感覚の鈍感さを持つ子どもたち
その中で、鈍感さに対して能動的に行動をする子どもたちの特性を「感覚探究」と呼びます。
この能動的に動く子どもたちをどのように支援したらよいのでしょうか?
今回は、学校生活に焦点をあてて、具体的な対応方法を紐解いていきます。
感覚鈍麻の代表格「低登録」の子どもとも若干共通するところがありますので、詳しくはこちらの記事も参考にしてください↓
学校生活を感覚から支援する
聴覚からの支援
環境音を意識的に提供する
教室内で音の刺激が少ない場合、感覚探究の子どもは集中力を維持するのが難しいことがあります。適度な環境音(ホワイトノイズや自然音)を取り入れることで、過剰な静けさを和らげ、注意を維持しやすくします。例えば、静かな読書時間に川のせせらぎ音を流すなどが効果的です。
ノイズキャンセリングイヤホンの使用
必要に応じて、ノイズキャンセリングイヤホンや音楽を流すイヤホンを使用し、外界の雑音をコントロールする方法もあります。これは自分のペースで集中力を高めたい子どもに役立ちます。
リズムを利用した活動
感覚探究の子どもは、リズムや音楽に対する感受性が高い場合があります。リズムに合わせた活動(例えば、リズムを取る手拍子や軽い体操)を授業中のブレイクタイムに取り入れることで、集中力やエネルギーを整えることができます。
音に関連したタスクや活動を組み込む
聴覚的刺激が不足していると感じる子どもに対して、音に関連した学習活動を取り入れることも有効です。例えば、理科の授業で音波の実験を行ったり、国語の授業で音読や詩の朗読をさせることで、聴覚の刺激を受けながら学習に集中できる環境を提供します。
視覚からの支援
教室内の視覚的刺激を豊かにする
感覚探究の子どもは視覚的な刺激を求める傾向があります。教室内に視覚的な変化や興味を持続させることができます。例えば、理科の授業で使う図やイラストを大きく鮮やかにして掲示すると、視覚的な興味を引きやすくなります。
また、色々な座席配置にすることによって、常に違った視覚刺激を子どもに与えることができるでしょう。
教室内に視覚的探索スペースを作る
教室内に小さな展示コーナーや、視覚的な探索を促すスペースを設置することで、子どもが能動的に視覚的な刺激を求める時間を持つことができます。例えば、美術作品や写真、パズルなどを置いた「ビジュアル探索コーナー」を設けて、視覚的刺激を提供します。
視覚的な教材や道具を使用する
色鮮やかな教材や視覚的にわかりやすい図やグラフを使用することで、子どもが視覚的に学習を楽しめるようにします。例えば、算数の授業で色付きのカウントブロックを使う、歴史の授業でカラー図表や時代を示すビジュアルマップを使用するなど、視覚的な要素を強調した教材を活用します。
固有受容覚・前庭覚からの支援
机上課題の前は、ミニエクササイズ
机上課題などの頭を使うような課題の前には、体を使った活動を取り入れます。また、授業中に短いエクササイズを取り入れることで、固有受容覚や前庭覚への刺激を与え、集中力を高めることができます。例えば、授業の前や合間に「5分ストレッチタイム」や「ジャンプタイム」を設けると、感覚をリセットする時間を作れます。
「動く仕事」を任せる
授業など座っている時間だけでなく、意味のある活動や係の活動を取り入れることで、体を動かす時間を効果的に作ることができます。
例えば、配布係や椅子を片付けたりする係になってもらいます。ほかにも、教室の家具を運ぶ、図書館の本を移動させるなど、重いものを扱う活動を取り入れることで、固有受容覚を満たすことができます。
座位での動きをサポートするツールの使用
バランスボールや空気クッション(ウィグルクッション)を椅子に置くことで、座りながらも微妙な動きを取り入れることができます。これにより、じっと座るのが難しい子どもでも動きながら学習に取り組むことが可能です。
活動的な遊び、運動の機会を増やす
積極的に体を動かす活動的な遊びや運動を取り入れるとよいでしょう。球技、ジャングルジムなどのほか、身体を押しつけたり、引っ張ったりする活動も固有受容覚に刺激を与えます。例えば、休み時間や移動前に壁に手をついて押す「壁押しエクササイズ」や、床でのプッシュアップなどを取り入れると良いです。
触覚からの支援
フィジェットツールの使用
「フィジェット」とは、集中を高めるために手や身体を動かすことを意味します。
授業中に静かに使用できるフィジェットツール(小さなスクイーズボールやフィジェットスピナー、感触の異なるリングなど)を提供することで、触覚的刺激を得ながら集中を促します。特に手を動かすことで落ち着きが得られる子どもにとって有効です。
感触の異なる学習アイテムの導入
教材や文房具にも工夫を加え、質感の異なるペン、ざらざらしたノートカバー、触ると冷たさを感じる定規などを用意することで、学習中にも触覚的な刺激を得ることができます。
触覚的課題を取り入れる
学習活動の中に触覚的な要素を取り入れることも効果的です。例えば、算数の授業で数字を粘土で作ったり、図工の時間に様々な質感の材料を使って工作するなど、手で触ることが中心となる課題を設定します。
触覚に焦点を当てた休憩時間
定期的に触覚に刺激を与えるための休憩時間を設けることも効果的です。例えば、砂や水を使った遊び、粘土や指で描くペイントなどを行う時間を取り入れることで、触覚的な刺激を得る機会を増やします。
感覚ボックスを設置する
教室内に触覚的な刺激を提供するための「感覚ボックス」を設置し、異なる質感のアイテム(毛糸、砂、ビー玉、布など)を自由に触れるようにします。これにより、子どもは適切な時に触覚的な刺激を得ることができます。
嗅覚からの支援
香り付き文房具の使用
香りがついた鉛筆や消しゴムなどを使用することで、学習中にも嗅覚的な刺激を得ることができます。これにより、視覚や触覚に加え、嗅覚的な感覚を満たしながら課題に取り組むことが可能です。
香りのポーチや袋の利用
ハーブやアロマオイルを少量入れた香りのポーチや袋を机の引き出しやポケットに入れておくことで、子どもが必要な時にリフレッシュしたり、集中力を保つための香りを楽しむことができます。
少し変わった支援方法では、じっとしていられないようであれば、「ミントのキャンディー」を与えるという方法もあります。
香りのバリエーションを与える
特定の時間やシチュエーションに応じて、異なる香りを使い分けることも考えられます。例えば、リラックスしたい時にはバニラやラベンダー、集中力を高めたい時にはペパーミントやユーカリを使用するといった具合です。
まとめ
感覚の鈍感さがある子どものなかで、感覚を求めに行動する「感覚探究」は感覚の凸凹のひとつです。
その特性を理解し、適切に子どもの感覚的なニーズを満たすことで、落ち着きや集中力を向上させるための支援になります。
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