みなさんはお子さんたちとスキンシップはとっていますでしょうか?
スキンシップって、文字通り皮膚の感覚を通したかかわり合いです。親子だけでなく、友人同士、兄弟同士でも、スキンシップは重要なやりとりのひとつで、絆が深まることがわかっています。
でも、本当に重要なことは、「スキンシップは子どもの成長に大きな影響を与える」ということです。
今回はスキンシップの研究や効果について、紐解いていきます。
スキンシップは成長に大きな影響を与える
生きるためのスキンシップ
スキンシップは「生きる事」と密接な関係があることがいくつかの実験結果からわかっています。
これは有名な「フリードリヒ 2 世の実験」といわれるものです。
50 名の赤ん坊に対し、おむつ交換や授乳、お風呂や睡眠をきちんと施す一方で、話しかけることや抱いて可愛がることを禁止させた。その結果、すべての赤ん坊が 1 歳になる前に亡くなった。
衝撃的な実験ですが、身体接触の不足がストレスを引き起こし、成長ホルモンの分泌が妨げられたことが原因だと指摘されています。
社会性と心の成長をはぐくむスキンシップ
スキンシップやアタッチメントは、子どもの社会性や心の成長に大きな影響を与えていることが、いくつかの研究で示されています。
アカゲザルの実験
生まれたばかりのアカゲザルは針金でできた代理母(哺乳瓶つき)よりも、布で作られた代理母(哺乳瓶なし)にくっついている時間が長かったという実験結果が得られました。この実験結果から、アタッチメントの形成には食物を与えることそのものよりも、快適な接触刺激が重要な役割を果たすことが示唆されています。
やはり接触刺激は生きていくうえで、必要な要素のひとつであるといえます。
しかし、この実験には続きがあります。
代理母(針金、布の両方)の飼育を受けたサルは、本物の母親ザルによる育てられたサルに比べて、攻撃性が高まったり、無気力・無関心になったりと、社会的行動の問題が多く見られるようになったという結果が出ています。
これによって、社会的行動の形成には実際の養育者との触れ合い、それと一緒に社会的体験をすることが必要であることが示唆されています。
親子のスキンシップと対人関係についての調査
両親からのスキンシップが多いと、日常の友人とのスキンシップの量も多くなるという結果が得られました。
これは、両親からのスキンシップを学習して、それを友人との交流に無意識に当てはめているためと考えられています。
心の不健康と接触体験の関係性
抑うつや不安といった心理的不健康を抱えた患者は、健常者と比べ、過去に受けた両親との接触体験が少ない傾向にあることがわかりました。さらに乳児期に親から受けた身体接触体験が少ない学生ほど、接触体験が多い学生と比べて、人間不信や自閉的傾向が高く、また自尊心が低下する傾向にあることがわかりました。
この調査によって心の成長にはスキンシップのような接触体験が必要であることが示唆されます。
スキンシップは、子どもが生きると成長に直結しているんですね。
スキンシップは安全基地を作る
「安全基地(secure base)」という概念があります。これは、子供にとって守られている安心感を得ることができる拠り所のことをさし、これがあることによって子どもは両親等の養育者から離れて、その世界を探索していきます。
外の世界でつらいことや怖いこと、不安なことが起きた場合、この安全基地(養育者)のもとに戻ることで安心感を得ることができます。
この安全基地があることによって、子どもたちは外の世界と関わり合い、挑戦していくわけです。
スキンシップは安全基地を形成する重要な要因であると考えられており、子どもが養育者に抱き着いたりするのも、スキンシップを通して安心感を得るためだと解釈されています。
リラックス・共感性を高めるホルモン「オキシトシン」
スキンシップによって、脳内オキシトシンの分泌が増えることが明らかになっています。
オキシトシンは子宮収縮や乳汁分泌を促すホルモンとして知られていますが、性別や年齢に関係なく分泌されます。
このオキシトシンには次のような作用があることがわかっています。
・不安や緊張、鬱などストレス、不安な気分を解消させる、リラックス効果
・他者との情緒的なつながりや信頼感を高める
・共感性の向上など社会集団に適応を高める
安心感を得る、リラックスできるなどの根底には、この脳内ホルモンが影響していたのですね。
スキンシップで両親の養育態度が変化する
スキンシップによる効果は、子どもに与える影響だけではありません。両親の養育態度にも影響を及ぼす可能性があることがわかりました。この場合、スキンシップは広い意味で「子どもと関わる・接する」という意味でつかわれます。
父親がゆっくりと子どもと関わる態度をみると、母親にとって印象的にうつり、母親の養育態度を変化させる可能性がある
このゆっくりと子どもと関わる態度とは次のような事を言います。
・子どもに歌を歌う
・子どもに本を読んであげる
・だきしめる
・寝るときに、お話をする
このようなことを父親が行っているのをみると、母親にはとても印象的にうつって気持ちが変化するわけです。夫婦間の信頼関係にも影響することですね。
じつは両親の教育態度は子どもの発達に影響を及ぼしますよ!
子どもの問題行動の発達を防ぐためには、父親の良好な養育態度母親の父親に対する信頼感や愛情が重要であるという研究結果がでています。
父親・母親ともに相互のサポートが必要です!
夫婦の協力が、子どもの成長に良い結果をもたらします。
スキンシップの注目すべき効果 3選
以上の話から、スキンシップの注目すべき効果を3つあげてみました。
・安心感、リラックス効果や他者への信頼感を高める
・心の発達を促す(共感性の向上、社会的な行動の獲得、自信)
・両親の養育態度に良い変化をもたらす
まとめ
うれしい時も、悩んだ時も、人は人と触れ合い、自分は一人ではないことを確認します。スキンシップは子どもにとって重要なかかわりの一つであると同時に、安心感や社会性を学ぶ機会でもあるわけです。
お子さんたちと一緒にゆっくりとした時間をすごしてみませんか。
引用文献
・原田 眞澄:子どもへのタッチングに関する考察,中国学園紀要 (16), 51-57.2017
・有田 秀穂:スキンシップと団欒はオキシトシンを介してストレスを解消させる,国際生命情報科学会誌 33(1), 96, 2015
・山口 創 他:両親から受けた身体接触と心理的不適応との関連 健康心理学研究,13,19-28.2000
・Harlow, H. The nature of love. American Psychologist, 13, 673-685. 1958
・本元 小百合 他:皮膚感覚の身体化認知の展望とその課題,関西大学心理学研究,29-38,2014
・藤田文:親子のスキンシップと大学生の対人関係との関連,日心第70回大会,2006
・浜崎隆司他:幼児期における父母のスキンシップと養育態度との関連,幼年教育研究年報 第30巻,26-31,2008
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