ADHDの患者には、不眠症や睡眠リズムがくずれ寝付けない、起きれないという人がいる
あなた自身 あるいは あなたの子どもも同じような悩みを抱えていませんか?
今回、ADHDと睡眠の関係性をひもとき、睡眠の改善がADHDの自覚症状を改善させたという文献を見つけました。
この記事があなたの悩みを解決する「カギ」になるかもしれません。
体内時計と睡眠の改善が、ADHDの症状を軽くした
とある研究では、このような報告がありました。
寝つきがわるい、起きれないなど睡眠リズムの乱れを訴えるADHDの患者さんは多い。
この睡眠リズムを治療することによって、ADHDの症状がかるくなった。
つまり、睡眠リズムに対する治療は、効果的なADHD治療の重要なポイントである
*睡眠リズムの乱れは「睡眠相後退(前進)症候群:DSPS」と言います。寝つきや寝起きが悪いものを後退、夕方眠くなることを前進といいます。
この睡眠のリズムを整えるための治療はどんなことが行われたのでしょうか?
睡眠リズムの治療は「メラトニン」と光
睡眠リズムを整えるために必要な物質のひとつに「メラトニン」というものがあります。
この「メラトニン」を低量与えることによって、睡眠リズムを改善させたというのです。
そして、もうひとつの要素が「光」です。
光はおよそ1万ルクスの強さを30分浴びる事を治療のなかに取り入れました。
一万ルクスとは、曇り空の日中ていどの明るさです。ちなみに、良く晴れた日中は、その10倍の10万ルクスなんだとか。
このメラトニンと光によって治療が行われた結果、ADHDの自覚症状が軽くなったと報告されています。
メラトニンの原料になる「トリプトファン」
文献のように一定量のメラトニンを摂取する治療なんてことは日常ではできません。
ですが、食品に含まれる「ある物質」をとることで、メラトニンを作り出すことができます。
それが「トリプトファン」です。
これは、必須アミノ酸のひとつ
このトリプトファンを原料にして、まずは「セロトニン(幸せホルモンと呼ばれる)」がつくられます。
さらにその「セロトニン」から「メラトニン」に変化するのです。
この物質の変化には時間がかかるため、
「トリプトファンを含む食品は、朝食べるのが効果的」
と言われています。
トリプトファンを含む食材は?
じつはこの成分は、体内では作り出すことができないんです。
だから、食品から摂取するしかありません。
代表的なものをいくつか紹介します
▸ 牛乳、ヨーグルトなどの乳製品
▸ レバー類
▸ きなこ 豆腐や納豆等の大豆製品
ただし、トリプトファンは摂過剰に摂取しても効果はありません。逆に悪影響として頭痛などを引き起こす可能性も報告されています。(資料:フランス食品衛生安全庁(AFSSA)報告)
「適度に摂取すること」
「バランスの良い食事をこころがけること」
これが重要です。
日中の「光」と体内時計
日中に太陽のような「ひかり」をうけることで、一日のリズムがととのいます。
逆にいうと、ひかりを適切な時間に取り入れないと、リズムが乱れるとも言えます。
適切な時間に太陽や人工のひかりをあびることは、このリズムを整えるために効果があるとされています。
睡眠相後退(前進)症候群:DSPSの症状のうち
▸「後退」 つまり、寝つきが悪い人は朝に光をあびると効果的です
▸「前進」 つまり、夕方眠くなってしまう人は夕方に浴びると効果的です
ちなみに、体内時計には「インターバルタイマー」というものがあります。
生物にそなわった体内時計で、一日のリズムの影響をうけるものです。
このインターバルタイマーがADHDの患者は「はやい」という報告もあります。
↓↓↓ 体内時計に関しての詳しい話はこちら ↓↓↓
まとめ
良い睡眠はADHDを改善する。
そのための策として
▸ 乳製品や大豆製品を朝に食べる
▸ 適度に光を浴びる
ぎゃくに、寝る前のスマホやゲームは、人工のひかりを目から取り込んでしまうため、控えるのがよいでしょう。
規則正しい睡眠リズムや生活習慣、そして「トリプトファン」を含む食品とバランスの良い食事は、効果的な ADHD 治療の重要な要素であると言えるでしょう。
そもそも、生活リズムはどんな人にとっても健康に生活するための重要な要素ですから、そういった基本的な生活習慣の乱れがADHDの症状にも影響するということができるのではないでしょうか。
引用文献
・Emma van Andel et al. : Effects of chronotherapy on circadian rhythm and ADHD symptoms in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder and delayed sleep phase syndrome: a randomized clinical trial. Chronobiol Int. p260-269. 2021
・畑中唯史:米由来タンパク消化物による睡眠障害改善への期待.p431-436.2016
・森田健:日常生活における受光履歴とトリプトファンの食事摂取が睡眠に及ぼす影響.科学研究助成事業 研究成果報告書.2014
・越口愛美:トリプトファン代謝鍵酵素の発現に影響を与える食品成分および転写調節機構に関する研究.2019
・内閣府 食品安全委員会:食品安全関係情報詳細:フランス食品衛生安全庁(AFSSA)、サプリメントにトリプトファンを1,000 mgまで使用することについて意見書を提出
(http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu02950750188)
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