「サ行がタ行になってしまう」
「でも、なぜか言える言葉もある」
このような子どもの発音の様子に、戸惑った経験はありませんか?
実は、サ行の発音は
**舌の力の問題ではなく、「音の並び(音環境)」や「発達段階」**によって、
言いやすさが大きく変わります。
この記事では、
- なぜ“言いやすい言葉”があるのか
- サ行を引き出しやすい語の特徴
- 家庭・療育・臨床ですぐ使える語リスト
を、医学的・音声学的知見に基づいてまとめました。
なぜ「サ行が言いやすい言葉」が存在するのか?

サ行(/s/)は、
- 舌を上の歯の少し後ろに近づけ
- 完全には閉じず
- 細いすき間に息を流す
という、とても繊細な構音運動が必要な音です。
そのため、発達の途中では、
- 舌が閉じてしまい
- タ行(/t/)に置き換わる
ということがよく起こります。
しかし、
前後の音が舌の位置や動きを助けてくれる場合、
サ行は驚くほどきれいに出ることがあります。
これが、「言える言葉」が存在する理由です。
① ナ行+サ行/ラ行+サ行の語リスト

(舌尖を前方に保ちやすい音環境)
ナ行+サ行(最も安定しやすい)
ナ行は、舌先がすでに歯茎付近にあり、
サ行への移行がとてもスムーズです。
練習に使いやすい言葉
- なす
- にし
- なにする(「なに・する」と区切って)
- ぬの+す(会話の中で自然に)
👉 ポイント
「閉じずにすき間を作る」感覚を、
無理なく体験しやすい組み合わせです。
ラ行+サ行(次のステップ)
ラ行は、舌が強く接触しないため、
サ行の摩擦が保たれやすい音です。
練習に使いやすい言葉
- りす
- らいす
- くらす
- ひろす
👉 ナ行よりやや難しいですが、
「サ行らしさ」を育てるのにとても有効です。
②「し・す → さ・せ・そ」への段階別語群
サ行は、すべて同じ難しさではありません。
一般的に、次の順で出やすいと考えられています。
STEP1|し・す(最初に育てたい音)
舌が高い位置を保ちやすく、
摩擦音が安定しやすい音です。
名詞
- すし
- すいか
- すず
- しろ
- しお
動詞
- すわる
- すべる
- しめる
👉 ここが安定すれば、
「サ行を出す力」はすでにあります。
STEP2|さ(口の開きが大きくなり難度アップ)
名詞
- さる
- さかな
- さくら
動詞
- さがす
- さわる
👉 ゆっくり・小さな声で言うと成功しやすくなります。
STEP3|せ(舌位置の保持が必要)
名詞
- せみ
- せなか
- せんせい
動詞
- せんたくする
STEP4|そ(最も難しく、最後まで残りやすい)
名詞
- そら
- そと
- そば
動詞
- そうじする
- そろえる
👉 「そ」は最後まで残っても問題ありません。
焦らず、自然な使用を大切にします。
③ 品詞別にみるおすすめ練習語
名詞(イメージが明確で安定しやすい)
- りす
- すいか
- さかな
- そら
- せみ
👉 最初は名詞からが基本です。
動詞(動作と結びつけやすい)
- すわる
- すべる
- ひろす
- さがす
- そうじする
👉 体を動かしながら言うと、
構音運動も安定します。
擬音語・擬態語(遊びで使える)
- すーっ
- すいすい
- さらさら
- さっさっ
👉 正確さより、楽しさと成功体験を優先します。
④ 年齢・発達段階別のおすすめ語
3歳前後
- すし
- すいか
- すず
- りす
▶ 出やすい音だけを厳選
4歳前後
- さかな
- さる
- すべる
- ひろす
▶ 「し・す」と「さ」を混ぜて使用
5歳前後
- せんせい
- そら
- そうじする
▶ 会話の中で自然に使う
6歳以降
- そろえる
- せつめいする
- そうぞうする
▶ 意識させすぎないことが大切
⑤ チェックリスト

観察用
- □ し・すは安定している
- □ 単語だとサ行が出る
- □ ナ行・ラ行の後は言いやすい
語選び
- □ 破裂音(タ・カ・パ)が前後にない
- □ 子どもが知っている言葉
- □ 意味や動作と結びついている
まとめ

サ行の発音練習で最も大切なのは、
**「正しく言わせること」ではなく「言いやすい言葉を選ぶこと」**です。
- 出やすい音環境を使う
- 成功した言葉を増やす
- 発達段階に合わせて広げる
この積み重ねが、
サ行を自然で安定した発音へと導いてくれます。


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