感覚の鈍感さを持つ子どもたち
その中で、鈍感さに対して能動的に行動をする子どもたちの特性を「感覚探究」と呼びます。
この能動的に動く子どもたちをどのように支援したらよいのでしょうか?
今回は、「あそび」に焦点をあてて、具体的な対応方法を紐解いていきます。
感覚鈍麻の代表格「低登録」の子どもとも若干共通するところがありますので、詳しくはこちらの記事も参考にしてください↓
「あそび」を感覚から支援する
聴覚からの支援
音のバリエーションを増やす
感覚探究の子どもは、感覚を得るために行動をとります。効果的に感覚を満たすことが支援のポイントです。
例えば、太鼓やシンバル、タンバリン、鈴など、音の違いを楽しめる楽器を提供します。異なるトーンやリズムを体感でき、聴覚の刺激を受ける機会が増えます。
ペットボトルや鍋、スプーンなど、日常品で音を出す遊びを取り入れ、自分で音を作り出す楽しさを体験させるのも有効です。
そして、これら音が出る遊びについては、一定時間「大きな音」を出す遊びをしても良いことにする、あるいは大きな音を出しても良い場所や環境を提供してあげましょう。
環境音を活かす
自然の音(風の音、鳥の声、葉っぱが揺れる音)に耳を傾けさせたり、街の音(車、電車など)を利用して音の違いを学ばせたりできます。
波の音、雨の音、森の音など、自然や人工の環境音を流し、集中しながら遊ぶことも可能です。BGMを流しておくのも効果的です。
意外かもしれませんが、遊ぶときに「テレビをつけておく」のも聴覚から刺激をいれるための工夫の一つなのです。
音にフォーカスする探求的なゲーム
目を閉じて、いろんな音を聞かせ、その音が何かを当てるゲームを行います。音への注意力や探求心を刺激します。また、音の高さや音量に注目し、それを意識して違う音を聞き分けたり、作り出したりすることで、聴覚への興味を深めます。
手拍子や足踏みなど、リズムを体で表現する遊びを取り入れると、聴覚と身体感覚の統合を助けます。
視覚からの支援
視覚刺激の利用
感覚を求めることが感覚探索の特性です。これを利用し、まわりに視覚的に興味を引くようなものや活動をたくさん設けることで、刺激が入り遊びをより脳が認識しやすくなります。
また、風車や回転式のおもちゃ、吊るしたモビールなど、視覚的に動く物体を提供することで、子どもが視覚的に追いかけたくなる刺激を与えられます。
ほかにも砂時計や液体が流れ落ちるおもちゃ、グリッターボトルなど、ゆっくりと変化する視覚的な動きを楽しめるアイテムを使います。
色のコントラストやバリエーションを増やす
異なる色のブロックやパズルを使い、視覚的にコントラストの強い遊びを提供することが効果的です。特に明るい色や対照的な色が好まれます。
リモコンで色を変えられるライトやカラフルなLEDライトを使うと、光や色の変化に興味を持たせることができます。
上記だけでなく様々なおもちゃも、明るい色や対照的な配色の物を使うとよいでしょう。
光の動きを利用した遊び
壁や天井に映し出される動く映像や光を使った遊びを提供します。例えば、星が回転するライトやカラフルな模様が動くプロジェクターは、視覚刺激を強く提供します。
懐中電灯で壁に影を作り、それを観察したり、動かしたりする遊びは視覚的な興味を引き出します。
鏡を使った体験を拡充
鏡の反射や屈折を利用した万華鏡や鏡のおもちゃを通して、視覚の不思議さや楽しさを体験させます。動く模様や光が新しい視覚体験を提供します。
あるいは、床の高さに鏡を置いてみるのもよいでしょう。自分の遊んでいる姿が視覚に入ったり、鏡の刺激そのものが視覚から脳にはいってきます。
視覚と触覚を組み合わせた遊び
光を反射する物体や、触ると視覚的に変化するおもちゃを使って、視覚と触覚を同時に刺激することができます。光るスライムやジェルボールはその代表例です。
食紅やカラフルなビーズを使って、水の中に色をつけたり、おもちゃを浮かべたりすることで、視覚と触覚を組み合わせた遊びができます。
運動覚・前庭覚からの支援
障害物コースを作る
家具やクッションなどを使って家の中や公園で障害物コースを設置し、子どもに登ったり、潜ったり、バランスをとって歩いたりする機会を与えます。こうすることで、運動覚や前庭覚の刺激が得られ、バランス感覚や身体のコントロール能力が養われます。
また、お気に入りのおもちゃや興味がある物を手の届きにくい場所にあえておいてみましょう。あえて、遠くにおもちゃ箱を置いて取りに行くといった工夫もできます。そして、それを手に入れるために登ったり這ったりするコースを作って、体を動かす機会を増やします。
トランポリン、バランスボールやロデオマシンの使用
トランポリンは運動感覚やバランス感覚である前庭覚を効果的にとりこむことができる遊具の一つです。
また、バランスボールや軽いロデオマシンに座ってバランスを取る練習をすることで、前庭覚を刺激しながら遊べます。子どもが楽しみながら体幹を鍛えることができるので、前庭覚を育てるのに役立ちます。
重いおもちゃやカートの運搬
子どもが好きなおもちゃや道具を入れた少し重いバッグやカートを引いたり押したりさせることで、運動覚の刺激になります。重さのあるおもちゃを準備してもよいでしょう。
公園や家の中で、子どもが自ら荷物を運んだり、整理したりするような遊びに取り入れることができます。
ぶら下がり遊び
公園にある鉄棒やぶらんこにぶら下がったり、手で体を支えてぶらぶらする遊びは、前庭覚と運動覚の両方を刺激します。また、家の中ではドアに取り付けるトラピーズバーや吊り下げロープなどを使うこともできます。
はしゃぐ、大騒ぎする
くすぐりあそび、取っ組み合い、揺れる、回転するなど、子どもが大騒ぎして楽しめる遊びをしてみましょう。運動感覚や前庭覚をたっぷりと満たすことができます。
ただし、あまりにも強い刺激はテンションが上がりすぎてしまうため、机上課題とも組み合わせるなど、「静」と「動」のメリハリのきいた遊びを提供します。
ヨガやストレッチの取り入れ
簡単なヨガやストレッチのポーズを取り入れることも、前庭覚と運動覚を発達させるのに役立ちます。バランス感覚や筋肉を使った遊びを通じて感覚探究を促すことができます。
ダイナミックなお絵描き
壁一面に黒板や紙、あるいは段ボールを張り付けて、子どもが大きく体を動かしながら、お絵描きが楽しめる環境を提供します。
音楽と体の連動を意識した遊び
音楽に合わせてダンスやリズム遊びをすると、音と身体の動きが連動し、より豊かな感覚刺激を与えられます。特に感覚探究の子どもには、音楽のリズムに合わせてジャンプしたり、走ったりする遊びが効果的です。
手拍子や足踏みなど、リズムを体で表現する遊びを取り入れると、聴覚と身体感覚の統合を助けます。
触覚からの支援
異なる質感の素材を利用した遊び
中に異なる素材(砂、布、スポンジ、ジェル、ビーズなど)を入れたボックスやバッグに手を入れて、触覚を刺激する遊びを提供します。どんな感触か当てるゲームにすることもできます。
表面に異なる質感があるブロックやカードを使い、手触りを楽しむ遊びを促します。ザラザラ、ツルツル、ゴムのような質感など、さまざまな感覚を体験させることができます。
様々な床面で裸足になって遊ばせるのも効果的です。また、おもちゃの持ち手を様々な素材に変えて、刺激をくわるのもよいでしょう。
触覚を強調した水遊び
温度やテクスチャーが異なる水やジェル状の物質を使った水遊びを提供します。例えば、氷と温かい水、もしくは泡を加えた水など、異なる感触を感じさせることで触覚探究の機会が増えます。
フィンガーペインティングを行うときに、質感をくわえるのもよいでしょう。
水に浸したスポンジや水鉄砲で遊ぶことで、触覚とともに運動を組み合わせた遊びができます。
粘土や砂を活用した活動
感覚探究の子どもには、質感が変わる粘土や砂(キネティックサンドなど)で造形遊びをすることも刺激的です。手で押したり、ねじったりする感覚が触覚を強く引き出します。
色や感触が異なるスライムや砂を使って、手で自由に形を変えることができる遊びも効果的です。
ただし、触覚だけ過敏さがある子どももいるため、嫌がるときは無理強いするのはさけましょう。
「つかむ」「押す」「引っ張る」を取り入れた遊び
柔らかいボールや、引っ張ると伸びる素材(ストレッチバンド、ラバーバンドなど)を使い、つかむ、押す、引っ張るといった動作を楽しむ遊びを提供します。特に手の感覚が鈍麻している子どもに対しては、繰り返し触れることが有効です。
他者や環境と関わるあそび
他者と触れ合う遊びも効果的です。たとえば、ダンス、マッサージなどがあります。
また、環境と触れ合う活動をするのもよいでしょう。たとえば、庭いじりや料理などがあげられます。
触覚と運動を組み合わせた遊び
子どもが這って通るトンネルに布やスポンジなどの異なる素材を貼り付け、触りながら進むような遊びを提案します。また、クッションや柔らかいマットで転がったり飛び跳ねたりすることも触覚を刺激します。
柔らかいシリコンやゴム製の突起がついたボールを使って、子ども自身や他の人とマッサージし合う遊びも、触覚の楽しさを提供します。
嗅覚からの支援
自然の香りを取り入れた活動
花や草木、土の香りを感じるために、庭や公園で遊ばせることも効果的です。季節ごとに異なる自然の香りを楽しむことができ、特に花を摘む、落ち葉で遊ぶなど、自然との触れ合いを通じて嗅覚を豊かにします。
ハーブや花を植える活動を通じて、自然の香りを体験させることができます。例えば、ローズマリー、バジル、ミントなど、香りの強い植物を育てることで、嗅覚の刺激を与えます。
香りを感じる料理遊び
子どもと一緒に簡単なクッキーやケーキ作りを行い、バニラやシナモン、チョコレートの香りを楽しみます。焼いている間に広がる香りも嗅覚を刺激します。
異なるフルーツ(オレンジ、レモン、バナナなど)を用意し、香りを嗅ぎ分けたり、果物を切ったりする過程で嗅覚を楽しむことができます。
部屋の香りを変化させる
アロマディフューザーや香り付きキャンドルを使い、部屋全体の香りを定期的に変えて、子どもが違う香りに気づくような環境を作ることもできます。リラックス効果のあるラベンダーや、活発になるシトラス系など、遊びの内容に応じた香りを使い分けると良いでしょう。
おもちゃを掃除するときは、香り付きの掃除用ティッシュなどを使うのも効果的です。
まとめ
感覚の鈍さゆえに、ほしい感覚を求めて行動する「感覚探究」の子ども
その特性を理解したうえで、これらの支援は感覚探究の子どもが新しい体験を得ながら、楽しんで遊びに集中できる環境を提供します。
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