12月はなにかと忙しい感じがして、あっという間に月日が経ってしまいます。外来の予約も、すでに来年の1月分の予約が入っており、年末が近づいていることを実感します。
2022年が書きなれない どうも、ゆーです。
来年は寅年、三男は年男!
さて、私は子どもを対象にリハビリをしていますが、その中でも相談が多いのが、
「スプーンが上手く持てなくて」「うちのこ、まだ箸が使えなくて」「鉛筆がうまくもてなくて」
日常生活に直結する困りごとです。確かに、周りのお子さんができているのにできないと心配になりますよね。また、年齢はどんどん重ねていくのに、なかなか道具の操作を覚えられないと焦りを感じますよね。
でも、ちょっと待ってください。お子さんの手の発達、道具を使う機能が整っていますか?
今回は、道具の操作に必要な手の発達についての基本的なちしきや遊びをどのように工夫したらよいかについて解説していきたいと思います。
こんな方におススメ!
✧٩(ˊωˋ*)و✧
・子どもの手先の動きが気になる
・道具を上手に使えるようになりたい
・道具を使うための運動発達の基本的なことをしりたい
道具を使うための手の発達
手の基本的な発達について、特に道具を使うための握りに注目してみていきます。
手掌回内握り・回外握り:1~1.5歳
手掌=手のひらです。つまり、手のひら全体で握ることを意味しています。また、回内とは、手のひらが下に向いた方向で、回外はその逆に掌が上を向く方向を指します。
写真でもわかる通り、手指の動きは握るだけです。肩や肘を使って道具を操作します。そのために、細かい動きはまだ苦手です。スプーンには食べ物が乗っても、うまく口に運べなかったり、ぐるぐるぐじゃぐじゃ殴り書きのような状態です。
手指回内握り:2~3歳
手指の動きが出始めます。親指の動きや操作が見られるようになります。手のひらの向きは、回内方向、つまり手のひらが下を向いて道具を操作します。
静的三指握り:3.5~4歳
静的とは動かない、止まっているということです。三指とは、親指、人差し指、中指を意味します。
指の動きが発達し、親指、人差し指、中指の3つの指を使うようになります。しかしながら、指先での動きは難しく、手首の動きなどで操作します。お箸の練習はこのあたりから。
動的三指握り:4.5~6歳
動的とは、動きがあるということを意味します。つまり、動きのある三指(親指、人差し指、中指)を使って道具を操作します。細やかな手先の動きによって、道具を使うことができます。
お子さんの手の動きを観察し、発達の段階や程度に合わせて遊びを選択することが大切になります。
机の接触と手の運動の発達
描画行動における上肢活動を調べた研究によれば、次のようなことがわかりました。
上肢運動の発達は、肩関節、肘関節、そして手関節の順に関節を固定する。
さらに、上肢部位を机に着けて上肢関節が固定されるような外的拘束を加えることによって、関節の固定はさらに強化され、手の末端の動きがより引き出されやすくなる。
つまり、どういうことかといいますと描画や字を書くことを考えたときに、手がどのように机に接触するのかという面も発達の段階があるということです。
全く机に手をついていない状態では、肩の運動で描画を行います。肩の運動が安定してくると、肘が机についてきます。すると、今度は肘の運動が発達してきます。肩と肘が安定すると、今度は前腕(肘と手首の間)を机につくようになり、手首の動きが出てきます。肩、肘、手首の運動が安定すると、手先の細やかな動きが発達してきます。
・手先の運動発達には、肩、肘、手首という順で関節運動が整う必要がある。
・机に手をつく様子は、発達の程度を読み取る観察のひとつとなりうる。
手先だけでなく、様々な面から手の運動をみてあげること。
手先のトレーニングだけでなく、肩、肘、手首の運動など手全体の動きをトータルでサポートする必要があります。
手の運動には、見る事、触る感覚、動く感覚も必要不可欠
どうしても運動の面に目が向きがちになってしまいます。それは、運動が目に見えるからです。しかし、運動を行うためには様々な感覚や体のイメージが必要不可欠です。
たとえば、目で物をみてその距離感をつかんだり、物の大きさを想像し、それに対して手指の開き具合をイメージしたりするような、見えない脳の働きを養う必要があります。
それには、実際にいろいろなものをさわる、体験をするということや動きをイメージすることを促す遊びが重要です。
遊びの工夫
リハビリではそのための工夫を遊びの中に取り入れています。
こちらの鈴入れを例にとって考えてみましょう。
-遊びの工夫-
・鈴の大きさに変化をつける
指の開き具合や持ったときの感覚の違いを読み取ります。鈴を見たときに、指をどれくらい開いて、どれくらいの力で持てばよいかをイメージすることを促します。
・鈴以外に、硬さや素材の違うものを混ぜる
硬さや表面の材質の違いなど手からの感覚が変化し、その違いを読み取ります。
・鈴を入れる入り口を横向き、下向き、あるいは高いところにおいて入れてもらう
穴に対して、自分の体をどのように扱ったらよいかをイメージすることを促します。
動画では一方向からしか入れていませんが、上記の工夫によって経験のバリエーションを増やすことができます。
これら手の経験は、のちに道具を使うための土台となり、道具の練習や学習がスムーズになります。
道具とリハビリテーション
道具を適切に使うためには、さきに述べた肩から手指までの運動の発達が整っていないとなりません。
この時期までに何が獲得できるのかという年齢は、あくまでも目安です。発達には個人差が大きく、見た目の年齢と発達の年齢がちがうこともしばしばあります。
周りのお子さんができているから、うちの子もやらせなきゃとか、そろそろこれができる年齢だからと、年齢だけみて道具の練習をしてしまうとどうなるでしょう。
手の運動発達が整っていないのに、道具をうまく使えないことで、失敗体験やうまくいかないことで練習が嫌になってしまいます。そうなると、道具そのものを使うことをためらい、より道具の学習に時間がかかってしまうこともあります。
わたしが、お子さんの手先や道具の練習を見るときに気を付けているポイントは次の通りです。
・人と比べたり、年齢だけで道具の練習を始めない
・子どもが自然に道具に対して興味を持ち始めた段階で練習すると効果的
・練習は楽しく行う工夫をする
特に、自然に興味がわいてきた段階が見極めのポイントです。障害の程度にもよりますが、今できなくても体の発達が整ってくれば、出来るようになります。焦らずに、子どもの成長を待ちましょう。
合わせて読みたい
・子どもが成長するタイミングを見極めるコツ
楽しく練習する=あそび
遊びの中で自然に手の動きが練習できます。
道具の利用や生活指導のわかりやすい本
とても分かりやすい内容で実践的なことが書いてあります。さらに詳しく知りたい方におススメです。
まとめ
手の発達は、手先に注目をしてしまいますが、実は肩や肘などの手全体を使った運動であると同時に、それを命令するための見えない脳の働きまで考える必要があります。
それらを総合的に促すためには、やはり適切な運動発達にそくした遊びを行うことが重要です。
まずは、焦らずに道具に興味を持つまで、じっくりと手をつかった遊びをしましょう。
引用文献
・浅川 淳司 他:幼児期の手指操作の発達:手内操作に焦点を当てて. 金沢大学人間社会研究域学校教育系紀要13. 149-154.2021
・河野俊寛:知的障碍児への文字の読み書き指導研究の動向.金沢星稜大学 人間科学研究8(1).51-56. 2014
・尾崎康子:筆記用具操作における上肢運動機能の発達的変化.教育心理学研究.48.145-153.2000
・Lewis Rosenbloom.et al:The Maturation of Fine Prehension in Young Children .Developmental Medicine & Child Neurology 13(1):3 – 8.1971
・鴨下賢一 他:発達が気になる子への生活動作の教え方―苦手が「できる」にかわる!. 中央法規出版.2013
・鴨下賢一:発達が気になる子へのスモールステップではじめる生活動作の教え方. 中央法規出版.2017
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