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「ことばの芽が育つ瞬間」――1歳から7歳までの言語発達の道のり

もっと知りたい小児の知識

 子どもの「ことば」は目に見えないけれど、毎日の遊びや暮らしの中にちょっとしたサインが隠れています。本記事では、12か月〜84か月(7歳)までを**言語理解(聞く・わかる力)と言語表出(話す・書く力)**に分け、月齢ごとに「できること」「家庭でできる声かけ」「専門家からの視点」を簡潔にまとめます。まずは年代ごとの概要を見ていきましょう。

🧠 理解・言語発達一覧表(理解/表出に分類)

月齢🩵 言語理解(理解面)💬 言語表出(表現面)
12か月・道具を見ただけで模倣的に使用する(クシ・ブラシなど)
・よく知っている場所を理解し、そこに来ると教える
15か月・絵本を見て知っている物の名前を理解して指す
・簡単な指示を理解して実行する(例:「新聞をもってらっしゃい」)
・身体部位や持ち物を問われると指す
・絵本を見て、知っている物の名前を言う
18か月・自分の名前を呼ばれると反応する・本を読んでとせがむ
・本を読むように何かしきりに話す
・「ハイ」と返事をする
21か月・簡単な質問に答える
・お話を聞くのが好きになる
・大人の言葉を真似して言う
・「チョウダイ」と言って要求する
・台を使って高いものを取る(問題解決的行動)
24か月(2歳)・色(赤・青など)を理解して正しく指す・ひとりで本を見て楽しむ
・「ナァニ?」とよく尋ねる
・簡単な文章を言う(例:「パパ カイシャ イッタ」)
・「アノネ」と話しかける
・童謡を部分的に歌う
30か月(2歳半)・名前を聞かれると、名字と名前を言う
・自分の名前を入れて話をする
36か月(3歳)・名前を呼ばれると返事をする(集団場面で)・「ボク」「ワタシ」などの一人称を使う
・「もう1つちょうだい」と言う
・子どもが主人公の番組を理解し楽しむ
・他の子に「~しようか」と誘う
42か月(3歳半)・話が途切れそうになると続きを求める(理解持続)・「かして」と言って順番交代を求める
・絵本を見ながら友達と話す
・見聞きしたことを母親や先生に話す
48か月(4歳)・経験したことを他の子に話す
54か月(4歳半)・曜日の存在を理解する・自分の名前を読む
・テレビや動画の内容を友達と話す
・間違いを消しゴムで直す
・「いれて」と言って遊びに加わる
60か月(5歳)・時計に興味を持つ
・「た」「か」など同音語を考える
・住所を正しく言える(意味理解)
・わからない字を大人に聞く
・数字を拾い読みする
・自分の名前をひらがなで書く
・さいころの数を理解して言う
・カルタを取る(語と絵の一致)
66か月(5歳半)・しりとりをつなげる
・なぞなぞを理解する
・カルタで勝敗を数えて決める
・短いひらがな語を一字ずつ読む
・数字を書く
72か月(6歳)・絵本を意味が通るように読む
・曜日や時間を理解する
・通園・通学路を説明できる
・ひらがなをほとんど全部読む
・ブランコの順番を正しく交代できる
・自分の誕生日(月日)を言う
78か月(6歳半)・日付を理解して読む
・親の年齢などに関心をもつ
・トランプの神経衰弱をする(記憶・語理解)
・ひらがなの本を読む
・自分の発音を気づいて直す
・マンガを理解して読む
・幼児語をほとんど使わない
84か月(7歳)・時計の針を正しく読む

🗂 補足分類のポイント

  • 理解面(言語理解)
    聞いたこと・見たこと・状況を理解し、反応する力
    (指示理解、質問応答、概念理解など)
  • 表出面(言語表出)
    言葉・歌・会話などで自ら発信する力
    (模倣発話、自発語、会話の展開、表現行動など)

🧠【1〜2歳:ことばの“理解”と“表出”が芽を出す時期】

12〜24か月(1〜2歳)は、「見て・聞いて・真似して・伝える」力がぐんと伸びる時期です。
日常の中で“意味”を理解し始め、「言葉になる前のことば」がどんどん育ちます。


🍼12か月(1歳)

🔹言語理解

良く知っている場所にくると教える(自分の家の前や、お菓子が入っている戸棚の前で指差しや「あーあー」と知らせる)。
➡ 身の回りの場所やモノに「意味」を結びつけ始める段階です。

🔹言語表出

道具を見ただけで、模倣的に使用する(クシ、ブラシ、鉛筆など)。
➡ 見た動作を再現する「模倣行動」は、言葉を学ぶ前段階の重要なスキルです。

🔹家庭でできること

日常の動作に言葉を添えて伝える(「そこはお菓子のところだね」「ブラシでトントンしようね」など)。
模倣遊びを多く取り入れ、「まねっこ」からことばを育てます。

🔹専門家の観点・科学的背景

この時期に注目すべきは「共同注意(joint attention)」。
親が指差した方向を見る、視線を共有するなどの行動が見られると、言語発達の準備が整ってきています。
もし指差しや人への反応が乏しい場合、社会的な関わりの感度をチェックしておきましょう。
(参考:Tomasello, 2003/Mundy et al., 2007)


🧸15か月(1歳3か月)

🔹言語理解

絵本を見て、知っている物の名前を指さす。
簡単ないいつけ(「新聞を持ってきて」など)を理解して実行できる。
➡ 単語レベルの理解が進み、言葉の「音」と「意味」の対応づけが始まります。

🔹言語表出

知っている物を見て、指差ししたり言葉をまねたりする。
➡ 初語(最初の言葉)が出始める時期でもあります。

🔹家庭でできること

絵本を見ながら「これはワンワンだね」「新聞をとってきてくれてありがとう」など、
実際の行動にことばを結びつける語りかけが効果的です。

🔹専門家の観点・科学的背景

この時期は「受容語彙(理解できる語)」が一気に増える時期。
理解語彙の拡大が、やがて表出語彙の爆発につながります。
(参考:Fenson et al., 1994/Bloom, 2000)


📖18か月(1歳6か月)

🔹言語理解

「本を読んで」とせがむ、呼ばれると「ハイ」と返事をする。
➡ 相手の言葉を理解し、社会的やり取りとして応じる力が高まります。

🔹言語表出

本を読んでいるように、何かしきりに言っている。
➡ 言葉のリズムや抑揚をまねする「発話前言語期」から、意味のある発話へ移行する時期。

🔹家庭でできること

読み聞かせをたっぷりと。
内容を理解していなくても、声やリズムを共有することで音声模倣と情緒的つながりを育てます。

🔹専門家の観点・科学的背景

18か月ごろには「語彙爆発期(vocabulary spurt)」が始まります。
個人差は大きいですが、語彙数が急増するのは、音と意味を統合する脳のネットワーク形成が進むためとされています。
(参考:Bates et al., 1992/Huttenlocher, 1998)


🗣️21か月(1歳9か月)

🔹言語理解

簡単な質問に答える(「アッチ?」「カイシャ?」など)。
お話を聞くのが好きになる。
➡ ことばの意味を文脈で理解できるようになり、質問応答が可能に。

🔹言語表出

大人の言葉をそのまま真似する(エコラリア)。
欲しいものを「チョウダイ」と言って求める。
➡ 単語の模倣から「意図的な要求」へ。社会的発話が育ちます。

🔹家庭でできること

「これほしい?」「もう一回やる?」など、選択肢を与える会話を増やします。
「ちょうだい」と言えたら、すぐに応えて「伝わった経験」を積ませましょう。

🔹専門家の観点・科学的背景

模倣言語は発達の自然な過程。
オウム返しが続いても、意図的模倣が増えていれば問題ありません。
この時期の社会的模倣は前頭葉機能(遂行系)の発達と関連します。
(参考:Meltzoff & Moore, 1997)


🌈24か月(2歳)

🔹言語理解

絵本をひとりで見て楽しむ。
「ナァニ?」と質問する。
➡ 興味をもって「情報を求める」行動が見られます。

🔹言語表出

「パパ カイシャ イッタ」などの2語文が出る。
童謡を部分的に歌える。
➡ 文章的発話(文法の初歩)が始まる時期です。

🔹家庭でできること

子どもの発言をくり返して受け止める(例:「パパ会社行ったね」)。
質問にはできるだけ応答して、会話のキャッチボールを重ねましょう。
色や数を生活の中で伝えるのも◎(「赤いくつ履こうね」など)。

🔹専門家の観点・科学的背景

2歳ごろには文法処理を担う脳領域(左側頭葉・ブローカ野)が活発になります。
単語の組み合わせが生まれる背景には、統語的処理ネットワークの形成が関係しています。
(参考:Friederici, 2006)

30〜48か月(2歳半〜4歳)

🔹言語理解

名前を呼ばれると返事をする(集団の中でも応答できるようになる)。
物語を最後まで聞いて理解する。
話が途切れると「それでどうしたの?」と聞く。
➡ ストーリーの流れを理解し、会話の文脈を追えるようになります。

🔹言語表出

自分の名前を入れて話す(「◯◯ちゃんね〜したの!」)。
「ボク」「ワタシ」と一人称を使う。
「もう1つちょうだい」など数量を意識した表現が出る。
友達に「いっしょにしようか」「かして」「いれて」と声をかける。
経験したことを他の子や大人に話す。
➡ 自分の気持ちや考えを“言葉で伝える”力が育ちます。

🔹家庭でできること

  • 子どもの話を途中で遮らず、最後まで聞く(話を整理する力を支援)。
  • 絵本や動画を見たあと、「どんなお話だった?」と聞いて、言葉で振り返らせる。
  • ごっこ遊びの中で役になりきって会話を楽しむ(社会的対話の練習)。

🪴たとえば「お医者さんごっこ」で「痛いの?」「おくすりどうぞ」と言葉をやり取りすることが、
実は**会話の構造理解(質問→応答)**の発達に大きく貢献します。

🔹専門家の観点・科学的背景

3〜4歳ごろは、前頭前野(思考・抑制)と側頭葉(言語理解)のネットワークが強化され、
「聞く」「考える」「話す」の連携がスムーズになります。
この時期に「他者の気持ちを推測する」能力(心の理論:Theory of Mind)が芽生えるため、
言葉が社会的・感情的な役割を持ち始めます。

(参考:Sabbagh & Bowman, 2018 / Tomasello, 2003)

48〜60か月(4〜5歳)

🔹言語理解

友達や先生との会話の中で、相手の話の意図を理解できるようになります。
物語やテレビの内容を、場面の順序に沿って把握できるようになる時期です。
➡ 「だれが」「どうした」「どうなった」の基本構造をつかみ、
ストーリーの“因果関係”を理解しはじめます。

🔹言語表出

自分の経験を他の子に話すようになる。
テレビや動画で見たことを話題にして、友達同士で会話する。
他の子の遊びに「いれて」と言えるようになる。
間違えると消しゴムで直すなど、自己修正行動が見られる。
➡ 自分の体験や思考を「物語」として語る力が育ち、
他者との共有を楽しむ段階に入ります。

🔹家庭でできること

  • 「今日、どんなことがあった?」と一日の出来事を言葉で振り返る時間をつくる。
  • 子どもの話を途中で直さず、うなずきながら最後まで聞く(自己表現の基盤を支える)。
  • 絵本や番組を見たあと、「どんなところがおもしろかった?」と問いかける。

🪴このやり取りは、**出来事の記憶を言語化する力(エピソード記憶の言語化)**を促進します。
「語りの構造」を学ぶことで、思考の整理や他者とのコミュニケーションがより円滑になります。

🔹専門家の観点・科学的背景

4〜5歳では、**側頭連合野(言語理解)と前頭前野(構成・統合)**の連携が強化され、
体験を時系列で整理し、言葉で表現する能力が発達します。
また、社会的文脈を理解する力(社会的語用論)も伸び、
相手に合わせた話し方が少しずつできるようになります。

(参考:Peterson & McCabe, 1994/Huttenlocher et al., 2010)

60〜72か月(5〜6歳)

🔹言語理解

数字や文字、時間の概念に強い関心を示します。
「何時?」「今日は何曜日?」とたずねたり、時計やカレンダーを意識するようになります。
➡ 言語の理解が“抽象的な思考”へと発展し、
目に見えない概念(時間・数量・順序)を言葉で把握する力が育ちます。

🔹言語表出

自分の名前をひらがなで書く。
数字をひろい読みする。
「た」のつく言葉、「か」のつく言葉など、音を意識した言葉遊びを楽しむ。
自分の住所や番地を言える。
友達とカルタをして、勝敗を数えて決める。
しりとりやなぞなぞをつなげて遊ぶ。
➡ 言葉を“音”として操作する力(音韻意識)が育ち、
読み書きや論理的思考の基礎となる段階です。

🔹家庭でできること

  • 一緒にカルタやしりとりをして、音を聞き分ける遊びを楽しむ。
  • 曜日・時計・住所などを「生活の中で自然に言葉で確認」する。
  • 子どもが書いた文字や読んだ言葉を「すごいね!」と肯定的に受け止める。

🪴この時期の遊びは「学習前の基礎力」を支える重要なステップです。
楽しく“言葉を操作する経験”が、後の読解力・文法理解・論理思考に直結します。

🔹専門家の観点・科学的背景

5〜6歳では、**左側頭葉〜下前頭回(ブローカ野)**を中心に、
言語の音韻処理・形態処理(文法構造)・語彙検索のネットワークが成熟します。
また、前頭前野のワーキングメモリ機能の発達により、
“順序を保ちながら話す・聞く”能力が飛躍的に伸びます。

(参考:Goswami, 2001/Booth et al., 2004)

72〜84か月(6〜7歳)

🔹言語理解

ひらがなをほとんど全部読み、絵本の文章を意味のつながりとして理解できるようになります。
「今日は何曜日?」「学校への道順」など、時間や空間の構造を言葉で把握できるようになります。
➡ 言葉を“情報として使う”段階に入り、日常生活の中で論理的に考える力が育ちます。

🔹言語表出

  • ブランコの回数を正しく数えて、順番を交代できる。
  • 幼稚園や学校までの道順を説明できる。
  • 絵本の文字を意味を考えながら読む。
  • 自分の誕生日を月日で答えられる。
  • トランプの神経衰弱ができる。
  • 父母の年齢をたずねるなど、抽象的・社会的な話題への関心が高まる。
  • 自分の発音を意識して直す。
  • 文字中心の本やマンガを自分で理解して読む。
  • 幼児語をほとんど使わなくなる。
  • 日付や時間を正確に読める。
    ➡ 自分や他者、社会の中での位置関係を“言葉で整理する”力が育つ時期。
    読み書きが「コミュニケーションの道具」へと変わりはじめます。

🔹家庭でできること

  • 一緒にカレンダーを見て「今日は何日?」「次の休みはいつ?」など会話する。
  • 子どもが読んでいる本やマンガの内容を聞き、「どう思った?」と感想を共有する。
  • 時計を見ながら「もうすぐ7時、そろそろごはんだね」と、時間の流れを言葉で示す。
  • 子どもが自分の話を修正したときは、「自分で気づけたね!」と肯定的に受け止める。

🪴この時期の子どもは、自己言語モニタリング能力(自分の話し方や発音を内省的に調整する力)が急速に発達します。
この力は学習理解、読解力、作文能力の基盤になります。

🔹専門家の観点・科学的背景

6〜7歳では、言語の統合処理を担う左下前頭回・角回・縁上回のネットワークが安定し、
読み書きに必要な「音韻意識」「視覚的文字認識」「意味統合」の3要素が統合されます。
また、前頭前野の成熟により、発話の自己モニタリング論理的表現が可能になります。

(参考:Pugh et al., 2001/Norton & Wolf, 2012)

🌱まとめ ― 言葉の成長は「心の世界」が広がるプロセス

1歳のころの「アーアー」「パパ、行った」からはじまり、
7歳になるころには、自分の考えや気持ちをことばで整理し、他者と共有できるようになります。

言葉の発達とは、単に語彙が増えることではありません。
それは、「自分と相手をつなぐ力」「世界を理解する力」「思考を組み立てる力」が育つ過程です。

家庭のなかでの小さな会話、絵本を読む時間、質問に答えるやり取り——
その一つひとつが、子どもの“ことばの根っこ”を育てています。

発達には個人差があり、焦る必要はありません。
大切なのは、「伝えたい」という気持ちを受け止め、
「話すって楽しい」と思える環境を続けていくことです。

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