週末は「うわばき洗い」。我が家では、昔ながらの洗濯石鹸をつかって洗っています。
きめの細かい泡が布の奥までしみ込んで、とても洗いやすいです。
無心で上履きを洗っていると、ふとアイデアが浮かんできたりします。
ただ、今回は生まれませんでした。 どうも、ゆーです。
汚れを落とすことに集中しすぎました。脳をバランスよく使うのが、アイデアを生み出すコツのようですね。
さて、以前の記事で病院では教えてくれない観察ポイントシリーズとして、現場で働く療法士が見ている視点を解説しました。
では、小児リハビリを行う療法士はどのように子どもの特徴を探っているとおもいますか?
その頭の中の構造をすこしのぞいてみたいと思います。特に療法士や支援者などは知っていて損はないと思います。
図解 行動とその要因を探るための思考回路
これからお話しする思考回路を図で表しました。
子どもの「ACTION:行動・反応」を頂点として、その下に「PLAY:あそび」と「ASSESSMENT:アセスメント」があります。このふたつはイコールとしてとらえています。つまり、あそびは子どもにアプローチする方法であり、子どもの様子を観察するためのツールでもあるということです。
さらに、その下には、子どもの行動を引き起こしている要因となっているであろう事柄、つまり「Hypothesis:仮説」があります。仮説としているのは、あくまで目には見えない事柄を考えるからです。いくら細やかな観察を行ったとしても、心の動きなど数量化できないものも含むので仮説の域をでないのです。
このポイント4つの英語表記をまとめて「ACPLASH:アクプラッシュ」と勝手に名付けます。
小児リハビリを行ううえで、つねにこの思考回路を回しながら子どもの行動とその要因に迫っていきます。
ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
ACTION(行動・反応)
ACTION(行動・反応)とは、
・子どもの気になる行動
・両親の困り感、困っている事
・刺激に対する子どもの反応
を意味しています。
具体的には、
・落ち着きがない
・離席してしまう
・集中できない
・姿勢が悪い
・楽しそう
・無反応
・気になる、困っている行動に変化が出た
といったお子さんのありのままの様子です。
「どうしてこのようなことが起きるのだろう?」「なんでうちの子はこうなのかしら」
というような、疑問を投げかけるきっかけとなる部分であり、行動が変化したとか、姿勢が変わったとか、自分が働きかけたことの結果を知る部分でもあります。
「ACPLASH:アクプラッシュ」回路の
入り口 と 出口(結果)
となる極めて重要なポイントです。
PLAY(あそび・対応方法)
PLAY(あそび・対処方法)とは、
・あそび
・子どもへの働きかけ
・対応方法
を主に意味しています。次に述べる「ASSESSMENT:アセスメント」とイコールの関係でつながっています。
具体的には、
・子どもが行う様々なあそび(トランポリン、アスレチック、工作、ゲームなどなど)
・好きな感覚を使ったあそび
・子どもへの対応方法(小声で話す、一つ一つ伝える、環境設定などなど)
・本人が得意なこと、好きな事
つまり、支援する側にとっての訓練方法や支援方法であり、子どもからすればあそびです。
また、支援を行ううえでの細かな工夫や環境設定などもこれに含みます。
子どもに対する
何らかの働きかけ
と解釈してよいかと思います。
ASSESSMENT(アセスメント・評価・観察)
ASSESSMENT(アセスメント・評価・観察)とは、
・各種 発達検査・知能検査
・発育エピソードなど情報収集
・あそぶ姿を観察
を主に意味しています。先にのべた「PLAY:遊び・方法」とイコールの関係にあります。
具体的には、
・知能
・運動機能
・感覚
・からだの動きや使い方
・注意する力、記憶力、判断力などの認知機能
・言葉の発達
・ココロの動き等
といった、お子さんの実態を把握するための情報です。
このアセスメントは、知能・発達検査といった数量化できるテストを使うときもありますが、ほとんどの場合はあそびを観察する、遊びを使って確かめます。
検査道具=あそび
というわけです。
Hypothesis(仮説)
Hypothesis(仮説)とは、
・行動の要因を考える
・行動の理由
・得られた情報をまとめ、可能性を考える
・得られた事実からの考察
を意味しています。図の矢印が、「PLAY」と「ASSESSMENT」の両方に向いているのは、どちらの方向にも仮説の結果を反映させる必要があるからです。
具体的には、
・感覚が過敏なのでは?
・感覚がわかりにくいのでは?
・姿勢を保つ力が弱いのでは?
・体幹の弱さ?
・自分のからだの使い方が分からないのでは?
・ネガティブ思考なのでは?
・ルールが学習出来てないのでは?
ここで、頂点に位置する「ACTION:行動・反応」に対する要因、理由を考えるわけです。それを考えるには、先ほど述べたあそびとアセスメントによる情報が重要となってきます。
この仮説があそびやアセスメントに反映され実行し、その結果として行動が変化したのかという「ACTION:行動・反応」につながるという構造です。
ここからすこし難しい話になります。遊びとアセスメントの両方に矢印が向いている理由は、次の通りです。
・遊びから、仮説をたてて、それ検証するためのアセスメントを考える
・アセスメント結果から、仮説をたてて、それを検証するための遊びを考える
あそびとアセスメントがイコールでつながっていることからもわかるように、どちらの方向からも仮説を立て、それを検証するための方法や検査を考えることができます。
仮説は、可能性がある要因です。
自分が立てた仮説が正しいのか、まちがっているのか
遊びやアセスメントで検証していく必要があるのです。
実際の症例で確認してみましょう。
以前記事にした「なわとびが苦手」な女の子を例に「ACPLASH:アクプラッシュ」回路を確認してみましょう。
【子どもの紹介】
小学校の普通級に通う女の子
診断名はADHD
診察場面では
「字はきれいなほう?
「きたないと思う」
不安げにお母さんの顔を見ながら言う様子が見られていました。
リハビリ前のACTION(行動・反応)
「なわとびが苦手」
体育の時間、縄跳びを上手に飛ぶことができないという行動と困り感がありました。
仮説を立てる前のPLAY(あそび・方法)とASSESSMENT(アセスメント・評価・観察)
・トランポリン、アスレチック遊び
・実際に縄跳びを飛ぶ様子の観察
・診察時の様子
・家での様子など、お母さんからの情報収集
これらから、次のような情報を得ることができました。
からだがぐにゃぐにゃして、関節が柔らかい。
姿勢を保つことができない。
過度に背中をそる。(反り腰)
苦手だと感じることはあまり練習しない。
自信がない。
人がしゃべっていてもおしゃべりしてしまう。
わすれもの、不注意
好きな遊びは集中できる。
Hypothesis(仮説)
得られた情報をもとに、次のような仮説を立てました。
・体幹の弱さ
・自分のからだの使い方が分からない
・苦手なものは遊ばない(なわとびは練習しない)
・注意機能のでこぼこ
・ネガティブ思考
仮説を立てた後のPLAY(あそび・方法)とASSESSMENT(アセスメント・評価・観察)
考えた仮説を検証するために、次のあそびを行ってもらいました。
トランポリン
アスレチック・サーキット遊び
感覚あそび
工作等
*なわとびは練習しない!
結果としてのACTION(行動・反応)
なわとびが飛べるようになったよ!
難しい技にも挑戦してるよ!
困り感や行動の変化が認められました。
まとめ
うまく考えがまとまらない場合は、この回路をもとに情報を書き出して整理するとよいでしょう。
また、発達障害のお子さんを持つご両親であっても、「困っている」ことに対して、自分がどのように働きかけたら子どもが変化するのか、「ACTION」と「PLAY」の部分だけをつかって、育児を見直してみると、上手に行動が変化した時のポイントがわかるかもしれません。
子育てや支援方法に正解はありません。でも、子どもたちが生活しやすくなる・両親が子育てしやすくなるための思考回路はあります。ちょっと専門的な話になってしまいましたが、これから小児リハビリを始める療法士や支援者の方のお役にすこしでも立てればと思います。
お読みくださいまして、ありがとうございました。
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