毎日、子どもと関わると、色々な発見や成長を目の当たりにします。
そんな私のリハビリカルテ 第4弾は「なかなか指示が入らない5歳のお子さん」です。
この指示が入らないということの要因を考えることは大変重要です。
ですが、実は特性を逆手にとって、それを利用すると簡単に指示が入るようになるのです。
さっそく、解説していきましょう!
症例の紹介
今回も実際の症例に基づいた、架空の症例を用いて説明していきます。
ここでは仮にDちゃんとしておきます。
Dちゃん
・男の子 5歳
・通園施設に通っています。
・言語発達の遅れ、知的な遅れ、自閉症スペクトラム障害
コミュニケーションは発声が主で、単語はしゃべることができません。理解も簡単な単語ならば理解できますが、ほとんどが状況判断で理解しています。
人への注目や他者への意識はあまりなく、指示がほとんど入りません。
かなり落ち着きがなく、病院の廊下も走り回ってしまいます。好きな遊びは、トランポリン、大きなボールにのってはねる、ブランコなどダイナミックな遊びを好んで行います。
また、洗濯ばさみで指をはさむ遊びも好んで行います。
遊びの様子から、次のような特性があると推測しました。
特に「強め」の感覚を好む傾向があるようです。
逆に言えば、
弱い感覚刺激はあまり感じない、もしくは苦手ささえ感じてしまう可能性が推測できます。
触覚と圧覚の特性を逆に利用する
Dちゃんの特性として、強めの感覚が好きであることがわかりました。
特に固有受容覚と圧覚は、本人にとって注目を集めやすい感覚のようです。
この特性をじょうずに利用すると、おもちゃの使い方や動作を簡単に覚えさせることができます。
ひもで引っ張るとゼンマイがまわるおもちゃ
ある日のリハビリで、わたしはひとつのおもちゃをDちゃんに与えました。
それは、紐で引っ張るとゼンマイが回るぬいぐるみのおもちゃです。ゼンマイが動くとぬいぐるみがぶるぶると振動します。
このおもちゃの使い方を、Dちゃんに覚えてもらおうと試みました。
すこし強めに手を握りながら、一緒にひもを引っ張る
Dちゃんの手の上からわたしが一緒に手を握ります。そして、一緒にひもを引っ張って遊びます。
そのときに、やや強めに握るのがポイント!
試行回数は1回です。 結果はどうなったとおもいますか?
たった1回一緒に遊んだだけですが、Dちゃんの脳にはしっかりと情報が届いたようです!
軽く手を握ると?
強く握る前に、試しに軽く手に触れて一緒に遊べるか試してみました。
その結果は…?
Dちゃんは、すぐに手を引っ込めて逃げてしまいました。
どうやら、軽く触った感覚は「くすぐったい」と感じるようで苦手なようです。一緒に遊ぶことができませんでした。
目の前でセラピストが遊ぶ様子を見せたら?
では、遊ぶ様子をDちゃんの目の前でみせたらどうでしょうか?
はたして、結果は…?
まったく、見ませんでした…。
もともと、他人を意識したり、他人に注目することが苦手なお子さんです。当然、目の前で遊んだとしても、それを見るとは限りません。また、視覚として情報は入ったとしても、そのおもちゃの使い方を理解したり、動きを理解する情報として使えていない可能性があります。
特性を理解することで、対応方法が理解できる
子どもの持つ特性を理解することによって、その子どもに適した対応方法も理解することができます。特性は「デメリット」にもなりえますが、「メリット」でもあるのです。
Dちゃんの場合を見てみましょう。
ちょっと別の例もみてみましょう
デメリットも見方をかえれば、対応方法のひとつとして利用することができます。
つまり、
子どもの取り扱い説明書は、子ども自身がわたしたちに教えてくれているのです。
まとめ
今回紹介した症例は、あくまでも架空です。ですが、この特性をじょうずに利用する手段は、どのお子さんにも有効です。
断言します! 10人いたら、10人すべてにあてはまります。
ですが、効果を出すためにはきちんとお子さんの特性を把握する、実態を細やかに把握する必要があるのも事実です。
もし、あなたがセラピストであるなら、きちんと評価をしてご家族に説明できるようにしましょう。
もしあなたがお母さんであるなら、それを自分でする必要はありません。
なぜなら、「専門家」がいるからです。ぜひ、専門家にご相談ください!
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