感覚に敏感さを持つ子どもの中で、その敏感な感覚から能動的に感覚をさけようと行動する特性を「感覚回避」と言います。
この特性を持つ子どもは、特定の刺激に対して敏感に反応し、時に不快感を感じてその感覚から逃げようとします。
刺激の変化をあまり好まず、同じ感覚を好み安定を図ろうとします。それが時にこだわりに見えてしまうこともあるのです。
この「感覚回避」の特性を持つ子どもをどのように支援したらよいのでしょうか?
感覚の観点から具体的な支援方法を紐解いていきましょう。
今回は「生活・身辺処理」に焦点をあてて解説していきます。
生活・身辺処理を感覚から支援する
聴覚からの支援
ホワイトノイズマシンの使用
特定の音が気になる場合、ホワイトノイズマシンを使って一定の音を流すことで、周囲の刺激をマスキングします。これは特に学校や家庭での静かな環境が必要な時に効果的です。
例えば、換気扇などを回しておくことで適度なノイズが発生し、不快な環境音を消す効果が狙えます。
*ホワイトノイズ:いろんな音が混ざった「ザー」という音のことです。たとえば、風の音やシャワーの音に似ています。この音は、周りのうるさい音をかき消してくれるので、寝るときや勉強するときに使うとリラックスしやすくなります。音の種類がたくさん入っているので、耳に優しく感じられることが多いです。
音量調整
音楽やテレビの音量を子どもが快適に感じるレベルに調整します。大きな音が苦手な場合は、イヤフォンやヘッドフォンを使用して、自分の好きな音だけを聞けるようにします。
リズムを取り入れる
ルーティンの作業を行う際に、穏やかな音楽や自然音を背景に流すことで、リズムを持たせて安心感を提供します。これは身支度や食事の際にも活用できます。
事前の説明
大きな音が発生する可能性のある状況(掃除機の音や雷など)について、事前に子どもに説明し、安心させることが大切です。予告することで不安を和らげられます。
視覚からの支援
色調の調整
部屋の壁や家具に柔らかい色合い(パステルカラーなど)を使うことで、視覚的な刺激を和らげます。明るい色や派手な柄は避け、落ち着いた雰囲気を作ります。
光量の調整
窓からの自然光を取り入れることで、明るすぎない柔らかな光を得られますが、日中はカーテンやブラインドは閉めて置き、必要に応じて間接照明を使います。
また、照明はLEDよりもハロゲンランプのような純粋な光の照明を使用するとよいでしょう。
視覚的な雑音を減らす
部屋の中に余計なものを置かず、整理整頓を心がけることで、視覚的な雑音を減らします。特に身支度をする場所では、必要最低限のものだけを残すようにします。
子どもが特定の物を見つけやすいように、ラベルや色分けされた収納ボックスを用いることで、物の配置が明確になり、安心感を得られます。
固有受容覚・前庭覚からの支援
ルーティンを決める
感覚回避の特性を持つ子どもは、変化に敏感です。いつもとは違う動きを取り入れただけで、不安感や不快感を感じることがあります。したがって、毎日、同じ手順で身支度をするようにルーティンを決めましょう。
毎日のルーチンを時間帯ごとに決めることで、予測可能性を高め、子どもがスムーズに移行できるようにします。たとえば、毎朝同じ時間に身支度を始める習慣を作ります。
余分な固有受容覚・前庭覚をさける
最もよく使う物は、戸棚や衣裳棚の腕の高さに置いてみましょう。これによって、かがんだり腕を高く伸ばしたりさせないようにします。
日常生活のなかで、できる限り余分な動きを取り除くことで、過剰な固有受容覚が入らないように配慮することが重要です。
また、物を取りに行くなど移動する事自体も感覚入力になります。身支度するときの物や服などは、できる限り一か所に置いて、余分な移動をしないように環境を整えます。
触覚からの支援
柔らかいタオルの使用
体を拭く際には、柔らかくて肌触りの良いタオルを使用し、刺激を軽減します。特に、肌に直接触れるものは、快適さを重視します。
着替えの際の選択肢
コットンのような自然素材の服をえらぶ工夫が考えられます。
子どもが自分で選べるように、事前に肌触りや素材が異なる服をいくつか用意し、気に入ったものを選ばせることで、身支度に対する抵抗感を減らします。ピッタリ合うが「きつい」感じのしない、伸縮性のある下着を着るのもおすすめです。
さらに「好きな服はどれか?」に注目し、同じ質感のものを着せるとよいでしょう。
温度調整
衣服やタオルを使用する際に、室温や水温を調整し、快適さを保つことで、触覚のストレスを軽減します。
特に洗面時の水温は重要です。手を洗ったりする衛生管理にはぬるま湯を使うとよいでしょう。
嗅覚からの支援
無香料の製品使用
日常的に使う製品(洗剤、シャンプー、ボディソープなど)は、無香料のものを選ぶことで、子どもが敏感に反応する香りを避けます。
部屋の芳香剤にも注意をし、過剰なにおいをさけるようにしましょう。どうしても香りを取り入れたい場合は、ラベンダーやカモミールなど、子どもが好きな自然な香りを少量使用し、刺激を抑えます。強すぎないアロマディフューザーを選ぶことも有効です。
清潔感の維持
部屋や身の回りの清潔を保つことで、臭いを発生させないようにします。定期的な掃除や換気を心がけましょう。
身支度の順番を考える
身支度を行う特定の時間帯には香りを避けるルールを設け、子どもが快適に過ごせる時間を確保します。
例えば、子どもの身支度をするときに、親自身には香りがする製品を使うことをさけます。子どもの身支度が終わってから、香りをつける製品などを使用するようにしましょう。
まとめ
特定の刺激に対して敏感に反応し、時に不快感を感じてその感覚から逃げようとするのが、「感覚回避」の特性です。
これら感覚からの支援を行うことによって、刺激を最小限に抑え、子どもがよりリラックスして身支度を行える環境を整えられます。
コメント