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自己判断は危険!スポーツによるケガの基本的なちしきと子どもの体の特徴

1から学ぶスポーツ医学
子どもの体とケガ

 先日、四男と自宅でキャッチボールをしていた時のこと。取り損ねたボールが地面に跳ね返ってきて、わたしの顔面にぶつかりました。バウンドして勢いが弱まっているとはいえ、硬いボールが顔にぶつかったのですから、急いで冷やしました。今は痛みや内出血などなく経過しています。

 スポーツをすればケガも当然ながら起きる可能性があります。今回は、スポーツに関係するケガや障害について基本的な知識と子どもの体の特徴をまとめました。
 成長期特有の体の特徴を理解してスポーツやケガの対応をしないと、あとあと影響が出てきますよ!

この記事はこんな方におススメ!
✧٩(ˊωˋ*)و✧

・スポーツに関するケガの基本的な知識をしりたい
・子どもに起こるケガの基本的なことをしりたい
・スポーツをしている子どもがいるご両親

スポーツによるケガの種類

 スポーツに関係して起こる運動器(骨、関節、筋肉、じん帯、軟部組織など)のトラブルのことで、スポーツ傷害と総称して呼ばれます。スポーツ傷害の中には、スポーツ外傷とスポーツ障害に分類されます。

スポーツ外傷

 一度の外力で生じる急性損傷と定義され、捻挫、打撲傷、肉離れなどが該当します。

スポーツ外傷の応急処置:RICE処置

ケガをした時に、病院にかかるまでの時間、ケガの影響を最小限にするために次のことを行います。

Rest:安静

損傷を受けた部分のはれ、血管や神経の損傷を防ぐことが目的で行います。固定するための添え木などがないときは、身近にある割り箸・木の板・杖・定規・ダンボール・週刊誌などで代用して固定できます。

Ice:冷却・アイシング

はれや細胞の損傷を抑えることが目的で実施します。
ビニールやアイスバックに氷を入れて、患部を冷やします。15~20分程度(感覚が無くなったら)したらはずし、また痛みが出てきたら冷やします。

Compression:圧迫

内出血やはれを防ぐ目的で実施します。スポンジなどを患部にあてて、テーピングや弾性包帯で軽く圧迫しながら固定します。

Elevation:挙上

はれを防ぎ、はれを少なくすることを目的に実施します。損傷を受けた部分を心臓より高い位置に挙げて固定します。

ゆー
ゆー

ただし!
意識がない、頭・首・背中など大切な神経がある外傷、大量の出血、脱臼や骨折が考えられる明らかな変形などがあるときは、すぐに救急車が医師の手配をしましょう。

スポーツ障害

 繰り返された外力に生じる慢性的な損傷で、野球肘、腱付着部損傷、疲労骨折が該当します。
 特に最近ではインターネットの普及やゲームの時間が増えたことにより運動不足と過度なトレーニングによる「使いすぎ症候群(over-use syndrome)」が増加しています。

子どもの体の特徴とスポーツ障害

 特に子供のスポーツ障害においては、成長途中である子どもの体の特徴を理解しておく必要があります。

骨が柔らかい(弱い)

成長途中の子供の骨は大人に比べると柔らかくできています。そのために、骨折を起こした場合は、ポキッと折れずに、若木やなまの木を折り曲げるように折れ曲がります。(若木骨折といいます)

自然治癒力が高い

骨折などの外傷の治りが早いため、きちんと処置をしないと変形して骨がつながる可能性があります。

骨端線(成長線)が存在する

成長期の骨は、骨の中心部分と骨の端の間に「成長線」がみられ成長軟骨が存在します。大人になると、それはつながって一つの骨になります。この成長線は成長にとって大切な部分ではありますが、一方で負荷に弱い部分でもあり、外傷や障害が起きやすくなります。

柔軟性の低下

 筋肉の発達に対して、骨が急激に伸びると、筋肉が短くなったようになります。そのために、筋肉の柔軟性が低下し、体が硬くなりやすくなります。いわゆる「成長痛」はこの骨と筋肉の成長のアンバランスさによって生じ、この時は軟骨にも負担がかかりやすくなります。

成長期に起こりやすいスポーツ障害

 先に紹介した骨端部の損傷や障害は、放っておくと成長に影響したり、その後の運動に影響を及ぼします。この骨端症と呼ばれる骨端部の障害をいくつか紹介します。

リトルリーグショルダー

上腕骨(二の腕の骨)の方に近い部分にある骨端に生じる炎症です。投球選手に多いため、このような名前がついています。痛みやはれを生じます。

野球肘

 肘が下がったフォームで投球し続け、肘にストレスがかかり続けると、肘の内側の骨端部が開いてしまい痛みやはれを引き起こします。
 また、肘の外側に強い圧迫やねじれのストレスが加わると、肘の骨同士がぶつかって痛みが生じます。痛いまま運動を続けてしまうと、損傷を受けた部分が離れてしまいます。

オスグット病(Osgood-Shlatter病)

すねの骨の膝の関節近くの骨端で起こる炎症です。サッカーやバスケットボール、バレーボール等の運動選手に起こりやすいとされていますが、身長の伸びが大きくなった時、練習のし過ぎや過密なスケジュールになると誰でも起こりやすくなります。

ゆー
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ほっておくと、その後の運動や体に重大な影響を及ぼすこともあります。痛みやはれが出たら病院を受診して、適切な治療をうけましょう。

痛みをそのままにして運動を続けることはやめましょう。

スポーツ障害とリハビリテーション

 リハビリテーションにおいては、痛みの実態を把握したうえで、痛みの軽減を目的としたリラクセーションをはかりながら、痛みの原因を分析して、必要なストレッチや適切な運動を実施します。

また、年齢、スポーツの種類、個々の体や運動に対する習熟度合いによって発生する障害(傷害)も違ってくることを理解し、その子にあったトレーニングや指導が必要とされています。

 トレーニング以外では、小児期におけるリハビリテーションでは、家族や本人への十分な説明が重要と言われています。その理由は、無理して運動をしてしまうからです。
 では、どのような事を説明するのでしょうか。

・症状の改善には時間を有するが、必ず治ること
・痛みは重要な体の危険信号、無視してはいけないこと
・成長途中であり、無理することで将来に影響する可能性があること
・運動能力や体力は個人差があり、ほかの子とは比べられないこと

引用:亀ヶ谷真琴:骨関節疾患-小児スポーツ障害のリハビリテーション.総合リハ49(7).2021

 つまり、ケガをした時や故障(障害)を起こした場合のリハビリは、今後の体や運動機能に影響を与える可能性が高く、医師の診察等がない状態で自己判断で行うのは大変危険です。
 ケガに対する自主トレーニングを行うにしても、きちんとした医師の受診と療法士等による適切な指導のもとに実施してください。

ゆー
ゆー

上記理由により、本記事でもケガに対する具体的なリハビリやトレーニング方法は掲載しておりません。

ケガを予防するために重要なコンディショニング

 ケガを予防するためにはコンディショニング、つまり運動前のウォーミングアップや運動後のクールダウンが重要という報告があります。

運動にはコンディショニングが必要
・ストレッチ
・ランニング
・キャッチボール
・筋トレ・体操
・マッサージ、ストレッチ
・アイシング(冷却)

コンディショニングの有無とケガの有無の関係性は次のような結果が出ています。

スポーツ障害経験あり ウォーミングアップ&クールダウンをしている 31.2%
スポーツ障害経験なし ウォーミングアップ&クールダウンをしている 47.6%


スポーツ障害経験あり ウォーミングアップ&クールダウンを実施していない 46.6%
スポーツ障害経験なし ウォーミングアップ&クールダウンを実施していない 17.4%

 スポーツ障害の有無とウォーミングアップやクールダウンの実施の有無との関係に、有意な差が認められたと報告しています。また、ウォーミングアップやクールダウンをきちんと行う選手は、自分の体の状態に対する関心が高いと推測されています。

 適切なウォーミングアップ、クールダウンを行うことは、ケガの予防だけでなく、自分の体調管理にもつながります。

まとめ

 ケガや障害を防ぐには、子どもの体の特徴を理解したうえで、適切な運動量や練習量を設定する事が大切です。

ちなみに、四男が習っている「野球」でみてみますと、

 練習日数と時間について、小学生では週 3 日以内、1 日 2 時間をこえないこと、中学生・高校生においては、週 1 日以上の休養日をとることとしています。
 全力投球数は、小学生では 1 日 50 球以内、試合を含めて週 200 球をこえないこと、中学生では 1 日 70 球以内、週 350 球をこえないこと、高校生では 1 日 100 球以内、週 500 球をこえないこととしています。

引用:日本臨床スポーツ医学会整形外科部会:青少年の野球障害に対する提言,日本臨床スポーツ医学会誌,13(Suppl):241-242,2005

 また、痛みなどの問題があるままで練習をしない、予防するためのコンディショニングをすることも重要です。わが子に対しても、これらに気を付けて練習や自主トレを考えていきたいと思います。

 何度も繰り返しになりますが、子どもの体は成長途中です。痛みをこらえて無理すると、のちのち影響が出てくることは、文献からも明らかです。

 異常を感じたら自己判断せずに、整形外科などの病院を受診しましょう!

引用文献
・文部科学省 平成27年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査 集計結果 第2章 分析結果と取組事例 運動時間の長い児童生徒・学校の特徴
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/11/1365084_1.pdf
・村田健一朗 他:成長期アスリートにおける傷害総論. 日本アスレティックトレーニング学会誌 第 4 巻 第 1 号.11-17.2018
・亀ヶ谷真琴:骨関節疾患-小児スポーツ障害のリハビリテーション.総合リハ49(7).2021
・日本臨床スポーツ医学会整形外科部会:青少年の野球障害に対する提言,日本臨床スポーツ医学会誌,13(Suppl):241-242,2005.
・大久保吏司 他:コンディショニング実施とスポーツ傷害発生の検討-高校アメリカンフットボールおよび女子バスケットボール選手へのアンケート調査から-.神戸学院総合リハビリテーション研究7(2).121-128.2012
・岡田 幸正:スポーツ障害とスポーツ外傷.鳥取市立病院 整形外科
https://hospital.tottori.tottori.jp/files/20180912110406.pdf
・スポーツ外傷・障害について https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_6.pdf
・三笠製薬株式会社(制作).日本整形外科スポーツ医学会広報委員会(監修):スポーツ外傷の応急処置(RICE処置)
http://jossm.or.jp/series/flie/003.pdf

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