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集中のゾーンに突入せよ!わが家のメンタルトレーニング。実践解説付

メンタルトレーニング 1から学ぶスポーツ医学

 我が家の四男は野球を習っています。
 最近、大きな問題を抱えています。それは、、、

 「試合でバッターボックスに入ると、硬直してバットを振ることができない」

 どうやら試合で極度に緊張をしてしまうようなのです。

 実はこの緊張状態と運動のパフォーマンスには大きな関係があったのです。

 今回は、わたしが子どもに考案したメンタルトレーニングを紹介しながら、メンタルトレーニングの効果や実践方法について解説していきます。

メンタルトレーニングの最大の目的の 1 つは、選手自身が必要なときに、適切に実践できることである。


わが家のメンタルトレーニング

 様々な論文をもとに、メンタルトレーニング7つのステップを考えてみました。

わが家のメンタルトレーニング

 この7つのステップについて、細かく解説していきましょう。

1. 自分の気持ちを話そう

 不安な事、心配な事、プレー中にどんな気持ちになっているのかを、素直に表現しよう。不安になっているときは、体にどんな変化がおきているかを話そう。

「しんぞうがどきどきして、胸のあたりが気持ち悪くなる。どうにもできない」

感情を外に向けて出す「表現的心理療法」

 こころのサポートの初歩や出発点となります。
 安心できる環境のもと、抱えている感情を外に向けて発散する(カタルシス効果)こと目的としています。話をきく側は、現状のありのままを受け入れて共感します。

 ある心理療法の文献ではこのような記述があります。

パニックになった患者のケースでは、患者は最後の瞬間までたった一言、二言でも感情を表現することを望んだ。

 つまり、わずかの時間であっても感情を外に向けて出すことが大きな助けになるということを表しています。

2. 目標を決めよう

 自信をもって取り組むことができる強いメンタルを作るためには、自己効力感や自己肯定感が大変重要になります。その気持ちを作るために必要な要素が「達成経験」です。

 なにかを成し遂げた時、達成した経験がよいメンタルを作り出すのです。

 目標を設定することは、この達成経験をするために大いに役立ちます。ただし、あまりに高い目標は達成できないために望ましくありません。
 適切に達成経験ができるように、長い目で見た長期的なゴールと、すぐに達成できそうな目先のショートゴールを決めましょう。

3. 呼吸法を学ぼう

 試合中に不安や心配ごとなどで体に不調を感じたときに、適度にリラックスできるスキルを学びましょう。

わが家で実践している呼吸法 7つの実践

①腹式呼吸

 仰向けになって、力をぬきます。お腹に手を置いて、お腹を膨らませながら深呼吸します。いわゆる、腹式呼吸。しっかりとお腹で息ができているかを確認するために、お腹に手を置いているわけです。

 ここから先は「筋弛緩法」を取り入れます。

②手を握る

メンタルトレーニング,スポーツ,子ども,呼吸,リラックス
手を握る、脱力

 息を吸いながら、右手をギュッと握りしめます。筋肉が固くなる感触を感じとりながら、5~10秒ほど止めます。そのあと、一気に脱力します。
 右でやったら、次は左手でも同じことをします。片手ずつやったら、最後に両手で行います。

③つま先を伸ばす

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つま先をのばす、脱力

 今度は足先で行います。息を吸いながら右足のつま先を伸ばすように力を入れます。筋肉が固くなるのを感じながら5~10秒ほどキープ、その後一気に脱力します。
 右ができたら、今度は左足。片足ずつやったら、最後に両足で行います。

④つま先を上に向ける

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つま先をあげる、脱力

 次は、右足のつま先を上に向けるように力を入れます。これも筋肉が固くなるよう感触を感じながら5~10秒ほどキープ。その後、一気に脱力します。
 左足、両足で行います。

⑤肩をすくめる

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すくめる、脱力

 両肩を耳にくっつけるように、肩をすくめる。これも同じように筋肉が固くなるよう感触を感じながら5~10秒ほどキープ。その後、一気に脱力します。

⑥顔のトレーニング

 顔のトレーニングです。強く目を閉じて、歯を食いしばるように力をいれます。これも同じように筋肉が固くなるよう感触を感じながら5~10秒ほどキープ。その後、一気に脱力します。
*プライバシー保護のため、写真はありません…

⑦気持ちを切り替える動作の学習

 緊張を感じたら、グーパーを繰り返す、両肩をすぼめて脱力するといった、さきで練習した動きの一部を取り入れます。合わせて、腹式呼吸をすることで適度にリラックスできるようにします。
*腹式呼吸の効果は後述

4. ポジティブな言葉を自分自身に伝えよう

 ぼくは○○はできる、わたしは○○だ。とポジティブな言葉で自分を勇気づけよう。
 ネガティブな言葉やイメージは、見方を変えてポジティブに表現できるように、言い換えのトレーニングをしよう。

アファーメーションとリフレーミング

 自分を励ますような前向きな声掛けをすることを、「アファーメーション」といいます。

 一方で、ネガティブにみえる出来事に対して、目線を変えて違う角度から見直すことを「リフレーミング」といいます。
 ネガティブな発言をポジティブな発言に変換する手法「Negative-to-Positive Self Talk Strategies」にもつながります。
 このような言い換えは、論文では次のように述べられています。

最終的にアスリート自身の思考や言動によって留まる不安や焦りを解放することに役立つ

5. 良いイメージを頭の中に作ろう

自分がじょうずにプレイできるイメージを作り出せるように練習中から意識しよう。ほかの人の動画などを見て「じょうずなプレイ」を見て、自分に置き換えてみよう。

運動とイメージ

 実際に運動を行っていなくても、その運動をイメージすることで脳のなかでは、実際の身体的な活動時に起こる筋肉の神経支配と同じ働きをすることが科学的にわかっています。

 また、人の行動を観察することによって、自分の能力についての情報を得ることができます。例えば、自分の歩く様子をじっくり見る機会は少ないですが、同じ人間である他者の歩く様子をみて、自分も同じように歩いているだろうとイメージすることです。これを「社会的な運動イメージ」と言います。

6. ルーティンを身に着けよう

 決まった動き、決まった活動を決めて集中力を高めよう。

プレパフォーマンスルーティン

  プレイ直前の自分の集中力を妨げる「原因」を取り除き、正確にパフォーマンスをだせるようするための個人的な活動のことをいいます。同じような動作、決まった音楽を聴いて、周囲の音をシャットダウンし集中力を高めるといったことをいいます。

 テレビなどで、トップアスリートのルーティンを紹介する映像を見ることができますね。

7. 「結果」は実行するまでわからない

 実行していないことや未来に不安を感じているのであれば、「いま実行した」出来事の心配をしよう。物事の考え方を変えていこう。


 ここまでが、わが家で実践しているメンタルトレーニングです。
 もちろんトレーニングですから、今日明日ですぐにできるようになるわけではありません。

 ちょっとずつ練習しながら、自分のココロと向き合っていくことが重要です。しかし、練習でうまくいかなかったときに、自分の気持ちを切り替える一つの手段として、子どものなかでは身についているようです。

 そのため、落ち込んだ状態からの気持ちの切り替えが、メンタルトレーニングを始める前よりも早くなったと感じています。


 ここからは、メンタルトレーニングに必要な知識について解説していきます。

ゾーンとは逆U字曲線である

 高い集中力を保ち、最高のパフォーマンスが出せる瞬間を「ゾーンに入った」と言ったりします。このゾーンと呼ばれる領域は文献では、次のように述べられています。

ある一定水準のゾーンと呼ばれる適切な範囲内の覚醒水準を保つことが必要不可欠となる。

 このゾーンに入るための適切な範囲とはどのようなことでしょうか?

逆U字仮説

 このグラフは「逆U字仮説」という考え方をもとに作成されたものです。

 黄色の部分は、適度な覚醒・緊張度を保った時にもっとも高いパフォーマンスが生まれる、いわゆる「ゾーン」という状態を示したものです。

 一方で「覚醒・緊張度」が低すぎると、パフォーマンスが「低い」状態となり、逆に「覚醒・緊張度」が高すぎても、パフォーマンスが「低い」状態となってしまいます。

 論文では次のように述べられています。

 高過ぎる覚醒水準と認知的不安の複合的作用によって誘発される、身体の硬直を含む様々な生理反応や焦り、心配などを過緊張という。
  この過緊張は、通常では考えられないよ うな急激なパフォーマンスの降下を引き起こし、この状況は一度陥ってしまうと回復が困難である。

 適度な緊張状態を作りだし、最高のパフォーマンスを出せるようにしていく。それが、メンタルトレーニングの目的なのです。

リラクゼーションや呼吸法の効果

 呼吸法やリラクゼーションはアスリートにとって次のような効果があると言われています。

腹式呼吸施行後は副交感神経系の活動量は腹式呼吸前に比べると有意に高くなる

 副交感神経とは、体やこころがリラックスした時に働く自律神経です。腹式呼吸をすることで、この副交感神経を高めることができると結果が出ています。

 呼吸を落ち着かせたり、心拍数を下げる効果があります。

 通常、自律神経は自分の意志でコントロールすることは難しいとされていますが、この「呼吸」に関しては、自分の意志でコントロールできるもののひとつとされています。

また、競技パフォーマンスの向上を実現する方法として、リラクセーション技法が有効であることが示唆されています。

わが家で取り入れたメンタルトレーニング方法

 今回の記事を書くにあたって参考にしたトレーニングがこちらです。

Self-Efficacy Theory(自己効力感理論)

この「Self-Efficacy Theory」には4つの要素が必要とされています。

1.達成経験

 自分自身が実際にものごとを達成したり成功したりする経験。

 自信をもって取り組むためには達成感を感じることが重要です。そのために、目標を設定することが必要となってきます。

2.代理経験

 人が何かを達成したり成功したりする経験を観察することによって自分にも達成可能であると感じる経験。

 他者の上手くできている事、自分が達成したいことができている人の様子を見ることで、それを自分に置き換えてよいイメージができるようにトレーニングします。

3.言語的説得

 自分に能力があることを自分自身や他人によって言語的に説明されること。

 自分自身に、あるいは周囲の人から言葉による励ましを行います。ポジティブな声掛けは、ポジティブな思考を生み出し、その思考が運動を良い方向に導いてくれます。

4.生理的情緒的高揚

 苦手だと感じている場面において生理的反応や情緒的反応が乱される事なく適応していることを確認できること

 緊張した場面でも、自分自身が安定していると自覚することが重要です。逆にいえば、緊張しているときの体やこころの変化を自分自身で知っていなければなりません。だからこそ、その時の心境や体の変化を言葉にして出しておく必要があるのです。


 これら4つの要素を出来る限り子どもにもわかりやすい形で示したものが、わが家のメンタルトレーニングのベースになっています。

まとめ

 わが子は現在もトレーニングを継続しています。このトレーニングによって、緊張した場面では自分で「深呼吸」をしたり、肩をすぼめて力を抜くといった行動がでるようになりました。

 本人も効果を感じているのか、少しずつ意識が変化してきているようです。

 メンタルトレーニングは、選手自身がもっともよい状態でパフォーマンスを発揮するためのひとつの方法です。論文では、このようにのべられています。

技術面や身体面に加えて最後の “パズルの一ピース” を完成させる為の心理面の技術を獲得することは、紙一重で勝敗を分け競技成績を大きく左右する重要な要素となっている

 あくまでも身体面や技術面を土台として、その力を最大限発揮できるようにしていくことが大きな目的となります。

 目指せ「ゾーン」へ突入! 最高のパフォーマンスを!

引用文献
・笹塲育子:メンタルトレーニングに関する実証的研究-エリートアスリートの事例をもとに-.立命館大学審査博士論文. 立命館大学.2016
・煙山千尋弓:道選手に対するメンタル・トレーニングの効果―弓道選手版心理的 ―弓道選手版心理的弓道選手版心理的スキル尺度の作成およびトレーニング効果の検討―.桜美林大学大学院 博士論文.2010
・リラクセーション・トレーニング:福井県スポーツ医・科学委員会心理部会
・村瀬嘉代子:子どもと家族への統合的心理療法 : その創案と臨床的展開. 博士学位論文. 奈良女子大学. 2002
・Bandura, A.: Self-efficacy: the exercise of control. New York: W.H. Freeman. 1997
・Maddux, J. E. : Self-efficacy, adaptation, and adjustment. New York, NY: Plenum. 1995
・片岡秋子・渋谷菜穂子:腹式呼吸における呼息-吸息時間の変化が及ぼす自律神経系への影響. 日本看護医療学会雑誌, 4(1), 14-18. 2002
・片岡秋子・門間正子・林裕子:腹式呼吸と自然呼吸の相違による自律神経系への影響. ヒューマンケア, 6, 8-13.2005
・Hardy, L.:Testing the predictions of the cusp catastrophe model of anxiety and performance. The Sport Psychologist, 10(2), 140-156. 1996
・Weinberg, R. S., & Gould, D. : Foundations of sport and exercise psychology third edition. Champaign, IL:Human Kinetic.2003
・Landers, D. M., & Arent, S. M.: Physical activity and mental health. In R. Singer, H. Hausenblas, & C. Janelle (Eds.), Handbook of sport psychology (2nd ed., pp. 740-765). New York: Wiley. 2001

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