もっと知りたい小児の知識コラム:あなたの子育てをアップデート

親の養育態度が生む、兄弟に対する劣等感。解決するには「愛情」と「自立」が必要。

もっと知りたい小児の知識
養育態度と劣等感

 私自身、2人兄弟の次男です。我が家には4人の子供がおり、兄弟間のトラブルは、直上直下(たとえば、長男と次男、三男と四男など。)で起きやすいなぁと感じています。
 さて、今回は兄弟・姉妹などがいる家庭では親の養育態度にすこし気を付けなければならないという研究の結果を紹介します。
 それは、親の養育態度ときょうだいに対する劣等感についての研究です。
では、どうぞ。

仲良くしなければならないジレンマ「同胞葛藤」

 兄弟(以下姉妹含む)がいる家庭では、親の養育態度(たとえば、特定の子どもをかわいがる、ひいき等)によって、兄弟に対して敵意や劣等感を持つことがわかっています。
 一方で、親からは「兄弟はなかよく」と友好的な関係を兄弟間で築くことをもとめられ、子どもたちはその期待に応えようとします。
 これによって、「兄弟に対する敵意や劣等感 VS 友好関係」というジレンマを生み出します。

これを「同胞葛藤」といいます。

 この「同胞葛藤」が強すぎる場合、兄弟に対する負の感情が高まったり、退行(赤ちゃん返り)、睡眠障害、反抗的な態度をとる等の行動が現れることがあります。

「親から過干渉」「親に愛情を注がれなかった」「自立的に育てられなかった」

 上記の3つは、兄弟に対して劣等感を感じると回答した人が、親からどのような養育を受けたと認識しているかを調べた結果です。表にまとめると次のようになります。

・親から過干渉的に育てられる
・兄弟よりも、親に愛情を注がれなかったと認知している(感じている)
・兄弟よりも自立的に育てられなかったと認知している(感じている)

 過干渉と自立的に育てられなかったと感じているパターンは、親が様々な活動に対して干渉するために依存心が高く、自分で行わないために成功体験が少なくなる為、きょうだいに対して劣等感を感じやすいのではないかと考えられます。
 また、親に愛情を注がれなかったと感じているパターンは、外見的なことよりも、「統率力」「性格」「人付き合い」といった内面的なことで、兄弟に対して劣等感を強く感じるという結果がでました。

 養育態度と兄弟間の関係性

 上記の結果を逆にとらえると、兄弟も親に愛されたと認知している者のほうが、愛されなかったと認知している者より劣等感が低くなる結果が得られています。
また、「運動能力」における兄弟間の劣等感については差はないことがわかっています。これは、親の評価に加えて、学校の授業による評価といった親以外の視点がはいるからだと考えられています。

 つまり、親の評価を直に受けやすい内面的な事に対して、兄弟間で劣等感を生み出しやすいということが言えます。

 研究の結果から、とくに次のようなことが劣等感を生みにくいと考えられます。

・自分に対する愛情を受けた、愛されたと感じること
・自分の行動に責任をもって自立的に生活すること

 兄弟に愛情の差をつけることはないと思いますが、何気ない一言で子どもの心を「愛されていない」と感じさせてしまうことがあるかもしれません。
 また、良かれとおもって子どもの行動に手を出しすぎると、責任感や自分で出来るという自己肯定感を学ぶことができず、逆に兄弟間で劣等感を感じてしまうかもしれません。

 これらを解消するために、次のように子どもに接することが重要だと私は考えます。

・当たり前にできていることを、ひとりひとり「認める」声掛けをする
・ひとりひとりの好きな事や得意なことを見つけて。それを伸ばす
・子どもの生活や行動に過干渉にならずに、子ども自身に責任を持たせる

ゆー
ゆー

これらは、以前のブログの記事にしていることもありますので、ぜひ過去の記事も参考にしてみてください。

まとめ

 私自身、子どもたちに優劣をつけて接しているつもりは全くありません。でも、子どもたちの目線からすると、そうではない可能性も0ではありません。
 だからこそ、ひとりひとりを「認める」ということが毎日のなかで重要になってくるのではないでしょうか。兄弟であっても、違いはあって当然です。自分はできないという劣等感よりも、ひとはそれぞれ違うことを兄弟を通じて学び、その中で自分自身と向き合って、得意なことを見つけていくことが自信につながっていくのではないでしょうか。

お読みくださって、ありがとうございました。

引用文献
・青木紀久代『過干渉の親・放任の親の心理』「児童心理」774 .1-9.2002
・弘田洋二:『きょうだい葛藤について』藤本修編「きょうだい―メンタルヘルスの観点から分析する―」ナカニシヤ出版.39-44.2009
・大和美季子 他:福岡県立大学人間社会学部紀要 第20巻 第1号. 61-69.2011

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