行動観察、映像フィードバックなどを併用すると、内部の“先読み(内部モデル)”の補強につながります。これらは国際的な臨床推奨や複数のレビューで支持されています。


なぜこのアプローチが必要か

DCDの特性として、動作の「先読み(内部モデル)」「身体位置の感覚(固有感覚)」「姿勢安定」「タイミング合わせ」などが苦手なことが多く、単に筋力を増やすだけでは上達しにくいことが示されています。したがって「逆上がり」という複合動作は、要素ごとに分けて学習→統合する段階的アプローチが理にかなっています。


実際に効果が期待できる練習法

1)**課題の分解(part-practice)**を行う

逆上がりを「腕で引く」「足を振る」「体を丸める」などに分け、それぞれを段階的に練習します。DCDでは一度に多くの調整を要求すると失敗しやすいため、まずは各要素で「できた!」を作ることが重要です。課題指向(task-oriented)トレーニングの効果が多くのレビューで示されています。

具体例:低い鉄棒で「ぶら下がって肘を曲げる練習」→「床に寝て足を振る練習(前転に近い動き)」→「マット上で腹を鉄棒に近づける感覚練習」。


2)外的フィードバック(視覚・聴覚・触覚)を分かりやすく使う

視覚的目印(バーに色テープで“足を振る位置”の目印)、動画で自分の動きを見せる、メトロノームで“蹴るタイミング”を整えるなど、外からの手がかり(augmented feedback)は学習を助けます。最近の研究は、多様なフィードバック(視覚+聴覚など)が特に有効だと示しています。

注意点:フィードバックは“徐々に減らす”こと(フェードアウト)も大切です。常に援助があると「援助なしでの学習」が進みにくくなることがあるためです(guidance hypothesis)。


3)物理的補助(支え)を段階的に使う

補助ベルトや大人の補助で一度フル動作を体験させると「回れる感覚」を得られ、モチベーション向上につながります。重要なのは「いつまでも持ち上げっぱなしにしない」こと——成功体験を得たら、徐々に補助を減らして自分でやらせるフェーズへ移行します。臨床ガイドラインでも「援助→フェード」が推奨されています。


4)モーターイメージ(心の中で動く練習)と行動観察(動画・模倣)

内部モデルを補う方法として、「動きを頭でイメージする(motor imagery)」や「大人や模範映像を見てから真似する(action observation)」の組合せ(AOMI)が効果を示す研究が増えています。実際の身体的負荷が小さい段階でも“脳の学習”は進められるため、逆上がりの導入期に取り入れやすい方法です。

具体例:練習前に「動画を3回見る → 目を閉じて自分が回るイメージを10〜20秒」→ 実技。家庭でも親子でできる手軽な方法です。


5)視線(gaze)や注意の訓練

目の使い方(視線の固定/quiet-eye)を訓練すると、運動の精度が上がる研究があります。DCDの子どもに対する群比較試験でも、視線トレーニングが投擲などの動作を改善した報告があり、逆上がりの「目の向け方(どこを見て動くか)」を指導することは有用と考えられます。


6)感覚(固有感覚・前庭)を強化する遊び

トランポリン、バランスパッド、回転運動(前転・後転)、粗い触覚刺激など、身体位置や重力感を感じる遊びを日常に取り入れると、身体図式(body schema)の感度が高まり、鉄棒での位置把握が向上する可能性があります。感覚処理の問題はDCDに伴って報告されています。


7)筋力・体幹の機能訓練は“課題練習とセットで”行う

腕力や体幹強化だけでは逆上がりが完成しないことが多いですが、機能的な筋力(体幹の安定、肩甲帯のコントロール)を高めることは必要条件です。物理療法ガイドラインでは、筋力トレーニングを含むリハビリが推奨されています。


8)練習の進め方:短く、頻度を高く、成功体験を重視する

DCDの子は疲れやすく注意も切れやすいため、10~15分を1回の目安に、1日数回や週に数回の短時間練習を繰り返す方が効果的。小さな成功(部分動作の達成)をその都度ほめることで学習意欲が保てます。学習の分配(分散練習)は一般的な運動学習でも推奨されます。


9)学習のフェーズに合わせて「変化(バリエーション)」を導入する

最初は同じ条件でブロック練習(固定された状況で反復)→ ある程度できるようになったら状況を変える(バーの高さ、助け方、周囲の雑音などを変える)ことで、実際の運動場面でも応用できるようになります。段階的に「適度な変動」を与えるのがポイントです。


「逆上がり」段階的プラン(実例:4段階)

以下は保護者・指導者がすぐ使える**実践プラン(目安)**です。年齢や個人差に合わせて調整してください。

導入(評価)
・運動の全体像(M-ABC等の評価が臨床で使われますが、まずは「肘を曲げる力」「ぶら下がり時間」「前転の感覚」を簡易で確認)。臨床ガイドラインに基づき専門家(PT/OT)と連携するのが安心です。

Stage A:準備(2–4週)
・体幹の短時間トレ(プランク10–20秒×数回、遊び化)・吊り下がり保持(10–20秒×数回)・トランポリンや前転で前庭・固有感覚刺激。短時間を毎日。

Stage B:要素練習(2–6週)
・「腕引き」:低い鉄棒で肘曲げ→体を引き寄せる反復。
・「足振り」:床に寝て足を振る、マット上で膝を抱えて回る練習。
・視覚目印やメトロノームでタイミングを合わせる訓練。

Stage C:補助付きフル動作(2–6週)
・補助ベルトや支えで一連動作を経験→成功体験を与える。
・補助は徐々に弱める(支えを減らす、手を離す瞬間を作る)。
・練習後に短いモーターイメージ/映像フィードバックを行う(AOMI)。

Stage D:安定化と汎化(継続)
・屋外の鉄棒、違う高さで練習、友達と遊びながら変化をつける。
・CO-OPなどの課題解決型指導で「本人が目標を決めて工夫する」練習も導入すると日常場面への一般化が促されます。


さらに効果を高めるアドバイス

  • 「出来たこと」を必ず具体的にほめる(例:「今日は足の振りが前より高くなったね!」)。心理的負担の軽減が学習効率を上げます。
  • 補助は「最終目的ではなく橋渡し」。自己でできる瞬間をつくるために段階的に減らす。
  • もし専門家(理学療法士・作業療法士)が近くにいるなら、評価→個別プランを作ると安全で効率的です。

まとめ

  • DCDの子どもの逆上がり練習は、**「分解」→「外的手がかりや補助で成功体験を作る」→「内部モデルを鍛える(モーターイメージ/観察)」→「段階的に統合・汎化する」**という流れが科学的に支持されています。
  • 個々の子の感覚処理や注意、筋力の状態は違うため、「評価に基づく個別化」と、進める中での調整(補助のフェード、フィードバックの変化)が鍵です。

参考文献
Blank R, Barnett AL, Cairney J, et al. International clinical practice recommendations on the definition, diagnosis, assessment, intervention, and psychosocial aspects of developmental coordination disorder (DCD). Dev Med Child Neurol. 2019.
Smits-Engelsman BCM, Blank R, van der Kaay AC, et al. Efficacy of interventions to improve motor performance in children with developmental coordination disorder: a combined systematic review and meta-analysis. Dev Med Child Neurol. 2013;55(3):229–237.
Adams ILJ, Lust J, Wilson PH, Steenbergen B. Compromised motor control in children with DCD: a deficit in the internal model? — A systematic review. Neurosci Biobehav Rev. 2014;47:225–244.
Al-Yahya E, et al. Motor learning in developmental coordination disorder. 2023 review (open access).
Scott MW, et al. Combined action observation and motor imagery improves learning of complex activities of daily living in children with DCD. 2023 (AOMI intervention study).
Welsby E, et al. Evaluating the influence of feedback on motor skill learning in children with DCD. 2024 (open access discussion/review).
Sigrist R, et al. Augmented visual, auditory and haptic feedback in motor learning: A review. (2013) — 基礎的なフィードバック理論のレビュー。
Tran HT, Kirby A, Hill V, et al. Sensory processing impairments in children with developmental coordination disorder: A scoping review. 2022.
Wood G, Miles CA, Coyles G, et al. A randomized controlled trial of a group-based gaze (quiet-eye) training intervention for children with DCD. PLoS One. 2017.
Schoemaker MM, Niemeijer AS, Reynders K, Smits-Engelsman BCM. Effectiveness of Neuromotor Task Training (NTT) for children with DCD. (pilot RCT / controlled trial). 2003.
Marchal-Crespo L, et al. Haptic guidance and the guidance hypothesis in motor learning research. — 講読的文献(ガイダンスのメリットと注意点)。
Dannemiller L, et al. Physical therapy management of children with DCD: clinical practice guideline. 2020.

逆上がり習得のための段階的トレーニングプログラム(例:12週間)

Stage A:準備期(Week 1–2/基礎づくり)

目的:体幹安定、腕・握力の強化、身体感覚(前庭・固有感覚)の基盤作り

  • ぶら下がり保持:鉄棒に10秒〜20秒ぶら下がる × 3回
  • プランク遊び:床で10秒保持 × 3回(ゲーム形式で)
  • 前転/後転:やわらかいマットで前転・後転 × 5回
  • トランポリンやジャンプ遊び:2〜3分

👉 家庭の工夫:ドア枠のぶら下がり棒、ソファを使った前転・後転など。


Stage B:要素練習期(Week 3–6)

目的:逆上がりを構成する動きを分解して習得

  • 低鉄棒で肘を曲げる練習:腕で体を引き寄せる × 5回
  • 足振り練習:床で仰向けになり、両足を頭の方へ振る × 10回
  • 膝抱え回転(マット):膝を抱えてゴロンと回転 × 5回
  • 視覚的目印を使った足振り:鉄棒にテープを貼り、そこを蹴るように振る × 5回

👉 学校でもできる工夫:体育の合間に「腕引き」「足振り」を1〜2分。


Stage C:補助付きフル動作(Week 7–10)

目的:補助を使って一連の流れを体験し、成功体験を積む

  • 補助ベルトを使用した逆上がり:大人が軽く持ち上げる → 3〜5回
  • 動作後に映像確認:スマホで撮影して一緒に見る
  • モーターイメージ:練習前に「自分が回って成功する」イメージを10秒
  • 部分動作の復習:足振りや腕引きを2〜3セット

👉 家庭の工夫:補助は「持ち上げすぎない」、子どもが「最後に自分で回った感覚」を持てるように。


Stage D:安定化・汎化(Week 11–12以降)

目的:習得した動作を安定させ、実生活や遊びに応用

  • 高さを変えた鉄棒で逆上がり:低い鉄棒→通常の高さへ
  • 補助を減らす:最初は腰を支える → 軽く触れるだけ → 声かけのみ
  • ゲーム化練習:友達と「何回連続でできるか」挑戦
  • バリエーション練習:足を閉じて/開いて/リズムに合わせて回る

👉 成功体験を重ねるため、最初は「1回できた!」で十分。疲れる前に終了。


練習メニューのコツ

  • 短く・頻度高く(10〜15分を週3〜5回)
  • 成功体験をほめる(例:「足の振りが昨日より高くなったね!」)
  • できない日があってもOK —— DCDの子は調子に波があるので、焦らず継続。

👉 このプランは「目安」なので、筋力や感覚、恐怖心の有無で進み方は変わります。専門職(PT/OT)と連携できると安心です。

まとめ

発達性協調運動障害(DCD)の子どもたちにとって、「逆上がり」は単に筋力の問題ではなく、バランス・タイミング・身体感覚の調整といった複雑な能力の統合を必要とする課題です。そのため、何度挑戦してもなかなか成功できず、自信を失ってしまうことも少なくありません。

しかし、だからこそ大切なのは「できることを小さく積み重ねていく」姿勢です。鉄棒にぶら下がる、足を振る、体を支える――これら一つひとつの小さな練習を成功体験として積み重ねることで、脳と体の協調が少しずつ育っていきます。

練習の進み方は子どもによって異なります。1週間でできる子もいれば、数か月かかる子もいます。重要なのは「比べないこと」と「成功体験を丁寧に積むこと」です。保護者や支援者が焦らずに見守り、「今日は鉄棒にぶら下がれたね」「昨日より足が大きく振れたね」と声をかけることで、子どもの自己効力感が育ちます。

逆上がりの練習を通して得られるのは、技そのものだけではありません。挑戦する力、自分の体を理解する力、そして「できた!」という達成感です。それらは運動の場面だけでなく、学習や日常生活にも良い影響を与えていきます。

子どもの成長には時間がかかります。しかし、その一歩一歩を支えるのが大人の役割です。失敗も成功も大切な経験として受け止めながら、子どもと一緒に「できる喜び」を見つけていきましょう。

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