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“幼児期の脳の逆転力&回復: 損傷を受けた脳の可逆性とリハビリ

もっと知りたい小児の知識

 幼い子が事故で脳に損傷を負ったとき、私を含めた療法士たちは心を痛めました。しかし、その苦難の中で、驚くべきことが起こりました。医師たちは私たちに言いました。「子供の脳は驚くほどの可逆性を持っています。」その言葉に私たちは希望を見出しました。

 その子は小さな身体で大きな戦いを繰り広げました。リハビリや治療を通じて、少しずつですが彼の脳は回復し始めました。そのプロセスは、私たちに幼い脳の驚異的な再生力を目の当たりにさせました。

 今、その子は元気に成長しています。彼の脳は損傷を受けましたが、その柔軟性と再生力によって、彼は日々新しいことを学び、成長しています。この経験から、私たちは幼い脳の驚くべき耐性と再生力を知ることができました。そして、他の家族や子供たちにも希望を与えることができると信じています。

 幼い脳は驚くほどの柔軟性を持ち、驚くほどの耐性を持っています。一見脆弱に見える幼児の脳は、実は驚異的な再生力を秘めているのです。科学の最新の研究から、幼い脳の可逆性について驚くべき事実が浮かび上がってきました。この記事では、脳の可逆性と幼い脳の特性について深く探求し、我々がこれらの発見から学ぶことができることについて考察していきます。

脳の可逆性。可逆性とは、何かを変化させた後に元の状態に戻すことができることを指します。興味深い文献を読みましたので、その内容をご紹介いたします。

脳の可逆性について興味深い実験とはなんですか?

紹介する実験は、げっ歯類(ねずみ目)のラットを使った実験です。

・実験は幼いラット(生後5日目)を対象に行われました。
・ラットの右脳を意図的に切除し、その後、飼育が行われました。
・10週間から14週間後、ラットに隙間から手を伸ばしてエサを取る課題が与えられました。
・結果は、切除された右脳の影響下にある左手の動きを回復したことを示しました。

 実験の対象は、生後5日目の幼いラットでした。実験では、ラットの脳の右側を意図的に切除しました。脳は左右に分かれており、脳梁でつながっています。脳からの命令は錐体交差で左右が入れ替わるため、右の脳は主に左半身を支配し、左の脳は主に右半身を支配します。

 10週間から14週間後、ラットに隙間から手を伸ばしてエサを取るという課題が与えられました。これはリハビリの一環です。実験の結果、切除した側(右側)と同じ側(右側)の手では成功率が50%となりました。また、切除した側と反対側(左側)の手では、動きが不十分でしたが、成功率は30%程度でした。つまり、切除された右側の脳が支配する左側の手の動きを一部取り戻したということです。

切除された脳を調べてみると、さらに興味深いことが。

実験後、ラットの脳の回路を詳しく分析した結果、以下のことが明らかになりました。

・残された側の脳が、動かない方の半身をコントロールする回路が形成されていました。

・損傷を受けた部分を代償するように、残された脳が活性化され、反対側の手足をコントロールする力が発揮されました。

 この結果から、幼少期の脳は特に可塑性が高く、損傷を受けた部分を代償するために残された脳領域が活性化されることが示唆されます。ただし、個人差があることも考慮されるべきです。

脳には柔軟に対応する力がある

 脳の可逆性に関するもう1つの興味深い話題として、神経可塑性と言われる現象があります。

 神経可塑性は、脳が経験や学習によって自らを変化させる能力を指します。

 例えば、ある研究では、視覚障害者が点字を読む際に、触覚野が視覚処理に利用されることが明らかにされました。

 これは、視覚野が視覚情報を処理するためだけでなく、新たな機能を獲得することができることを示しています。このように、脳は外部の刺激や環境の変化に応じて機能や結合パターンを変化させる能力を持っています。

 また、脳の可逆性はリハビリテーションや治療にも関連しています。例えば、脳卒中後のリハビリテーションでは、脳の可塑性を利用して損傷を受けた部分を他の部分が補うように促すことで、患者の機能回復を支援します。

 これらの事例は、脳が常に変化し、適応する能力を持っていることを示しています。このような神経可塑性は、私たちの日常生活においても重要な役割を果たしており、新たな療法やリハビリテーションの手法の開発にも貢献しています。

柔軟に変化する幼い脳の力

「幼い脳、幼児期のようなおさない時に大脳半球の切除術を受けたお子さんは、しばしば反対側の手足の運動を維持している時がある。」
文献より引用

 幼い頃に脳に損傷を受けた子供たちが動きを獲得している例は実際に多く見られます。私自身も現場で何例も経験しています。ただし、動くという事実はあれど、思い通りに細やかな動きを出すとなると、そこには適切なリハビリが必要になるとも感じています。

 たとえば、一部の脳性麻痺患者は、片側の手足が麻痺している状態でも、他の手足を使って歩行や日常生活動作を行うことができます。これは、損傷を受けた部分を代償するために、残された脳領域が活性化され、他の部分がその機能を補うことができるからです。

 しかし、動くこと自体が可能であっても、思い通りに細かい動きを出すことは難しい場合があります。たとえば、脳性麻痺患者の一部は、手先の器用さや正確な筋肉の制御が難しいと感じることがあります。

 このような場合、適切なリハビリが必要となります。リハビリテーションでは、特定の動作や筋肉を強化し、正確な動きや制御を身につけるためのトレーニングが行われます。また、リハビリテーションは個々の患者の状況やニーズに合わせてカスタマイズされる必要があります。

 幼い頃から適切なリハビリを行うことは、運動機能の発達や改善にとって重要です。早期からリハビリを行うことで、子供たちがより良い動きを身につけ、日常生活においてより独立した生活を送ることができるようになります。

まとめ

 脳の可逆性は、外部の刺激や環境の変化に応じて、脳が自らを変化させ、機能を回復または修復する能力を指します。幼い頃から適切なリハビリを行うことは、やはり運動機能の発達や改善にとって重要となります。

 脳の力、子どもの力を信じて、私たちリハビリテーションをする療法士は、子どもと向き合っているのです。

引用文献
磯村朋子,正高信男:脳の可逆性と学習および発達障害.OTジャーナル45 (7).656-660.2011

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