感覚に過敏さがある「感覚過敏」の子どもたち
感覚の特性から、どのような支援をしたらよいのでしょうか?
今回は、遊びに着目して「感覚過敏」の子どもたちへの具体的な対応策を紐解いていきます。
遊びの具体的な支援方法
聴覚からの支援
サウンドバリアの作成
防音パネルやカーテンを使って、遊びのスペースを囲み、外部からの音を遮断します。これにより、子どもが静かで落ち着いた環境で遊ぶことができるようになります。
大きな音やがやがやした環境から、少し離れた場所に移動して遊ばせることも効果的であったり、遊びの時間は単調なテンポのBGMを流す方法もあります。
音の調整が可能な遊び道具の提供
音の出るおもちゃや楽器の音量を調整できるものを選ぶことで、子どもが自分に合った音量で遊ぶことができます。また、音が出るおもちゃを使用する際には、子どもが自分で音を操作できるようにして、コントロール感を与えると安心感が生まれます。
静かな遊び活動の導入
絵本の読み聞かせや静かに取り組めるパズルなど、音が少ない遊び活動を提案します。これにより、聴覚過敏の子どもがストレスを感じずに楽しめる遊び時間を提供します。
音を視覚的に理解させる工夫
音が鳴る場面を事前に視覚的に説明することで、音がどのように発生するかを理解させることができます。例えば、ベルを鳴らす前にそのベルの絵や動画を見せることで、予測可能な音に対する耐性を高めます。
視覚からの支援
照明の調整
遊びの場所で明るすぎる蛍光灯の代わりに、柔らかい間接照明や自然光を利用します。これにより、子どもが過剰な光の刺激を受けずに、リラックスして遊ぶことができます。特に眩しさを感じやすい場合には、ランプシェードやカーテンを使って光を柔らかくするのも有効です。
シンプルな色使いの遊び道具を選ぶ
鮮やかで派手な色が多いおもちゃよりも、淡い色やシンプルなデザインのおもちゃを用意します。これにより、子どもが視覚的な過剰刺激を受けず、集中しやすくなります。
視覚的に整理された環境を提供
遊び道具やおもちゃを整理整頓し、視覚的にすっきりとした環境を整えます。例えば、おもちゃを使用するエリアごとに分類し、見えないように収納ボックスにしまうことで、視覚的な負担を減らします。
また、視覚的に刺激が入って散漫にならないように、カーテンで物を隠したり、あるいはパーテーションで場所を区切る、視界を遮るなどの工夫も効果的です。
遊びの間に視覚的な休憩を取り入れる
遊びの途中で目を閉じたり、低刺激の視覚素材(たとえば、淡い色合いの布や自然の風景の写真)を使った休憩を取る時間を設けると、視覚的な疲労を軽減できます。
視覚刺激をコントロールできる遊びの提案
例えば、光を使った遊び(影絵やライトボックスを使った遊び)を通じて、子どもが視覚刺激を自分でコントロールできるようにすることで、視覚刺激に対する耐性を徐々に高めることができます。
固有受容覚・前庭覚からの支援
手足を使った感覚統合の遊び
過度の固有受容覚からの刺激が入らないように、静かな遊びの機会を作ります。
たとえば、パズルやお絵描き等です。
また、手足を使って感覚を統合する活動として、粘土遊びや砂遊びを提案します。粘土をこねたり、砂に手を埋めたりすることで、運動覚と触覚が統合され、感覚の調整がしやすくなります。ただし、過敏さのある子どもは粘土ぼ感触を嫌がる場合があるので、注意が必要です。
ゆっくりとしたリズム、予測可能なパターンの活動
ゆっくりとしたペースで行うヨガやストレッチなど、リズム感を伴う活動を取り入れます。呼吸に合わせてゆっくりとポーズをとることで、前庭覚を安定させ、リラックスを促します。
運動遊びの際は、予測可能なパターンを作ると、情報過多を防ぎ安心して取り組むことができます。
圧迫や重さを感じる遊び道具の活用
圧迫感を与える重めの毛布(ウェイトブランケット)や体にフィットするボディソックスを使った遊びを提案します。これにより、深い圧覚を通じて安心感を得られます。例えば、ボディソックスを使って、体を包み込むような感覚を楽しみながら、バランスを取る遊びができます。
あるいは狭い場所にハイハイで行ったり、あえて重いものを持ったり、壁などを作って押しのけたりといった要素を含む遊びを構築するのもよいでしょう。
適度な揺れ、一定の速度を維持できるような運動
バランスボールやスイングチェアを使って、揺れや振動を感じることができる遊びを取り入れます。これにより、子どもが自分のペースで刺激を調整しながら、前庭覚を刺激できます。スイングチェアに座ってゆっくり揺れることで、安心感を得られる子どもも多いです。
また、一定の速度を維持できるような運動、たとえば自転車こぎなどの遊びも効果的です。
触覚からの支援
触覚に優しい遊び道具の選択
子どもが手に取るおもちゃや遊び道具は、柔らかく滑らかな素材を選ぶとよいでしょう。たとえば、ぬいぐるみや柔らかい布でできたブロック、ビーズ入りの柔らかいボールなど、心地よい触り心地の道具を提供します。これにより、触覚の敏感な子どもが安心して触れることができます。
ゆっくりとしたペースの触覚活動
感覚過敏の子どもに対しては、触覚を刺激する活動をゆっくりと進めることが重要です。例えば、子どもに触れてもらう物や素材を徐々に紹介し、触れたくない場合は無理強いせず、触覚に慣れるペースを尊重します。砂や粘土を使った遊びも、最初は手で触らずにスプーンなどを使って始めることができます。
触覚のバリエーションを提供
異なる素材や質感に触れる機会を作るため、感触の異なる素材を使った感覚遊びを導入します。たとえば、絨毯、シルク、スポンジなど、さまざまな素材を並べて、それぞれの感触を楽しむ時間を作ります。これにより、子どもが様々な触覚を体験し、徐々に慣れていくことができます。
安全なスペース、心地よいスペース
遊ぶときは、打撲などのケガに注意し、それらケガがしにくいように緩衝材を設置することが重要です。
また、マットを敷く際は、触り心地の良いものを準備し、子供が心地の良いと感じる床面の場所で遊ばせると効果的です。
嗅覚からの支援
香りの少ない環境の提供
遊びの場所で使用する洗剤やクリーナー、空気清浄機などは無香料や低香料のものを選びます。さらに、香りの強い花や芳香剤、ペットがいる場所を避けることで、子どもが過剰な嗅覚刺激を受けずに遊べる環境を整えます。
香りの管理ができるアイテムの使用
子どもが使うおもちゃや遊び道具は、素材自体に強い香りがないものを選びます。また、遊び道具を保管する箱や袋にも香りの少ない素材を選び、子どもが嗅覚的に安心できる状態を維持します。
嗅覚に配慮した空間
換気を行い、遊びの場所の空気を定期的に入れ替えることで、こもった香りや匂いが溜まらないようにします。空気清浄機を使う場合も、無香料のフィルターを選ぶと、嗅覚過敏の子どもにとって安心な環境が作れます。
おもちゃを消毒する際は、無香料のウェットティッシュなどで清掃するとよいでしょう。
まとめ
感覚が敏感な「感覚過敏」の子どもたち。
子どもたちが楽しく、そして成長につながるあそびを行うためには、感覚の特性を理解したうえで、これら支援策を取ることが効果的です。子どもが遊びに集中できる環境を提供し、不快感やストレスを軽減するために役立ちます。
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