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実践3つのポイント!発達障害と感情のコントロール

まずはここから!小児リハを学ぶ

 ADHDという障害をもつA君は、いつもイライラしていました。
 ある日の夕方です。お母さんは、仕事に家事に忙しいなか一生懸命家族のために夕飯を作っていました。すると、部屋の向こうから兄弟ケンカをする声が聞こえます。

 どうやら、イライラしたA君は妹に当たり散らしてケンカになったようでした。

 お母さんはケンカの仲裁にはいって、その場は収まりました。でも、妹は泣きじゃくっています。A君はイライラをひきずっています。こんな状況のなかでの夕ご飯です。

 せっかく丹精込めて作った夕食なのに…。

 家族みんなで楽しく食べるはずだった夕飯なのに…。 

 みんなのために一生懸命つくった夕飯なのに…。

 なんだかみんなに裏切られたような気がして。自分がやってきたことが無駄になったような気がして。お母さんの目から涙がこぼれてきました。

 この話はなにも特別なことではありません。子どもを持つ親なら誰しもが体験するかもしれない話なのです。

 そして、脳の発達や感情表現の未発達な発達障害を持つ子どもたちにとって、この「感情のコントロール」は大きな課題の一つとなっています。

 もし、あなたが同じような体験をして困っているのならば、今から解説する話がヒントになるかもしれません。
 まずは、「感情のコントロール」の前に必要なことについてまなんでみましょう。 

「怒り」という感情

 「怒り」という感情は、「不快感」や「いやな気持ち」、そして「不安感」から発達しています。赤ちゃんが感じる「不快感」、それはおむつを替えてほしい、お腹がすいたといった基本的な欲求に対する不快感です。つまり、生きるために必要な感情とも言えます。
 この「不快感」や「不安感」から自分を救うべく、「怒り」という感情により表現しているのです。

 「不快な感情」を言葉にしたり、態度にしめすことによって、心の中の否定的な感情が放出されることを、カタルシス効果といいます。「怒り」の表現は、ときに気持ちや心を浄化する作用があるのです。

 ですから、「怒り」は決して否定される感情ではありません。

 じょうずに「怒り」を表現すること、不快な気持ちをコントロールすることが重要です。

ゆー
ゆー

 支援や療育の場面で「悪態をつく」「攻撃的」といった行動をとるお子さんがいます。

 リハビリなどの「治療」や「セラピー」を目的とする場合は、裏にある気持ちに注目し、受けとめてあげることが大切です。さきに述べたカタルシス効果(浄化作用)があり、不快な感情を放出することによって結果として問題解決につながります。

「怒り」のコントロール 実践すべき3つのポイント

「怒り」の感情と自分の考え方に気がつく

子どもの場合は、この部分がもっとも重要になります。

「怒り」という気持ちをラベリング

 怒りの感情に自分で気がつくというのは、簡単ではありません。
 たとえば、怒りの程度を「何かの物にたとえて」点数化して客観的にとらえるという方法があります。正常に発達したお子さんや大人であれば、大いに効果的でしょう。

 しかし発達障害や発達に遅れがあるお子さんは、「怒り」という心の動きと「怒り」という言葉が結びついていない場合があります。
つまり、この嫌な不快な気持ちが「怒り」であるということが理解できていない場合があるということです。

 ではどうしたらよいのでしょうか?

お母さん
お母さん

お母さんに怒っているんだね、だからお母さんを叩きたいんだね

子どもの感情や欲求に気がつき、それを「ことば」として子どもに伝えます。

あなたのこの何とも言えない感情や気持ちは「怒り」なのですよ、と教えてあげるのです。名前のない不快な感情に「怒り」という言葉のラベルをはってあげるのです。

適切に「怒り」を表現できないからこそ、感情のコントロールができないように見えてしまうのです。

ゆー
ゆー

子どもは感情の理解が未熟なために、自分の感情でさえ理解が難しいことがあります。
気がつかないのではなく、感情が理解できていないのです。

○○すべきという考え方を言葉にして受け止める

自分を受け入れることができるから、他人を受け入れることができるのです。

 人はだれでも「考え方」のクセをもっています。楽観的であったり、完璧主義であったり。
 発達障害を持つお子さんの中には、こうあるべきが強すぎたり、正義感が強すぎてトラブルにつながってしまう子がいます。
 他者の気持ちを想像したり、思い測ることが苦手なために、自分の思考を相手に押し付けすぎてしまうのです。この○○であるべきという自分の考えが、他人と違うと不快感を覚えます。それが、時に怒りに変わってしまうのです。

 ○○すべき、こうあるべきという思考の偏りに、子ども自身が気がつくことが重要になってきます。

お母さん
お母さん

あなたは○○しなきゃいけないと、考えたんだね。

だから、いやな気持になったんだね。

 子どもは思考も未熟です。どちらかといえば、思考よりも感情に動くことが多いでしょう。だからこそ、大人がその考え方や感情を言葉で返してあげる必要があります。そして、その考え方を受容してあげることがとても重要になってきます。

 自分を受け入れてもらえる良い体験が、自分を受け入れることにつながります。

 そして、他人を受け入れることにつながっていくのです。

ゆー
ゆー

 子どもの考えや感情を「当てる」のではなく、状況をみていくつか言葉で返し、子どもの反応をみていきます。

怒りをじょうずに浄化する方法を見つける

 イライラしたり、「怒り」を感じたら次のような行動をとってみましょう。

・怒りが静まるまで数を数える

・怒りの原因となっている事や場所から離れる

・グーパーをして体の緊張をほぐす

・深呼吸をする

 気持ちを落ち着かせるためにマインドフルネスという方法もあります。詳しく知りたい人は、下のリンクをチェックしてみて!


 でも、もっとも大切な事は

自分なりの落ち着く方法を見つける

 人それぞれ落ち着く方法は違います。怒りの感情が出たときに、どうやったらその怒りの感情をじょうずにいなすことができるかを、一緒にみつけていくとよいでしょう。

 ときにそれは根気のいることかもしれません。でも、人から言われて実行するのではなく、自分でその方法を見つけることによって、「気づき」を生み出すことができるのです。

ゆー
ゆー

自分ではどうすることもできない事に対してイライラした時は自分でコントロールできることをするとよいと言われています。
では、子どもでもできることは何でしょうか?

答えは「あそび」です

 ・さわり心地がよい好きなぬいぐるみをさわって遊ぶ
 ・自分が扱えるおもちゃで遊ぶ
 ・壁の絵や動くものをみてあそぶ

 ・数字をひたすら数えてあそぶ

 ・看板や壁にある文字をひたすら読んであそぶ

イライラや「怒り」の感情に注目するのではなく、自分が好きな遊び、自分に出来ることに注目させ、そこにエネルギーを注ぐようにしましょう。

「怒り」を引き起こす原因をさぐる

 「誰かに悪口を言われた」「理不尽なことを言われた、された」
 もちろんこれらも「不快感」の一例です。ですが、これらは原因がハッキリとわかっていますから、怒りをじょうずに浄化する方法を取ることで解決に導きます。

 ではA君のように「漠然とイライラしている」「イライラを当たり散らす」といった場合はどうでしょうか?
 先にのべたように「怒り」は不快感を放出する役割があります。(カタルシス効果)この根本にある不快感を探っていくことが、解決への近道になります。

・生活環境の変化によるストレス

・学業や仕事、運動などの疲れがたまっている

・聴覚が過敏で音が人一倍うるさく聞こえてしまう

・嗅覚が過敏で、においによるストレスを感じている

・人と話すことが苦手なのにもかかわらず、集団生活でがんばっている

 私たちが生活をしている中で普段感じるストレスと同じような原因もあれば、発達障害がもたらす特性によるストレスもあるかもしれません。

 疲れがたまっていたり、ストレスが溜まっていたら、ちょっとしたきっかけで「怒り」につながってしまいます。これでは、気持ちのコントロールがじょうずにできるはずがありません。

 適度な休息とリラックスできる空間作り、あるいはストレスを作り出している活動や刺激から離れるといった対処方法が必要になってきます。

ゆー
ゆー

 A君の場合、「両親の問題」「進学と学習環境の変化」「片道2時間かけての電車通学」など同時期にストレスの要因となる出来事が重なっていました。

 これら言うに言えない不快感を、妹に当たり散らすという「怒りの表現」によって、ココロを浄化していたと考えられます。

感情を学ぶための「あそび」

 子どもが自由に遊ぶ空間によって、子どもは自分が主人公の物語を作ります。

 この子どもが主体となって行う遊びには、こんな効果があります。

子どもが主人公のあそび

・子どもに決定権を持ってもよいことを学んでもらう。

・自信をもって、自分から活動を始めることができるようになる。

・受け入れられる体験を通じて、より自分自身を受け入れられるようになる。

・自分の言葉、行動、そして感情に責任を持つことができるようになる。

・感情を適切な方法で表現できるようになる。

 言語の発達が未熟な子どもにとって、あそびは「大人が話をきいてもらうこと」とほぼ一緒です
 大人のわたしたちが話を聞いてもらって安心を得るのと同じで、子どもたちは遊んでもらうことで、遊びやおもちゃを通じて自分自身を表現しています。

 これによって、発達上適切なやり方で、考えや感情の表現をすることできるようになるのです。

 しかし遊びを一緒に行うときに注意点もあります。

・大人が子どもに対して世話を焼いて、責任を肩代わりするような関わりをしてしまうと、子どもの自信や有能感を損なう可能性がある。

・遊ぶ内容は子どもに決定権を持たせる。そして、うまくできなくてもすぐには助けずに、子どもの行動や感情の反応をみる

・時間の設定、場所の設定、危険な行動等にはしっかりとしたルールを設けること
 (ただし、そのルールが必要になるときまで、ガチガチにルールで固めない)

 繰り返しになりますが、「自分自身を受け入れることができてはじめて、他者を受け入れる」ことができるようになります。

 「あそび」はそのことを体験する絶好のチャンスです。

ゆー
ゆー

大切なのは、子どもと一緒に「大人も楽しんであそぶこと」です!

ちなみに、わたし自身はこんな方法で怒りをコントロールしています

人生の天秤

 人生80年としましょう。
 私にとっても、あなたにとっても「人生の時間」は有限です。

 この貴重なあたなの時間を、ほかの誰かのイライラのために費やしていいのでしょうか?

 幸せな10分を過ごしますか? イライラした10分を過ごしますか?

 ほら、自分ではどうしようもできなことや自分以外の誰かにイライラする時間なんて、もったいない。だとしたら、楽しいことや幸せなことに時間を費やしたほうが、よっぽど豊かな人生を送ることができるはずです。

 あなたの時間をどう過ごすか、それはあなたが決められることです。

ゆー
ゆー

イラっとした時に、この時間を心の中で天秤にかけます。

すると、自然とイライラは収まってきます。

スポンジのココロ

 もう一つは、平常心でいるために心がけていることです。

 スポンジを想像してみてください。
 スポンジは、水をよく吸収します。もちろん、出ていくのも早いです。

どんな感情でも受け止められるよう、自分をスポンジのようだと思っています。

 相手にネガティブな感情、先入観をもってしまうと、「壁」ができてしまいます。

 なるべく、スポンジのようにどんな感情でも受け止められるように心がけています。

ゆー
ゆー

簡単にいうと、なにもかんがえずに相手と接しています。

案外、「無」のこころで相手と接すると、自然と相手も心を開きやすくなります。

じつは子どもと接する時も、とても有効なんです!

まとめ

 子どもたちの感情は未熟です。上手に表現できないがゆえに、コントロールができません。
 子どもが主人公になれる「あそび」には、この感情を表現するチャンスがたくさんあります。悲しい気持ち、怒りの気持ちはもちろん、うれしい気持ちや楽しい気持ちも全部含めて自由に表現して、受け止めてもらえる。

 そんな遊びの空間が、子どもたちの感情を豊かにし、自分の気持ちに責任を持つことを学習していきます。

 そして、怒りは「不快感」から生まれてきます。

 冒頭に紹介したA君も、進学や生活環境の変化によって「疲れ」と「ストレス」をためていました。
 そして、その様子を受け入れらなかったお母さんもまた、日々の生活に「疲れ」と「ストレス」を溜めていたのでしょう。

 子どもが怒りのコントロールができない…。もしかすると、それは鏡に映ったあなた自身の姿なのかもしれません。

 いまあなたにとって必要な事は、「休息」をとること。「ストレス」から離れる事。

 気持ちが落ち着いたところで、子どもと一緒に自分なりの「怒りのコントロール」を見つけていきましょう。

 あなたは十分頑張っている。だから、ゆっくり休みましょう!

参考文献
・ゲリー・L・ランドレス著.山中康裕監訳:プレイセラピー関係性の営み.日本評論社.2007
・アンガーマネジメントの意味とは?怒りのタイプ診断とイライラ解消法
(https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2021/01/post-38.html:2022/6/17access)
・【公式】日本アンガーマネジメント協会HP
(https://www.angermanagement.co.jp:2022/6/17access)
・小澤 優璃 他:感情制御とマインドフルネスがアンガーマネジメントに及ぼす影響.早稲田大学臨床心理学研究18(1).13-18.2018

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