脳はいろいろな現象を引き起こす、とても不思議な体のパーツです。
からだのオーパーツ「脳」が引き起こす驚くべき現象を紹介します。
今回のテーマは「ゴミ屋敷」
家のなかがゴミだらけになってしまう。すてられずに、どんどんたまっていってしまう。片づけられないまま、そのなかで住み続ける
「ゴミ屋敷」になってしまう原因は、本人の性格や生活習慣だけではないのです。
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じつは「前頭葉機能」が原因で起こる「ゴミ屋敷」があるのです。
「ゴミ屋敷」をつくる病気とは?
前頭葉に障害によってとても特徴的な症状となった患者さんがいます。
それが…
病的収集行動(びょうてきしゅうしゅうこうどう)
&
ゴミ屋敷症候群
病的収集行動とは
わたしたちがなにかをコレクションするために物を集める。
これはいたって普通の行動です。ですが、「病的」になるとすこし意味合いが違ってきます。
というのも、
「本人にとっても役に立ちそうにない無用なもの」をあつめる行動だからです。
ときに、他人のものを盗んでまで集めるという常識から外れた行動さえとることもあるようです。
このために、「必要のないもの」がどんどんたまっていき、やがてゴミ屋敷に変化していきます。
ゴミ屋敷症候群
実にストレートな表現の病名です。
これは文字通り「ゴミを溜め込んで捨てられない」・「不衛生な状態」になってしまう行動障害です。この不衛生な状態は、なにも家の中という「環境」ばかりではありません。
「自分のからだ」の不衛生さ さえも気にしなくなります。
とあるケースでは、自分の体が不潔な状態であったにもかかわらず、恥ずかしいとか、きれいにしなければという問題意識は起きなかったようです。
これではゴミが貯まろうと、自分の体が不潔だろうと、自分ではどうすることもできません。
この状態は、病気のなせることなのです。こうなると「支援の手」が必要になってきます。
なんでこんなことが起こるんだろう?
この障害の起こる原因は「前頭葉 眼窩部」にあるとされています。
前頭葉 眼窩部のやくわり
この部分には3つの役割があるとされています。
①「罪悪感」や「後悔」といった感情
①「罪悪感」や「後悔」といった感情と関わりが深いと言われています。
だから、障害をうけると何か行動を起こしたときの「罪悪感」を感じにくくなってしまうのです。
悪いことと思っていても、罪悪感なく繰り返してしまうという症状が生まれます。
別の選択肢を選んだときの結果を想像する
あなたは何か行動をするときこのように考えた事はありませんか?
Aという選択をしたけど…
もし、Bという選択をしたらいったいどうなるのだろうか?
自分が選んだものとはちがう、別の選択肢をえらんだら結果はどうなるだろうかと考え想像します。これを「反事実的思考」っていいます。
前頭葉の眼窩部は、頭の中で仮定を組み立てたり、計画をたてる脳の領域や情動(気持ちや感情)をつかさどっている部分と深いつながりがあります。
しかし、脳が障害をうけると、この脳のネットワークがうまく機能しなくなります。
その結果として、「別の選択肢を選んだときの結果に対して、どのような感情がわくのか」をうまくイメージできないのではないかと言われています。
したがって、ごみを集めたらどうなるのか、他人からどう思われるのかという気持ちがイメージできなくなり、不潔であるとか羞恥心などを感じにくくなってしまうのです。
行動の抑制(ブレーキ)や価値の判断
自分の行動にブレーキをかけたり、価値があるかどうかの判断しなければならない状況で、心の中(脳の中)でシミュレーションするときに「眼窩部」が活動することも示されています。
これが障害されてしまうと、行動のブレーキがかかりにくくなったり、適正な価値を判断することが難しくなってしまいます。
すると、無価値のものを集めてしまう、ごみを集めてためこむという行動にブレーキをかけることができないのです。
こういった症状が重なり合うことによって、「ゴミ屋敷」がうまれてしまうというわけです。
まとめ
前頭葉はいろいろな情報をあつめ、総合的な指令判断を行う司令塔のような役目や、人間らしさ感情面をつかさどる脳の領域です。
また、心の動きと行動に重要な脳の機能をもっているということがわかります。
この「脳」を理解することは、その人の行動がどうして起こるのかを理解するうえでも重要です。
人間のオーパーツ「脳」はまだまだ不思議がたくさんあります。
引用文献
・船山道隆:前頭葉の不思議.Japanese Journal of Neuropsychology 35.pp70-76.2019
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