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自閉症の子供との接し方が変わる!大人が子どもをまねる逆模倣

自閉症,子ども,接し方 まずはここから!小児リハを学ぶ

 あなたは、自閉症のお子さんとどのようにかかわりますか?
 どのようにかかわったら良いのか、どのように指導したらよいのか、悩んだことがありますか?

 今回解説する「逆模倣」を知ることで、あなた自身の自閉症のお子さんとのかかわりにおいて、大きな変化をもたらすでしょう。

逆模倣とは、子どもの動きを「大人がまねる」こと

 「子どもが、大人のマネをする」を模倣とするならば、
 「大人が、子どものマネをする」これが、逆模倣です。

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模倣と逆模倣

 子どもが遊んでいるときに、それと同じように大人が子供のマネをします。これを子供の前で繰り返しおこなっていくと、この大人は「自分と同じことをしているなぁ」と徐々に気がついてきます。
 相手が自分と同じことをしていることを意識すると、今度はその相手に注目するようになってくるのです。
また、ある研究では次のように報告されています。

自己の運動経験があるほうが、他者のする同じ行動を見た時の他者行動への注意を高める可能性がある

 簡単に言い換えると、子どもが一番注目するときは「自分が行ったことがある活動」ということです。

逆模倣で、自閉症のお子さんの社会性が変化する。

 自閉症の症状のひとつに、社会性の質的な問題があげられます。実際のお子さんにおいても、他者とのかかわりが少なかったり、他者への注目が少ない様子が見られます。

 この社会性の問題において、「逆模倣」により症状が改善したという報告がいくつかあります。まずはその論文の報告をいくつか見てみましょう。

 自閉スペクトラム症(ASD)児の行動を大人が逆模倣すると、その逆模倣した行為者のことをよく見るようになったり、自ら接近・接触を試みたり、話しかけたりするようになることを見いだした。

 逆模倣により自閉スペクトラム症(ASD)児の不適切な運動反応が減少し、大人に触れるなどの社会的行動が増加し、相互作用的な関わりを持とうとする意図が明確になった

 「対人注目」 「視線の一致」 に変化が見られた。
 他者への意識が高まったことにより、同世代の仲間と活動を共にする機会が増え、同世代の仲間と活動する際に笑顔が増え、楽しそうに活動参加するようになった。

 すべて別々の論文ですが、「逆模倣」をつかった関わりによって、自閉症のおこさんの対人行動に良い影響をもたらしたと報告されています。

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逆模倣の効果

 じつは、わたし自身も自閉症のお子さんと訓練をしているときに、心がけているのがこの逆模倣です。

 私が見ている自閉症のお子さんにおいても、訓練前は「おゆうぎ」や「たいそう・ダンス」に参加していませんでしたが、訓練後にはこれら園における活動に少しずつ参加できるようになった、お友達の真似をするようになったという行動の変化がみられています。

 もちろん、すべてのお子さんにあてはまるわけではありませんが、自閉症のお子さんの社会性を改善させるための工夫のひとつとしては、効果があるということができるでしょう。

ことばの発達において逆模倣が有効である。

 社会性だけでなく、言葉の発達にも影響を与えることが言われています。
 こちらの論文報告をご覧ください。

音声言語発達において、発生器官の運動反応においても逆模倣、拡張逆模倣が有効であることが示された。

 ことばの発達、特に声を作り出す口は発音の運動において、逆模倣が効果を示したという報告です。
 具体的にはどのようなトレーニングをしたのか見てみましょう。

 トレーニングをするうえで、まずは大人がお手本をしめします。それを、子どもがマネしたら、すかさず子どもの様子を大人がマネしていきます。(逆模倣)
 その後、少しずつ声の大きさや口の大きさのお手本を大きくしていきます。(これが拡張逆模倣の意味です)

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逆模倣の良循環

大人のお手本➡子どもがまねる➡それを大人が再度まねる➡子どもがまねる➡あらたな、お手本を提示

 このような良い循環を作り出すことにより、発音や発声の効果を得ることができるのです。


 この逆模倣を使ったトレーニングによって、さらに次のような効果を得ることが報告されています。

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逆模倣を使ったトレーニング

 つまり、声を出すという点において運動のコントロールも身に着けることができるということです。

「逆模倣」は、自閉症のお子さんにとって「安心」できる活動

 どうして自閉症のお子さんにとって、逆模倣は効果的なのでしょうか?
 これについては、次のように述べられています。

自閉スペクトラム症(ASD)児はヒトの動きや行動は複雑で予測が立てにくいためにヒトへの関心が低いと考えられているが、逆模倣の再現は、対象児にとって予測性が高く安定した動きと考えられた。

 自分がおこなった動きを模倣される「逆模倣」は、自閉症のお子さんにとって予測しやすい行動だからです。変化の少ない「自分が知っている動き」だからこそ、安心して注目することができるということです。これによって、他者への注目もしやすくなるというわけです。

模倣(マネ)は、両親から「マネされる」経験が原点である。

 模倣は、人と人の間で生まれる行動です。それには、社会性やコミュニケーションの機能があると、とらえる事ができます。

 そして、この模倣つまり真似をするという行動は、じつは生まれつきではなく、経験から学習されるものであると述べる論文があります。

 模倣は生得的に備わっているのではなく、学習されて初めて模倣行為が獲得される。

 お母さんをはじめとした、両親はよく子どものリアクションや行動をマネします。そのまねされた経験を積み重ねることによって、子ども自身がまねることを学習すると述べられています。

ゆー
ゆー

子どもをあやすときに、よく子どもの発した声や音、表情、動きなどをまねますね。

これが、模倣の原点となっているわけです。

逆模倣を用いることで、「ともに遊ぶ」ということが可能になる

 自閉症のお子さんとかかわるうえでとても重要な「逆模倣」が理解できたと思います。
 この逆模倣によって「ともに遊ぶ」ということを実現することができます。

 次のような研究報告があります。

母親が選んだ対象児の動きを逆模倣で再現し、その母親の動きを「見る」ことで、そこから母親と自己の動きが「同じ」であることに気づき、両者が動きと「場面を共有する」ことが可能となっていた。

 ちょっと難しい話ですから、かみ砕いて解説します。

 ある研究でお母さんが自閉症であるわが子と遊ぶときに、逆模倣という方法を用いて遊びました。逆模倣とは、子どもが行っている仕草、声をまねる事です。
 子どもの様子をみて、お母さんが自発的に選んだ動作を子ども自身が見ることによって、自分の動きと同じ動きをしているということに気がつきます。
 そこから、同じ場や同じ動きを母子でともにすることができたのです。


 社会性に問題を抱える自閉症のお子さんの多くは、一人で遊ぶことを好む傾向にあります。
 実際、一緒に遊んでいても、同じ空間には存在しますが、お互いがかかわりあっている感じはしません。ですが、この逆模倣を用いることで、同じ場を共有する、言い換えれば「ともに遊ぶ」ということが可能になったのです。

もうひとつ、お母さんの役割

 自閉症のお子さんと遊ぶお母さんが、逆模倣をするうえでもうひとつ大きな役割があることがわかりました。

母親と対象児の相互交渉の文脈では, 自身の動きや音声が自己の動きと「同じである」という気づきのもとに反応、意味づけされていくが、母親のとらえた対象児の動きや音声の解釈を含む逆模倣が相互交渉の開始に重要な効果を示した

 お母さんが子どもをマネする逆模倣は、その動きや声に対してお母さんなりの解釈や意味付けをしています。これが、お互いの関係を育む大きな要因であると述べています。

「見る」「見られる」の関係を構築していくことで、自閉症のお子さんは自分自身の理解をはかっていのです。これによって、自分と他者との関係性がよりふかまっていくのです。

ゆー
ゆー

もちろん、母親にかぎらず「支援者」も同じように、行動に自分なりの意味や解釈をもたせて逆模倣をすることで、同じように関係性を作り上げていくことができます。

まとめ

 他者を見てまねることが苦手な自閉スペクトラム症のお子さんには、この逆模倣が効果的でしょう。
子どもが大人のマネをするのはもちろん。
 大人が、子どもがやっている遊びを、横でマネをして一緒にあそぶことも、子どもの脳にとってはとてもよい影響を与えるとおもいますよ。

お読みくださってありがとうございました。

引用文献
・平石文香:乳幼児期における養育者の逆模倣が子どもの模倣の発達過程におよぼす影響の分析. 白百合女子大学.1-146.2016
・石塚祐香 他:自閉症児に対する逆模倣・拡張逆模倣を用いた発話器官の運動トレーニングの効果に関する検討:事例研究.慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要.81.19-29.2016
・秋元響 他:自閉スペクトラム症児の心理化の促進―逆模倣による介入の効果―. The Japanese Journal of Human Relations, Vol.25.175-85.2020
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・Pelaez, M. , Ortega J. , &Gewirtz, J. L. Reinforcement of vocalizations through contingent vocal imitation. Journal of Applied Behavior Analysis.44.33-40.2011
・Heimann, M., Laberg, K. E., & Nordoen, B. :Imitative interaction increases social interest and elicited imitation in non-verbal children with autism.Infant and Child Development, 15, 297-309.2006
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・Ray, E. D. & Heyes, C. M.: Imitation in infancy: The wealth of the stimulus. Developmental Science, 14, 92 – 105.2011
・Perone S, et al. : The relation between infants’ activity with objects and attention to object appearance. Dev Psychol .44.1242-8.2008

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