あなたは子どもの発音が気になることがありますか?
幼児の発音はいったい何歳くらいから発達していくのでしょうか?
あなたが気になる「幼児の発音は何歳から?」「おうちでどんなことすればいいの?」
その質問にお答えします。
幼児の発音と年齢
幼児の発音と年齢は様々な研究がおこなわれていきました。
ただしい発音をする幼児のパーセンテージは年齢ごとでつぎのように報告されています。
▸2歳 0%
▸3歳 27.5%
▸4歳 50%
▸5歳 95.5%
▸6歳 85%
いくつかの調査において、5歳時で80%以上の発音が完成されていると言われています。
発音は4歳から5歳にかけておおきく変化する
発音はどのような音から獲得していくのでしょうか?
4歳代までに完成していく発音
母音(ア・イ・ウ・エ・オ)
パ行、バ行、マ行、ヤ行、タ行(ツ以外)、ダ行(ヅ以外)、カ行、ガ行、ワ行、ナ行、ハ行
発音は4歳から5歳にかけて大きく変化します。
4歳から5歳にかけて完成していく発音
サ行、ザ行、ラ行、ツやヅ (/s/,/r/,/ts/)
とくに発音が難しい「サ行とザ行」
とりわけ発音が気になるのは「サ行、ザ行」です。
発音の調査において、次のような結果が報告されています。
サ行・ザ行を正しく発音する子どもの「年代別割合」
▸3歳 10~25%
▸4歳 55~70%
▸5歳 65~70%
サ行、ザ行はおよそ5歳くらいからおおよその子どもが発音できるようになってきます。
ただし、当然ですが個人差があります!
発音の発達は女の子のほうが早い
発音の発達には「性差」があるというのです。
発音テストにおいて、明らかに女の子のほうが有意に進んでおり、
女の子は、男の子よりほぼ一年近く発音発達が進んでいると考えられる。
わたしの経験則からみても、女の子のほうがおしゃべりじょうずですよね。
気になる幼児発音の特徴は??
気になる発音の特徴はつぎのような種類があります。
▸省略
音が抜けて省略されてしまう。音が抜けてしまう
「サカナ」→「アカナ」
「ヒコーキ」→「コーキ」
▸音の転置(音の入れかわり)
「テガミ」→「テミガ」
▸「チ」音化
サ行 → チャ行
タ行 → チャ行
▸子音の入れかわり
ラ行 → ヤ行
ラ行 → チャ行
サ行 → タ行
チャ行 → タ行
▸音の添加
もとの言葉にない音を付け加える
気になる発音の原因は、構造の問題だけではなかった!
発音は口、舌、歯、のど(声帯)の動きが必要
肺から出た空気の流れ(吐く息)が、声帯を通り、口で発音が作られます。発音を作る身体の部位は、口(唇をふくむ)、舌、歯といったところで、これを構音器官といいます。また、作られた音を構音と呼びます。
この音を作り出す構造の発達に未熟さがあると、正しい発音が出にくくなります。
聞く力も正しい発音に重要です
正しい発音には、「ただしく聞く力」も必要です。
聞き誤りの数が4語以上の子どもについてみると、聞き誤った言葉のおよそ70%の言葉を、「発音」するときも、誤って発音している。
幼児の発音発達と聞く力との間に、かなり高い相関関係が認められる。
上記の調査のとおり、「聞いた言葉」と「発音する言葉」はお互い関係しています。
このように幼児の発音の発達には、音を作る機能や聞く力も発達が大きく影響しています。
ですが!!
文献を読み解くとこれら以外にも原因となるものがあるようです…
それは??
発音は親の養育方法(態度)が関係している!
発音と親の養育方法(つまり、どのような態度でこどもと接するか)の関係が明らかにされています。ちょっとこの報告をみてください。
服従的態度のうち、盲従型の傾向が強い幼児では発音発達が遅れる傾向があると推定されている。
言葉が難しい…つまり、
子どもが自分の思うがままに行動する
↓
それに合わせて、親が盲目的に従ってしまう
↓
幼児が正しい言葉を習得する機会が不足する
↓
さらに「退行現象(赤ちゃん返り)」を引き起こす可能性
↓
発音の発達が遅れる傾向
子どもが「主導権」を握ってしまうことによって、子ども自身が体験できる貴重な機会をうばってしまうことになります。
「主体的」に子どもが行動することはよいことです。ですが、それに親が言いなりになってしまうと「主導権」を子どもが握ってしまうことにつながります。
親が主導権を握るためには?
親がきちんと主導権を握るためにはどのようにしたらよいのでしょうか?
ズバリ!
「お手伝い」です。
この場合のお手伝いは、遊びのなかでの簡単な「たのみごと」も含みます。
たとえば、、、
▸ボール遊びをしている場合
親が指定するかごの中にボールを入れてもらう
▸粘土あそび
「丸めて」「これを切って」とたのみごとをする
▸お手伝いをしてもらう
「箸をはこんで」「ごみを捨てて」「お片付けを一緒にやろう」
頼み事はなんでもよいです。思いついたことを子どもにやってもらいます。
この「たのみごと」で重要なのは
頼みごとを子どもがやってくれたら、「ほめる」という構造です!
子どもが自由に遊ぶ、活動する中に「大人」からの頼みごとをこなす、そして大人はほめるという構造を取り入れることによって、子どもが主体的に動きながらも、主導権は大人にあるという状況を作り出すことができるのです。
でも、「指示」したり、「無理やり従わせる」っていうのはダメです。あくまでも、子どもの主体性を尊重したうえに、この構造は成り立っているのです。
発音が気になるけど、、、相談したほうがよい?
答えは「イエス」です。
気になることや不安があれば、積極的に「医療機関」「地域の療育センター」などに相談してみましょう。きっと解決の糸口が見つかるはずです。
相談するタイミング
気になった時に相談するのが、もっとも良いタイミングと言えます。
ただ、次のような報告があります。
発達途上にみられる「(発音の)誤り」は、発達にともない、最終的には「6歳~7歳」までに自然治癒するものである
しかし、5歳~6歳になっても誤りが残っており、本人がそれを自覚して、集団生活などで支障や不適応を起こしている場合は、言語聴覚士(ST:ことばを専門とするリハビリの専門職)が介入して、就学までに改善させる。
つまり、発達の途中で起こる発音の誤りは、自然に治っていきます。
しかし、発音の誤りを「本人」が自覚して困っているのであれば、専門職の介入が必要になるということです。
これをひとつの「目安」に相談するの良いと思います。
日常生活でできる!発音をそだてるトレーニング
発音が気になるけど、、、何したらよいの?
この発音をそだてるため、日常生活で出来ることをお話します。
「食事」は毎日できるトレーニング
コップで飲む
乳児はもちろんお母さんの母乳やミルクを飲みます。
およそ6カ月ころから離乳食がはじまり、「スプーン」でごっくんができるようになります。さらに、8カ月ころから大人の手を借りながらでも、コップから飲めるようになります。さらに、10か月ころからコップに興味を持ち始めたら「自分でコップをもって飲む」段階にすすんでいきます。
コップからこぼさずに飲むということが、口の周りの筋肉を発達させていくのです。
カミカミ!噛む
前歯で噛み切る、おせんべいや、ビスケット
奥歯ですりつぶす、スルメ キュウリ等の野菜、ガム、お肉など
「噛む」を促すことで、これも口の筋肉の発達を促すことができます。
吸う
吸うことやこの次に紹介する「吹く」ことは、自分で息(呼吸)をコントロールすることでもあります。息を口や鼻から出すというのは、鼻への空気の通り道をふさぐ「鼻に空気がもれないようにする」これは、発音のきほんの動きになるのです。
スプーンからスープをすする、ストローでジュースを吸って飲むといったことで、吸うという動きを促すことができるます。
つまり、息をコントロールする練習になるのです。
ふーふー吹く
息をコントロールするもうひとつの動き「吹く」
熱い食べものをさますときに、フーフーすることがあるでしょう。これでごく自然にふくという動きを促すことができます。
口を閉じる、鼻に空気がもれないようにする、息をコントロールすることは、発音には欠かせない動きのひとつです。
ほかにも、子どもたちがすきな「シャボン玉」や「風車」、ハーモニカや笛、ラッパのおもちゃなども、吹く動きが含まれます。
遊びながら、吹く練習ができます。
ペロペロ!なめる
あめをなめる、口のまわりについた食物をなめる。
このなめる動きは、ベロ(舌)の動きが欠かせません。そして、じょうずに発音をするために必要な動きのひとつに「ベロの動き」があります。
そう、なめる=ベロの動き
上下左右、歯の裏など、自由自在にベロを動かせることが発音にとっても重要な運動となるのです。
ガラガラうがい
食事の前には「てあらいうがい」。コロナ禍で重要になった「手洗い」と「うがい」。
この「うがい」も発音に必要な口やのどの動きを促すレトレーニングになります。
ですが、うがいはいきなり上を向いて「ガラガラ、ぺっ」ができるわけではありません。
▸口に水を含んで飲み込まずに吐き出すこと
↓
▸水を含んで飲み込まずに上を向けること
↓
▸ガラガラ音を立ててうがいをすること
この順番で、子どもができることから初めてみましょう。
聞くことは、しゃべること!聞く力をそだてる遊び
先にのべた文献にもあるとおり、じょうずに発音できない原因のひとつとして「聞く力の未熟さ」があります。
カルタ
聞く力をそだてる遊びは色々あるが、誰もが一度はやったことがある遊びが「カルタ」です。
カルタは読み札を集中して聞いておかなければなりません。また、取り札と「聞いたことば」を一致させるために、正しく聞く必要があります。
すごろく、人生ゲーム
すごろくや人生ゲームは、進んだコマに指令が書かれているものがあります。これも、かかれている文字(文章)に注目し、それを言葉にすることで「話を聞く」もしくは「読む」という練習になる。
実際、私もリハビリの現場で聞く力を促すために「人生ゲーム」を用いることがあります。
歌をうたう
歌が好きな子は、積極的に「うた」を取り入れてもよいでしょう。
歌を聴くことは、つまり「聞く力」をそだてることになります。また、歌をうたうことで、声を長く出すという発声練習、発音の練習になりますね。
体をおもいっきり使ってあそぼう
顔、口、舌、のどのうごきなどを必要とする「発音」は、細やかで繊細な運動です。この細やかな運動の土台となるのは、体全体の使い方にほかなりません。
自分の体の使い方を知っている、つまり自分で自分の体を思い通りにコントロールできるからこそ、細やかな動きもコントロールできるのです。
公園の遊具や自宅で遊べるジャングルジムなど、体いっぱいつかった遊びをたくさんしましょう。
いっそのこと、発音ということは置いといて、子どもと一緒に楽しく遊んではどうでしょうか。
まとめ
親とって子どもの発音は「気になる発達」のひとつです。発達の過程で自然に治っていくこともあります。
ですが、本人が発音を気にしている、あるいは「あなた自身」どうしても心配ならば、医療機関や子育て相談などに行くのが良いでしょう。
この記事が発音を理解するお役に立てれば幸いです。
引用文献
・上杉弘:幼児の発音に関する研究. ・金沢大学十全医学会雑誌 第74巻 第1号.p144-170.1966
・牛島義友・森脇要:幼児の言語発達.目黒書店. 1943
・今井智子:小児の構音障害.音声言語医学 51.258-260.2010
・弓削明子 他:小児の機能性構音障害の要因に関する文献的考察. 健康医療学部紀要 第 5 巻.p1-10.2020
・松本治雄:研究 構音発達予測検査の作成およびその予測性の検討.1981
・岡部毅:幼児の言語発達(I)-2才児の観察による発話事例研究-
・センター便り 第 28 号:東京都立心身障害者口腔保健センター
https://tokyo-ohc.org/wp/wp-content/uploads/2017/12/s28.pdf
・芝山祐輔:ことばの発達障害への国語科指導-ことばの発達の遅れのある子どもへの大人・教師による援助-.
・小椋たみ子:幼児の構音における代置の誤りとその改善過程の分析. 島根大学教育学部紀要(人文社会科学)第12巻.p55-72.1978
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