悲しい事件が起きました。 暴力はいったい何を生み出すのでしょうか?
私は「悲しみ」「憎しみ」しか生まれないと思います。
「暴力」で物事が解決するのでしょうか、気分が晴れるのでしょうか、良い方向に事態が好転するでしょうか。
こたえは「NO」です。
それは、公の場所であっても、家庭という密接した場所でも同じこと。子どもが親に向けてふるう暴力、「家庭内暴力」の対処方法と原因について文献から読み取っていきます。
あなたがもし、子どもの家庭内暴力に悩んでいるのならば、この記事が参考になれば幸いです。
家庭内暴力が起きた時
・ケガや命に関わる危険もあるため、暴力の対象となった人は、一時的に離れましょう。
・子ども(本人)を追い詰めているストレスの原因を探しましょう。
・子どもの話を、否定せずにしっかりと聞きましょう。
・子ども(本人)が自分の思いを素直に語ることができるように、相談場所や相談できる人を探しましょう。
子どもからの暴力、家庭内暴力の原因は実に様々です。
・親子関係
・家庭環境
・学校や学業に関すること
・学校の交友関係
・発達のアンバランスさ
などなど
「親」だけで悩まずに、きちんと専門機関や専門家に相談をしましょう
相談できる機関
・精神保健福祉センター
都道府県に置かれている専門の機関です。心の問題にかかわる様々な問題に対応しています。
・保健所、保健センター、児童相談所
児童に関する相談窓口で、発達に関することや子育ての悩み、不登校や非行などに関する相談など、子どもの問題に対応しています。
・警察
補導や逮捕ということではありません。青少年の問題に対応している場合があります。例えば、警視庁少年相談室では、ヤング・テレホン・コーナーというホームページもあることから、児童や青少年に関する悩みに専門家が対応しているところもあります。お住いの地域の警察ホームページをみてみましょう。
・医療機関
子どものリハビリテーションを行う病院や発達専門の病院、精神科の病院等で、子どものこころの問題を取り扱っています。
・そのほか
教育支援センターや児童支援センター等や民間の相談窓口の活用も良いでしょう。
私自身も、暴力をふるってしまう子どもたちをもつ親の相談も行っています。
暴力は「ことば」である
言うに言えない思い、ストレスや苦しみを時に悲しみをじょうずに表現できないとき、暴力という言葉で表現しています。そう、まるで小さな子供のように。
ほんとうは自分の苦しみ、悲しみを親に「わかってほしい」・「共感してほしい」と思っているのです。
でも、それをじょうずに伝えることができません。そうなると、次のような思考をもちます。
親にも同じような苦しみ、悲しみを与えてあげればわかるんじゃないか。
ぼくの、わたしの「くるしみ」を同じようにあじわえ。
その結果、暴言や暴力を引き起こしたり、親が大切にしているものを壊したりする破壊行動を引き起こします。
ですから、本人のこころの声を、反論せずに「しっかり」と聴いて受け止めることによって、症状が変化することがあります。同時に、両親への指導やカウンセリングも行う必要があります。
家庭内暴力を止めるためには
適切なカウンセリングをうけましょう。
子どもにとっては、自分の思いを暴力ではなく「ことば」で表現する貴重な機会です。
また、親にとっては、自分の価値観を客観的にとらえ、親のあり方や子どもに対する見方を改めてとらえなおす場となります。
薬による症状のコントロール
暴力や衝動性に対する薬だけでなく、自律神経系を整える、睡眠リズムを整えるなどの薬も有効な手段の一つとなります。
これらお薬をもらうには、きちんと医療機関に受診する必要があります。
暴力は絶対に「ダメ」
「暴力に暴力で返す」あるいは「暴力を受け続ける」
これでは何も解決しません。暴力に暴力で返せば、反発はさらに高まるでしょう。
暴力を受け続ければ、ストレスがますます溜まり、心を痛めるばかりか、正常な判断ができなくて、最悪の事態を招きかねません。
暴力は絶対にダメという毅然とした態度と同時に、本人の話や思いをきちんと受け入れる、つまり言葉で表現することをする必要があります。
身の危険を感じたら、すぐに距離を置くことも「最悪の事態」をふせぐために大切です。
子どもから親への家庭内暴力の特徴
子どもから親への家庭内暴力には次のような特徴があります。
・家庭内で起こり、家庭内でとどまる
・暴力を向けるのは特定の誰か(特に、自分より力が弱いものが対象となる)
・暴力が出ないときは、あかちゃんに戻ったような甘え、スキンシップなど、
いわゆる「退行現象」がみられることがある。
退行現象、あかちゃんがえりとも言います。
実はこの時、子どもは暴力の対象となる者をつぶさに観察し、ミスを探し出すことがある。
つまり、揚げ足をとるための情報を獲得している場合があります。
家庭内暴力と親子関係
親子の関係性が家庭内暴力のひとつの要因と考えられている場合があります。どのような親子関係なのでしょうか?
・父性の欠如と母親の過保護・過干渉という偏り
・過度な放任主義
・母と子の間に閉塞的で密着した関係性
・母と子のお互いに依存した状態
すこし厳しい話にもなりますが、親の過干渉とは、つまり「子どもをコントロール」しようとする親の気持ちなのです。
親としては「心配だから」「子どものためをおもって」といった思いがあるでしょう。
親は「人生のアドバイス」と思っている声掛けの中に、子どものレールを暗に敷いてしまっている言葉が含まれているかもしれません。
子どもは自分で決定する機会を失ってしまい、やがて「人のせい」にするようになってきてしまいます。
親の思い通りに子どもを育てたいがために、逆に子どもはそのコントロールされることに敏感になって「反発」します。
子どもに対する人格の否定、暴言、皮肉は当然ながら、「反発」をまねくだけです。
ぜったいにしてはいけないことです。
ベースに「発達障害」があるケースも
発達障害の子どもにとって、「学校生活」や「社会生活」は大きなストレスになることがあります。
いわゆる、「生きにくさ」です。
このストレスや悩みに早くから気がつき、適切な支援や親を含めた理解があれば、もしかするとそのストレスを和らげることができるかもしれません。
早い段階で相談、支援の手を入れる必要があるのは、このためです。
まとめ
家庭内暴力は、特に自分より弱い人を対象に起こります。ケガや命の危険さえ起こりうることさえあります。
こうなると家族だけで解決することが難しくなります。専門機関や専門家に相談したうえで、一緒に解決策を見つけていくことがとても重要です。
文献の事例では、高校進学や目標が本人の中で定まると、徐々に暴力行動も減ってきたというケースがあります。
暴力という行動にエネルギーを使うのではなく、子どもが自分で目標を決めて、それに向かってエネルギーを使うことが、健全な成長と言えるでしょう。
引用文献
・家庭内暴力、止める方法あります ひきこもり問題専門家
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM6K672BM6KUTFL00N.html
・東京都中部総合精神保健福祉センターHP
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/chusou/joho/sodankikan.html
・警視庁 ヤング・テレホン・コーナー
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/shonen/young.html
・熊谷 恵子 他:<事例>発達障害が基盤にある中学生の家庭内暴力に対する相談・援助: 学習障害およびその周辺の子どもを中心に. 筑波大学リハビリテーション研究.8(1). 69-78.1999
・笹原喜:青年期-青年病理学から-.中公新書.133-141.1997
・稲村博:家庭内暴力.新曜社.1980
・清水将之:家庭内暴力.小児精神医学.ヒューマンティワイ.157-166.1991
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