1から学ぶ発達障害や病気のきほんリハビリ専門解説!

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ダウン症候群のリハビリテーション

 ダウン症(候群)は、運動発達の遅れ、知的な遅れ、言語発達の遅れがあり、その特有の顔貌(顔つき)も特徴です。その他にも心臓の異常や消化管の異常など様々な病気を持つことがあります。(詳しい解説は後述します)

ダウン症のお子さんに対するリハビリテーションは様々あります。その一部をご紹介しましょう。

自分の足を発見!体の気づきを促す触れ合いあそび

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触れ合いあそび

 向かい合わせになって、子供を自分のふともものうえにのせます。
 自分のふとももをこどもの背もたれのようにします。目線をあわせながら、子どもの手や足をもって顔の前にもっていったり、体の真ん中に手足がくるようにします。首も反り返りやすいので、やや下向きにすることで腹筋の動きを促すこともできます。

 あかちゃんの時代は、体の筋緊張が低い傾向がありますから、仰向けに寝ると手と足が開いたような姿勢(frog position)をとります。また、背中の背筋が腹筋に比べて働きやすい状態になります。すると、定型発達のあかちゃんがおこなうような、手や足を自分でみたり、口に持ってくるような遊びができなくなってしまいます。
 上記のあそびは、自分の手足をみたり口に持っていったりするふれあいあそびは、自分の体の認識を高める上で、大変重要なあそびになります。

おすわりやたっち

おすわり

 筋緊張が低いためにおすわりの姿勢をたもつことが苦手です。ですので、自分の膝の上に座らせて、大人の体を背もたれがわりにしながら、お子さんのおすわりの姿勢を支えます。
 その状態でおもちゃで遊んだり、トランポリンに乗って揺らしたりします。
 姿勢が安定することで、子どもはおもちゃを操作しやすくなります。安心して「手」を使うことができます。
 また、感覚の変化や傾けたりすれば前庭覚の変化が脳に入りますから、その情報に基づいた体の動きを引き出すことができます。

たっち

 立位や立ち上がりをし始めるときは、足の裏の感覚を高めるようなあそびや経験をします。
 たとえば、くるくるチャイムのようなおもちゃを机の上や遠いところにおくと、どうでしょう。
 子どもは自ら立ち上がったり、前に手を伸ばします。そうすると自然に足のうらに体重がかかってきます。
 さらにおもちゃの穴を狭くして、押し込むように工夫すると、さらに踏ん張って入れようとしますから、さらに足の裏に体重がかかります。
 足への気づきが、後々の歩行につながっていきます。

 筋緊張や低緊張というキーワードがたくさん出てきましたので、ダウン症の筋緊張について少し解説します。

ダウン症のお子さんにみられる「低緊張」

 ダウン症のお子さんの多くに見られる運動機能の特徴として、「低緊張」というものがあります。低緊張とは、筋肉の張りが著しく弱い状態をいいます。

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低緊張とは?

 ぐにゃっとした柔らかい筋肉の張りは、ときに運動発達の妨げになることがあります。
 しかし、ダウン症のおこさんを小児リハビリでみていると、年齢とともに低緊張さはなくなり、体つきはしっかりしてくるお子さんが多いのも事実です。

 これについて、[Gross Mortor Skills for Children with Down Syndrome:A Guide for Parents and Professionals]という本のなかで、次のように明記されています。

「ダウン症児の筋緊張は」7歳ころには正常になる」

 とはいえ、年齢が小さい時は低緊張がみられるダウン症のお子さんですから、やはり適切なリハビリテーションが必要になります。

ダウン症は運動発達がゆっくりである

 ダウン症の発達については、次のように文献で報告されています。

生後早期の粗大運動能力がのちの運動能力に関連する。
ダウン症のおこさんは、いわゆる定型発達のおこさんと比較して、運動発達がゆっくりである。
この運動発達の違いは、運動機能以外にも脳の機能の未熟さも関係している。

 これをふまえますと、小さい時から運動機能の発達をうながすリハビリテーションが必要となります。運動に加えて、硬い・柔らかい、大きい・小さいなど感覚に変化をつけた、多彩な経験をすることで、外部環境からの情報を脳に取り込む経験をする。こういったリハビリテーションが重要なことがわかります。


 さらにリハビリテーションを考えていくうえで、年齢に合わせた支援やサポートが必要になってきます。
 次に、ダウン症候群のある方の「寿命」とライフステージについて迫っていきます。

平均寿命とライフステージ:4つの年齢

寿命について

 ダウン症候群のある方の平均寿命は、およそ60歳と言われています。
 その理由は、つぎのように報告されています。

小児期の健康管理の向上,とりわけ先天性心疾患の手術・術後成績の向上により,平均寿命が著
しく伸びている

 またこちらは、アメリカにおける調査報告です。すこし古いですが、平均寿命が増加していることが報告されています。

ダウン症の人の平均および中央値の死亡年齢は、過去40年間で大幅に増加しています。2007年の死亡時の平均年齢と中央値はそれぞれ47.3歳と53歳で、1970年以降の平均寿命が3.75倍に増加した。

 寿命が延びたことによって、子どもから大人に至るまで、ライフステージに合わせた支援や「人生や生活の質」への支援が求められています。

ライフステージ:4つの年齢

 ダウン症候群のある方たちにおいては、およそ60年と言われる人生を4つのライフステージに分けることが提唱されています。

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 リハビリテーションだけでなく、医療機関での健康管理、園や学校でのサポート、そして就労というように、ライフステージに合わせたサポートを適切に行うことによって、充実した暮らしを実現します。

ゆー
ゆー

お子さんとご家族を支えるために、さまざまな職種や領域の専門家が関わっていきます。

安心してダウン症候群のお子さんをそだてることができます。

ダウン症候群について

 ダウン症は21トリソミーともよばれ、余分な21番染色体によって引き起こされる、先天性の染色体異常です。
 運動発達の遅れ、知的な遅れ、言語発達の遅れなどがあり、その特有の顔貌(顔つき)も特徴です。その他にも心臓の異常や消化管の異常など様々な病気を持つことがあります。

 また、約60%の方が若年性アルツハイマー病を発症すると言われており、その変化は30代後半ころからはじまり、その後40代になると海馬萎縮や認知能力に変化が起きていたと報告されています。

 このアルツハイマー認知症とダウン症候群には、「アストロサイト」という細胞が関わっていることがわかりました。

ダウン症の知的障害を発症させるメカニズムが解明

 この「アストロサイト」と遺伝子の研究によって、ダウン症候群における知的発達障害の原因となるアストロサイトの異常な増殖の発生機序が解明されました。

ダウン症では、アストロサイト前駆細胞(まだ未熟なアストロサイト)の段階で、増殖するスピードが著しく早くなる。

ダウン症アストロサイトで増殖速度が増すのは、21番染色体上のDYRK1AとPIGPの2つの遺伝子が原因である

 この異常な増殖の原因となる「遺伝子」が特定されたことで、遺伝子治療法の開発に進むことが可能になることでしょう。新しい治療技術に期待したいですね。

まとめ

 ダウン症候群のお子さんは人懐っこいお子さんが多く、とにかくかわいい!小児リハビリの仕事をするうえでも「癒しの時間」になっています。

 いっぽうで運動発達や知的発達、日常生活の支援や園・学校生活の支援などなど、リハビリでアプローチすべきことが多い疾患でもあります。

 年齢に合わせ、適切なタイミングでリハビリテーションや、その他様々な支援を受けることによって、安心して育児をすることができます。困ったときは、まよわずにご相談を!

引用文献
・Gross Mortor Skills for Children with Down Syndrome:A Guide for Parents and Professionals
・Cardoso AC et al: Motor performance of children with Down syndrome and typical development at 2 to 4 and 26 months.Pediatr Phys Ther 27.pp135-pp141.2015
・神子嶋誠:Down症候群児に対する運動発達支援.Journal of CLINICAL REHABILITATION.vol.28.No.4.pp338-pp346.2019
・ダウン症のあるくらし
https://yokohamapj.org/communicate/living-with-down-syndrome/
・川谷圭司他:A human isogenic iPSC-derived cell line panel identifies major regulators of aberrant astrocyte proliferation in Down syndrome. Communications Biology. 2021
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210614_1
・Angela P Presson et.al : Current estimate of Down Syndrome population prevalence in the United States. J Pediatr163(4). 1163-8. 2013
・Juan Fortea et al. :Clinical and biomarker changes of Alzheimer’s disease in adults with Down syndrome: a cross-sectional study. Lancet (London, England). 2020 06 27;395(10242);1988-1997
・Toshikawa, H., Ikenaka, A., Li, L. et al. N-Acetylcysteine prevents amyloid-β secretion in neurons derived from human pluripotent stem cells with trisomy 21. Sci Rep 11, 17377 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-96697-7
・植田 紀美子:21トリソミーのある方のくらし
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000792732.pdf
・浅井将 他:ダウン症患者における早期アルツハイマー病発症メカニズムの解明. YAKUGAKU ZASSHI 137(7) .801-805 .2017
・Alan H. Bittles et al : The four ages of Down syndrome.European Journal of Public Health, Vol. 17, No. 2, 221-225.2006

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