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母親の養育態度が子どもに与える影響:ストレスと養育スタイル

もっと知りたい小児の知識

発達障害の子どもを支援するうえで、重要になってくるのが「母親の支援」です。

でも、どうして直接子どもを支援するのではなく、「お母さん」なのでしょうか?

母親支援が大切な事は感覚的にわかってはいるけど、うまく理由が説明できない。

様々な文献から、どうして母親支援が必要なのかを紐解いていきましょう。

あなたはどれ? 養育スタイルの分類

母親支援をするときに、重要となるのが、どのような育児(養育)スタイルか?ということです。

Baumrindによって提唱された養育スタイルの分類があります。重要なキーワードがコチラ↓

・応答性
 子どもの意図、欲求に気づき、子供の意見を尊重し要求を受け入れる態度を示す
 子どもの気持ちやニーズに気づき、それを尊重し受け入れること。

・統制
 子ども対して指導目標をもって管理、統制する態度を示す
 子どもに対して明確な指導目標を持ち、きちんとルールや指導を行うこと。
 ただし、この統制は一方的ではなく、子どもの成長や自立を支援するためのものです。

この応答性と統制の度合いが「高い低い」の組み合わせによって、4つの養育スタイルを提唱しました。

権威的・指導的養育スタイル

応答性(高) / 統制(高)
このようにどちらも高い場合の養育スタイルは権威的・指導的と呼ばれています。
このスタイルは、次のような特徴を持っています。

・高い応答性
 親は子どもの気持ちやニーズに敏感で、子どもの意見や感情を尊重します。

・高い統制
 親は明確なルールや期待を設定し、それを守ることを求めます。ただし、この統制は一方的ではなく、子どもの成長や自立を支援するためのものです。

具体的には、権威的な親は次のような行動をとります。

子どもの意見を聞き、対話を重視します。
適切なルールや期待を設定し、その理由を子どもに説明します。
一貫した指導とサポートを提供し、子どもの自律性を促進します。
愛情深く、温かい関係を築きながらも、子どもに対して適度な厳しさを持ちます。

 このスタイルは、子どもの社会的・情緒的な発達にとって最も有益であるとされています。権威的養育スタイルの親に育てられた子どもは、自信を持ち、社会的スキルが高く、学業成績も良い傾向があります。

許容的養育スタイル

応答性(高) / 統制(低)
このように応答性が高く、統制が低い場合は、許容的養育スタイルと呼ばれています。
このスタイルは、次のような特徴を持っています。

・高い応答性
 親は子どもの感情やニーズに非常に敏感で、子どもの意見や欲求を尊重します。

・低い統制
 親はあまりルールを設定せず、子どもに対して指導や制限をほとんど行いません。

具体的には、許容的な親は次のような行動をとります。

子どもの要求や願いをほぼ無条件に受け入れます。
ルールや規律を設定することが少なく、子どもが自分で決定することを尊重します。
子どもに対して罰を与えることがほとんどなく、自由に行動させます。
子どもに対して非常に温かく、愛情深く接します。

 許容的養育スタイルの親に育てられた子どもは、自由奔放で自分の意見を表現しやすい傾向がありますが、同時に自己制御や規律を欠くことがあり、社会的なルールや期待に対応するのが難しい場合もあります。

権威主義的養育スタイル

応答性(低) / 統制(高)
応答性が低く、統制が高い場合は、権威主義的養育スタイルと呼ばれています。
このスタイルは、次のような特徴を持っています。

・低い応答性
 親は子どもの感情やニーズに対してあまり敏感ではなく、子どもの意見や感情をあまり尊重しません。

・高い統制
 親は非常に厳しいルールや期待を設定し、それを守ることを強く求めます。

具体的には、権威主義的な親は次のような行動をとります。

子どもに対して一方的に命令し、従わせます。
ルールや期待を詳細に設定し、それに従わなかった場合には厳しい罰を与えます。
子どもの意見や感情を聞くことが少なく、親の価値観や判断を押し付けます。
親子関係は冷たく、距離があることが多いです。

 権威主義的養育スタイルの親に育てられた子どもは、従順で規律正しい傾向がありますが、同時に自尊心が低く、社会的スキルに欠けることがあります。

 また、親からの強い圧力に対して反発することもあります。このスタイルは、短期的には親の指示に従わせる効果がありますが、長期的には子どもの自主性や創造性を抑制する可能性があります。

放任的養育スタイル

応答性(低) / 統制(低)
応答性と統制の両方が低い場合は、放任と呼ばれています。
次のような特徴があります。

・低い応答性
 親は子どもの感情やニーズに対して無関心で、子どもの意見や感情をあまり尊重しません。

・低い統制
 親はルールや期待をほとんど設定せず、子どもに対する指導や管理を行いません。

具体的には、放任的な親は次のような行動をとります。

子どもの生活や行動にほとんど関与しません。
子どもの教育やしつけに対して無関心で、必要最低限の世話しか行いません。
子どもとのコミュニケーションが少なく、親子関係が希薄です。
子どもの感情や問題に対してほとんど関心を持たないため、子どもが孤立感を感じることがあります。

 放任養育スタイルの親に育てられた子どもは、自己制御ができず、社会的スキルや学業成績が低い傾向があります。

 また、情緒的なサポートが不足しているため、自尊心が低く、行動問題を抱えることもあります。このスタイルは、子どもの発達にとって最も有害な影響を及ぼす可能性が高いとされています。

この4つの養育スタイルで、「権威的・指導的養育スタイル」で子どもの健全な発達を促すことが知られています。

発達障害と養育スタイル

母親の養育スタイルは、母親のストレスと深い関係があるようです。どのような傾向があるのでしょうか?

母親のストレスの増加

 子どもの感情的な気質(例えば、癇癪を起こす、腹を立てやすい)や頑固な性格は、母親にとって大きなストレスの原因となります。時に発達障害を持つ子どもの母親は、特に高いストレスを感じることが多い傾向が報告されています。

権威主義的養育スタイルの増加

 子どもが成長し、反抗的な態度や自我の芽生えが見られると、母親は子供にとって良いと思う行動を強制しようとする権威主義的な養育スタイルを取ることが多くなります。

過干渉的な養育態度

育児ストレスを感じる母親は、子どもに対して過干渉的な養育態度を取りやすくなります。
過干渉的な態度は、子どもの社会性の発達に悪影響を及ぼします。

高圧的な養育行動

発達障害を持つ子どもの母親は、過干渉で子どもの行動を統制しようとする高圧的な養育行動が多い傾向があると報告されています。

ネガティブな養育行動

ADHDを持つ子どもの母親の怒りを伴う養育態度は、子どもの社会的行動や自己制御能力に対してマイナスの影響を与えるとされています。

一方で、このような報告もあります。

許容的な養育態度

 ダウン症の子どもの母親は、権威的な養育スタイルが少なく、許容的な養育態度が多いです。
 子どもの発達レベルの低さや集中力の欠如が、母親の統制しようとする態度を抑制し、寛容な態度を取らせることがあるとされています。
 障害児の母親は定型発達児の母親よりも「統制」の養育態度が低いという結果を報告している文献もあります。統制が低いということは、つまり許容あるいは放任の養育スタイルを取るということです。


全 体として、母親の育児ストレスや子どもの特性(特に発達障害や感情的な気質)は、母親の養育態度に大きな影響を与え、その結果が子どもの社会的発達や行動に直接的な影響を及ぼすことが示されています。

 つまり、母親のストレスをいかに軽くするのか、これによって子どもの発達にも大きな影響を与えることが示唆されているのです。

子どもの問題行動を改善する鍵は親の養育スタイルだ

”子どもを適切に統制しながら関わることが、子どもの問題行動の減少に貢献できる可能性が示唆されている”

”子どもをコントロールしようとする態度が高いほど、子どもの問題行動が少ないことが報告されている”

ここでいうコントロールとは、親の支配下に置くという意味ではありません。
適切な行動を指導し、寛容な気持ちで導くという意味です。

良好な親子関係かつ、適切な養育スタイルをサポートすることで、結果的に子どもの問題行動を改善することにつながるのです。

まとめ

 育児ストレスの低い母親は精神的にも余裕があり、子供との関係や自分の育児を肯定的にとらえることができると言われています。

 それによって、子どもとの関係を柔軟に変化させ、成長や発達に合わせた対応、養育態度を取ることができるのです。

 子どもの支援を行う場合は、母親の必要なサポートをきちんと行うことで、子どもたちの発達にも変化を与えることができるということを、念頭に置いておかなければなりません。

文献
・浅野大喜 他:障害児をもつ母親の養育態度と子どもの問題行動との関係. 小児保健研究.第787巻.第4号.315-324.2019
・田中恵子:1歳6か月児の母親の育児ストレスと養育態度・夫婦関係との関連. 千里金蘭大学紀要.16.101-107.2019
・加藤邦子 他:父親の育児関わり及び母親の育児不安が3歳児の社会性に及ぼす影響:社会的背景の異なる2つのコホート比較から.発達心理学研究. 13(1). 30-41.2002
・竹内珠美 他:母親の養育態度に関する研究-母親自身の愛着スタイルと自己受容に焦点をあてて-.大分大学教育福祉科学部研究紀要.第36巻.1号.43-54.2014
・戸田須恵子:母親の育児ストレスと幼児の気質及び養育態度との関係について. 北海道教育大学紀要(教育科学編).第50巻 .第2号.35-45.2008
・Baumrind D.Effects of authoritative parental control on child behavior.Child Dev, 887-907.1966
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・Beck A,Hastings RP,Daley D,et al.Pro-social behaviour and behaviour problems independently predict maternal stress.J Intellect Dev Disabil 29(4):339-349.2004
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