あなたはこんな経験がありますか?
午前中に仕事をしていて「えぇ? もうおひるごはんの時間じゃん…」
午後になる「まだ3時か…時間たつのが遅いなぁ…」
午前中と午後で「時間の進み方」がちがうと感じたことはありませんか?
じつはこれには「体内時計」が関係しているというのです。
今回は「体内時計」についてのおはなしです。
体内時計は「2種類」ある
人間に備わっている体内時計は「2種類ある」言われています。
概日(がいじつ)ペースメーカー
ひとつは、一日全体の体内時計の概日(がいじつ)リズム およそ一日25時間のリズムと言われています。この概日ペースメーカーを担っているのは、視交叉上核という神経細胞です。
この概日リズム(24時間から25時間のサイクル)は、とても正確です。
私たちはこの概日リズムにしたがって日々活動しているのです。
体内時計と環境リズムのズレ
正確に時を刻む概日リズムですが、夜更かしなどの生活リズムが不規則になると、環境のリズムとの不調和を招くことがあります。特に夜に強い光を浴びるとこの体内時計と環境リズムがずれてしまいます。
この体内時計のリズムと昼夜という環境のリズムがずれたらどうなるでしょうか?
・夜なのに眠くならない…
・朝なのに起きれない…
・昼間なのに眠い…
これが睡眠障害のひとつの要因です。
体内時計と環境リズムの調和を目指す「太陽光」
この概日リズムと環境リズムの協和させるために重要なのが「朝の太陽光」と言われています。
体内時計のリズムと環境リズムのずれをリセットするのが、太陽光のような強い光を朝に浴びることなのです。
環境リズムの調和を図るためには次のようなことを心がけましょう。
▸ 朝
太陽の光を浴びる
窓際にベッドをおいて自然に太陽光が入るようにする
▸ 昼
積極的に部屋の外に出て活動をしましょう
▸ 夜
寝るときは部屋を暗くしましょう
夜9時以降は強い光がある場所や強い光をさけましょう
(この光がリズムのズレを起こします)
短い時間を測る体内時計「インターバルタイマー」
もうひとつが「インターバルタイマー」と呼ばれる体内時計です。
たとえば、心の中で10秒数えて~とかストップウォッチ10秒ぴったりゲームみたいにして、遊ぶことができます。
この比較的短い時間を測定するための体内時計が「インターバルタイマー」です。
無意識で活動するインターバルタイマー
この「インターバルタイマー」は、無意識化でわたしたちの生活、運動、精神活動など様々なものに関与していると考えられており、積極的に行動のタイミンクや間合いをとり 、環境ヘ適応するために重要な役割を果たしていると言われています。
たとえば、
▸ 重要な要件を伝えるときは「ゆっくり」しゃべる
▸ 声掛けや話をするタイミングを見計らう
▸ 10分時間があったら何ができるのかといった、時間的な見積もりをする
このような行動をとるためにインターバルタイマーを使っています。
インターバルタイマーは一日のリズムの影響を受ける
驚くことに、インターバルタイマーは一日のリズムの影響を受けて、遅くなったり早くなったりするのです。
これはある実験の結果です。午前中、午後、夕方、夜の4回に分けて、秒針の見えないタイマーで10秒ピッタリになることを目指して測定実験をしました。
すると、午前中がもっとも遅く測定され、午後、夕方になるにつれてその時間的な感覚が、徐々に早くなっていくという結果がでました。
つまり、インターバルタイマーの時間が午前中は遅く、午後にかけて徐々に早くなっていくのです。
すると、どういくことが起きるのでしょうか?
体内時計が遅いと時間経過を早く感じる
この図を見てください。
実際の時間経過が10分として、インターバルタイマーが遅い人はどう感じるでしょうか。
時間の感覚が遅いので、自分の時間感覚の「10分」は実際の経過時間よりも長くなります。
するとどうでしょう、「自分では10分のつもり」でも、実際は10分を過ぎてしまっています。
「時間がたつのがはやいなぁ」と感じるわけです。
逆に体内時計が早い人はどう感じるのでしょうか
時間の感覚が早いので、「自分は10分のつもり」でも、実際は10分に到達していない。
「10分たったと思ったのに、まだ立ってないじゃん。時間がすすむのがおそいなぁ」
と感じるのです。
したがって、インターバルタイマーが遅い午前中は、時間がたつのが早く感じ、インターバルタイマーが早くなる午後は時間がたつのが遅く感じるというわけです。
「ADHD」に関係している?
最近では、ドパミンの分泌によってインターバルタイマーの速度は調整されているとも考えられています。
このドパミンが関係していることから、「ADHD」のお子さんは、主観的な時間経過が極端に早いことが知られていて、これが症状に関係しているという説もあります。
時間知覚のズレが、十分な時間待つことができなかったり、順序立てた行動を遂行できないといったADHD 児者の日常生活での困難と関連している可能性があると報告している文献もあります。
まとめ
体内時計は日々の生活リズムを作るうえでとても重要な機能です。
このリズムが乱れると「睡眠障害」などの様々な症状を引き起こしてしまいます。
睡眠の質は、ADHDの症状にも関係していると報告されています。
朝起きて、夜は寝る。規則正しい生活習慣をこころがけましょう。
そして、インターバルタイマーは、時間をつかった遊びながら調整していくことで、生活面や精神活動、行動にも大きく影響してくるかもしれません。
引用文献
・栗山健一:ヒトの時間認知~概日ペースメーカーとインターパルタイマー~.時間生物学, vol10,No.2 (2004).pp1-pp6
・江頭優佳 他:注意欠如・多動症における時間知覚の最新知見. 日本生理人類学会誌 Vol.25, No.4.p109 – 115.2020
・中村渉:概日行動リズムを制御する視交叉上核.時間生物学. Vol.16 No.1.p3-9.2010
・体内時計:https://www.med.kindai.ac.jp/anato2/lecture051810_2.pdf
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