感覚に敏感さを持つ子どもの中で、その敏感な感覚から能動的に感覚をさけようと行動する特性を「感覚回避」と言います。
この特性を持つ子どもは、特定の刺激に対して敏感に反応し、時に不快感を感じてその感覚から逃げようとします。
刺激の変化をあまり好まず、同じ感覚を好み安定を図ろうとします。それが時にこだわりに見えてしまうこともあるのです。
この「感覚回避」の特性を持つ子どもをどのように支援したらよいのでしょうか?
感覚の観点から具体的な支援方法を紐解いていきましょう。
今回は「学校生活」に焦点をあてて解説していきます。
学校生活を感覚から支援する
聴覚からの支援
静かな環境の整備
生活空間や準備エリアで音を最小限に抑え、穏やかな音楽や自然音を流すことで、リラックスできる環境を作るりましょう。
特に騒がしい場面では、子どもが自分の聴覚環境を調整できるようにするため、耳栓やノイズキャンセリングヘッドフォンの使用もおすすめします。
視覚的の効果的な利用
毎日のルーティンを絵や写真で視覚化し、子どもが何をするかを明確にすることで不安を軽減します。
また、口頭で伝えた内容や情報を補足するため、文字やイラストなどで表すとよいでしょう。
アクティビティの短縮
一度に行うタスクを短くし、各ステップの間に小休止を入れることで、過度な刺激を避けます。
与える情報についても、一度にたくさんの情報ではなく、少しずつ情報を与えるようにしましょう。
さらに、ぼんやりしている、あるいは集中していないように見えるときは、そのように見えることを伝えるとよいでしょう。
視覚からの支援
シンプルな環境の整備
部屋や作業スペースの装飾や物の数を最小限に抑え、視覚的な刺激を減らします。例えば、机の上に必要な道具だけを置く、壁に装飾を少なくするなどです。
スペースの固定
教室での座席や席順は、余計な視覚刺激が入らないところにし、指定した場所に座るようにするとよいでしょう。同じ理由から、なにか活動したり、作業するときのスペースもまた指定すると、散漫になりにくく集中できると考えられます。
柔らかい照明の使用
明るすぎる光やチカチカする蛍光灯は、感覚回避の子どもにとって強い刺激になることがあるため、間接照明や暖かい色調の照明を使って柔らかい光に調整します。
明るい光や強いコントラストに敏感な子どもには、特定の色合いのサングラスやフィルターを使って、視覚的刺激を和らげることが効果的です。
タスクの可視化
複雑なタスクを分解し、それぞれのステップを視覚的に示すことで、視覚的に理解しやすくし、焦りや混乱を減らします。たとえば、着替えのステップをカードにして、順番にこなすようにします。
固有感覚・前庭覚からの支援
徐々に段階的な練習
感覚の情報が多くなり過ぎないように注意が必要です。
つまり、新しい運動やスキルを一度にすべて教えるのではなく、段階を踏んでゆっくり進めます。最初は動作の一部だけを教え、子どもが慣れるまでその動作を繰り返してから、次のステップに進むようにします。たとえば、着替えの際はまずシャツを片手で持ち上げる動作に集中し、その後に次のステップを加えていきます。
動作を視覚的に示す
手順や動作を視覚的に示すことは、プロプリオセプションが弱い子どもにとって効果的です。絵カードや動画などを使って、どのように体を動かすかを視覚的に説明します。
シンプルで予測可能な運動環境の提供
運動を行う環境があまりにも変化に富んでいると、感覚回避の子どもにとってストレスになります。シンプルで予測可能な場所で運動するようにします。たとえば、運動を行うスペースを毎回同じ場所にする、道具を毎回同じ位置に置くなどです。
感覚な敏感なお子さんには、非常に効果が高い支援方法のひとつです。
身体の動きを支える道具の使用
運動中に不安や混乱を減らすために、ボディスーツやサポートベルトなどの補助具を使用することで、身体の動きをサポートします。これにより、子どもが自分の動作に対する感覚への過度な注意を減らし、必要な感覚にきちんと目を向けることができるようになります。
触覚からの支援
シンプルで清潔な環境を提供
子どもが触れる場所が混雑していたり、整理整頓されていないと、触覚的に圧倒されることがあります。整理整頓された作業スペースを提供し、余計な触覚刺激を減らすことで、集中しやすい環境を作ります。
また、ぶつかったり、押し合ったりすることがないように、他の人と十分にスペースをとることが重要です。そのために、座席を指定したり、広い作業スペースを設けるのもよいでしょう。
触れる物の選択肢を増やす
特定の素材や物に対して触れることを避ける場合、代わりに快適な選択肢を提供します。例えば、硬い椅子に座るのが不快であれば、クッションを用意する、または柔らかい布張りの椅子に座らせるなどです。
活動前後の触覚準備
授業や活動、新しいタスクを始める前に、触覚を落ち着かせるための活動を取り入れることが有効です。重みのある毛布を使って体に圧をかけたり、手のマッサージをしたりすることで、触覚刺激に対する感覚が鈍感になり、次の活動への準備がしやすくなります。
嗅覚からの支援
無香料のアイテムの使用
嗅覚が過敏な子どもには、無香料の製品を選ぶことが基本的です。
もしくは、本人が好きな香りつきの文房具や、微香タイプの文房具などを用意するとよいでしょう。
換気の徹底
授業や作業スペースでの換気を定期的に行うことで、空気中の強い匂いを減らし、快適な空間を提供します。例えば、窓を開けるか、空気清浄機を使用することが効果的です。
香りを避けるエリアの設定
子どもが過ごすエリアや学習・作業スペースに、香りの強いアイテム(香水、芳香剤など)を持ち込まないようにする「香りを避けるエリア」を設定します。
給食など食事時に特定の強い香りに敏感であれば、刺激の少ない料理を選ぶか、食事時間を調整することで、その時間の香りを避けるようにします。
香りをカスタマイズできる道具の使用
子どもが心地よく感じる香りを使ったアロマディフューザーや無臭の物を使うなど、選択肢を提供して、自分の嗅覚環境をコントロールできるようにします。
まとめ
感覚が敏感なゆえに、その刺激を「不快」と感じ、そこから逃げようと行動する感覚回避のこども。
この特性を理解したうえで、これら支援策をすることによって、不快な刺激をさけて、スムーズかつ快適に学校生活を送れるようになります。
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