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やる気スイッチ!?サリエンスネットワークの秘密:役割とその理解

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 あなたは、子供の成長を見守る中で、彼らがやる気を引き出す方法について考えたことがあるでしょうか?発達障害を抱える子供たちや、特別なケアを必要とする子供たちは、やる気を引き出すことがさらに重要です。そんな時、私たちの脳には驚くべき機能があります。それが、サリエンスネットワークです。

 サリエンスネットワークは、まさに私たちの脳の中の「やる気スイッチ」です。このネットワークは、外部からの重要な情報を捉え、私たちの注意を引きつけ、やる気や興味を高めるのに重要な役割を果たします。そして、特に発達障害を持つ子供たちや、その親御さん、そして療育を行う専門家の方々にとって、この「やる気スイッチ」は特別な意味を持ちます。

 この記事では、サリエンスネットワークをやる気スイッチとして捉え、その働きがどのように子供たちの成長や発達に影響を与えるかを探求していきます。

やる気スイッチを司る脳のシステム:サリエンス・ネットワーク

サリエンス・ネットワークは、いわば脳の中の司会者です。新しい情報に応じて、どのネットワークを使っていくのかの配分を決めたり、命令を出します。

 このサリエンス・ネットワークの働きによって脳のネットワークが切り替えられることにより、人の行動も切り替えられるのです。つまり、人のやる気を切り替えるために一役かっているのです。

・外界からの情報をモニタリングし、あたらしい情報や刺激に対する他の脳のネットワークの反応を注意深く決定する

・脳のなかの”モデレーター(司会者)”として、ある2 つの主要な脳ネットワーク間の調整をする。

 サリエンス・ネットワークは、いわば脳の中の司会者です。新しい情報に応じて、どのネットワークを使っていくのかの配分を決めたり、命令を出します。

 このサリエンス・ネットワークの働きによって脳のネットワークが切り替えられることにより、人の行動も切り替えられるのです。つまり、人のやる気を切り替えるために一役かっているのです。

この、とあるふたつの主要なネットワークとはなんでしょうか?

ひとつめのネットワーク:デフォルトネットワーク

・空想、想像など、外界の刺激とは関係がない思考

・無意図的想起:思い出そうという意図がないのにも関わらず、ふと何かが思い浮かぶ
(これを、マインドワンダリングと呼ぶ)

・なんとなく漠然と外界の情報をモニタリングしている

デフォルトネットワークは、以下のようなものに関係すると言われています。

・空想、想像など、外界の刺激とは関係がない思考

・無意図的想起:思い出そうという意図がないのにも関わらず、ふと何かが思い浮かぶ
(これを、マインドワンダリングと呼ぶ)

・なんとなく漠然と外界の情報をモニタリングしている

 このデフォルトネットワークが働くのは、リラックスして休んでいたり、あるいは熟練している(慣れている)活動をしているときと言われています。

 逆に、なにか新しいことをしている時や集中して課題を実行しているときは、働きが弱まると言われています。課題を実行していない状態のときに働くネットワークであることから、コンピュータの初期状態になぞらえて、「デフォルトネットワーク」と名付けられました。

 いわば、脳の内部でのみ行われる様々なことを司るネットワークです。

ふたつめのネットワーク:中央実行ネットワーク ( CEN)

中央実行ネットワークは、脳が注意を必要とする認知的なタスクに従事しているときに活発になるネットワークです。このネットワークは、問題解決、注意、作業記憶、意思決定など、外向きの認知活動と関連しています。

 中央実行ネットワークは、脳が注意を必要とする認知的なタスクに従事しているときに活発になるネットワークです。このネットワークは、問題解決、注意、作業記憶、意思決定など、外向きの認知活動と関連しています。
主な領域には、前頭前野、前帯状回、側頭前皮質、背側パリエタル領域などが含まれます。
 CENは、外界との情報処理、課題への適応、行動の計画と実行など、外向きの目標指向型の認知プロセスに関与しています。

 とくにワーキングメモリーネットワークは、外部からの情報を頭の中に保存しながら、操作を同時に行うワーキングメモリーの機能、物事を計画立てて実行するプランニング、抑制、注意の配分などが役割としてあります。

 つまり、課題を集中して実行しているときや、外部環境や外界に働きかけるときに作動するネットワークシステムです。


 サリエンスネットワークは、この内的情報と外的情報の顕著性*を検出し、デフォルトネットワークと実行系ネットワークの切り替えに関与するのです。

*「顕著性(かんこせい)」は、何かが注目されたり、目立ったりする度合いを示す言葉です。顕著性が高いということは、その物事が他のものよりも特に目立つ、重要である、または影響力があるという意味になります。顕著性は、さまざまな文脈で使用されます。心理学や神経科学の分野では、刺激の顕著性がどのように認識され、処理されるかに関心があります。例えば、目の前の情報の中で特に目立つ刺激は、注意を引きやすくなります。

やる気スイッチは存在しますか?

サリエンス・ネットワーク(顕著性ネットワーク)がデフォルトモードと中央実行ネットワーク間の切り替えを駆動することを「やる気スイッチ」と置き換えると、脳の活動のダイナミクスをわかりやすく説明できます。

 サリエンス・ネットワーク(顕著性ネットワーク)がデフォルトモードと中央実行ネットワーク間の切り替えを駆動することを「やる気スイッチ」と置き換えると、脳の活動のダイナミクスをわかりやすく説明できます。

 「やる気スイッチ」とは、脳が特定の課題や状況に対してどのモードで反応するかを制御するメカニズムを指します。デフォルトモードと中央実行モードは、それぞれ内向きの自己関連の思考と外向きの認知的処理に関連しています。顕著性ネットワークが「やる気スイッチ」として機能すると、脳は外部刺激や課題の重要性に応じて、これらのモード間をスムーズに切り替えることができます。

 例えば、リラックスしているときにはデフォルトモードが優勢であり、内省や想像に集中します。しかし、急な警告音や緊急な課題が発生すると、顕著性ネットワークが「やる気スイッチ」をオンにし、中央実行モードが活性化されます。この時、注意力や行動計画が促進され、外部の刺激に迅速に対処するための準備が整います。

 このように、「やる気スイッチ」としての顕著性ネットワークは、脳が適切なモードで外部環境に適応し、課題に対処する能力を向上させる重要な機能を果たしています。

やる気スイッチを押すためにはどのような方法がありますか?

サリエンスネットワーク(顕著性ネットワーク)を効率的に働かせ、やる気スイッチを押すためには、いくつかの方法があります。

 サリエンスネットワーク(顕著性ネットワーク)を効率的に働かせ、やる気スイッチを押すためには、いくつかの方法があります。以下にいくつかのアプローチを挙げてみます。

・メンタルフィットネスの維持
 ストレスの管理や十分な睡眠、バランスの取れた栄養摂取など、メンタルフィットネスを維持することが重要です。これらの要素は、脳の機能を最適化し、顕著性ネットワークを効果的に活性化させるのに役立ちます。

・注意を集中させる練習
 マインドフルネスや注意力を向上させる遊びなどの練習は、顕著性ネットワークの活性化に役立ちます。これらの練習は、脳のリソースをより効果的に管理し、外部刺激に対処する能力を向上させることができます。

・目標設定と意義のある活動
 自分にとって意義のある目標を設定し、それに向かって努力することは、顕著性ネットワークを活性化させるのに役立ちます。目標に向かって取り組むことで、やる気や情熱が高まり、顕著性ネットワークがより効果的に働くよう促します。

・刺激的な環境の提供
 刺激的な環境や新しい挑戦を提供することで、脳を活性化し、顕著性ネットワークを刺激します。新しい経験や興味深い活動は、脳の活動を増加させ、やる気スイッチを押すのに役立ちます。

・運動と健康的な生活習慣
 運動は脳の機能を改善し、顕著性ネットワークを活性化させるのに効果的です。定期的な運動や健康的な生活習慣を維持することは、脳の働きを最適化し、やる気スイッチを押すのに役立ちます。

 これらの方法を組み合わせて取り組むことで、顕著性ネットワークを効果的に活性化させ、やる気スイッチを押すことができます。自分に合ったアプローチを見つけ、継続的な努力をすることが重要です。

サリエンスネットワークと精神疾患の関係性

 サリエンスネットワーク(SN)の活動が異常になると、精神障害の症状が引き起こされたり悪化したりすることがあります。具体的には以下のような状況が考えられます。

・無動性無言症
 サリエンスネットワークの異常が、無動性無言症や無緘症の症状を引き起こすことがあります。
うつ病や強迫性障害、慢性疼痛などがサリエンスネットワークの活動を乱し、動きや意思決定に影響を与えることがあります。

・認知症
サリエンスネットワークの活動が低下すると、認知症の症状が悪化する可能性があります。
認知症の種類によって、サリエンスネットワークとの接続性の変化が異なります。

・統合失調症
 統合失調症では、サリエンスネットワークの活動が異常になり、現実歪曲などの症状が強まることがあります。サリエンスネットワークの制御が統合失調症において重要であり、脳の機能が乱れることがあります。

・ADHD
 ADHDでは、注意を集中させ行動を誘導するサリエンスネットワークの役割が低下し、注意力や行動の制御が難しくなることがあります。

・自閉症
 受動的な課題では、通常、個々の参加者が積極的に考えたり行動したりする必要がない課題や活動を指します。DMN(Default Mode Network)は、脳内のネットワークの一つであり、自己関連性の思考や内省、未来の計画などの課題に関与することが知られています。しかし、自閉症の場合は受動的な課題では、このネットワークの活性化があまり顕著ではないことが分かりました。
 DMNの活性化は限定的であり、より外的な情報処理に関連する脳のネットワークが主に活動する傾向があります。

その他の精神障害
 強迫性障害やうつ病などの精神障害では、SNの活動が異常になることがあります。これにより、症状の重症度や持続的な注意力の低下が引き起こされることがあります。

 以上のように、サリエンスネットワークの異常な活動は精神障害の症状を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。これらの状況では、脳の異常が感情や行動に影響を与えることがあります。

ADHDはこのスイッチが原因の可能性も…

ADHDでは、この司会者の役割がうまく機能しなくなることがあります。ADHDの人々では、サリエンスネットワークの過活性化が見られることがあり、これが注意の制御や行動の調節に関連していると考えられています。つまり、脳が情報の配分をコントロールできなくなり、情報があふれたり、整理できなくなったりします。また、外部からの刺激に注意を払わなくなることもあります。

 サリエンスネットワーク(顕著性ネットワーク)は、前述のした通り脳の司会者のようなものです。

 司会者は会議やイベントで、参加者が同時に話し始めたり、情報が混乱したりしないようにコントロールします。必要に応じて、話す人を選んだり、話題を統合したりします。

 司会者が会話を進めるのと同じように、このネットワークは脳の中で情報を整理し、必要なときに素早く切り替える役割を果たします。それによって、脳が瞬時に変化する状況に対応できるようにします。

 ADHDでは、この司会者の役割がうまく機能しなくなることがあります。ADHDの人々では、サリエンスネットワークの過活性化が見られることがあり、これが注意の制御や行動の調節に関連していると考えられています。つまり、脳が情報の配分をコントロールできなくなり、情報があふれたり、整理できなくなったりします。また、外部からの刺激に注意を払わなくなることもあります。

 これによって、外界の刺激に過度に反応して集中できなかったり、情報の整理整頓が出来なかったり、不注意のような症状が現れるのです。

まとめ

 脳科学の世界では、私たちの頭の中にはさまざまなネットワークが存在し、その中でも特に重要なのが『サリエンスネットワーク』です。このネットワークは、私たちの日常生活や感情、そして発達障害の理解に欠かせない役割を果たしています。

脳の切り替えスイッチ、サリエンスネットワーク。

 あなたが子供の成長を見守っている親御さんであれば、子供の行動や感情に対する理解がどれほど大切かをご存知でしょう。また、発達障害の治療に携わる専門家の皆さんも、日々その治療の中でサリエンスネットワークの重要性を実感されたのではないでしょうか。

参考文献
・越野英哉 他:脳内ネットワークの競合と協調― デフォルトモードネットワークとワーキングメモリネットワークの相互作用 ―.Japanese Psychological Review. 2013,Vol. 56, No. 3, 376-391
・A.C. Janes.et al.Salience network coupling is linked to both tobacco smoking and symptoms of attention deficit hyperactivity disorder (ADHD).Drug and Alcohol Dependence Volume 182, 1 January 2018, Pages 93-97
・Nia Goulden et al.The salience network is responsible for switching between the default mode network and the central executive network: Replication from DCM.NeuroImage.Volume 99, 1 October 2014, Pages 180-190
・Baddeley, A. D. (2000).The episodic buffer : A new component of working memory? Trends in Cognitive Science, 4, 417-423.
・Christoff, K., Gordon, A. M., Smallwood, J., Smith, R., &Schooler, J. W. (2009).Experience sampling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering. Proceedings of the National Academy Science USA, 106,8719-8724.

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