前半では、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)における遺伝率、多因子疾患という考え方、そしてポリジェニックスコア(PGS)について解説しました。
ASDやADHDには、遺伝的な要因が大きく関係しています。しかし、それは「遺伝子によって、その人の将来が決まっている」という意味ではありません。
では、遺伝と環境は実際にどのように関係しているのでしょうか。
なぜ、同じ家庭で育った兄弟姉妹でも、発達特性が異なるのでしょうか。
そして、遺伝子検査を受ければ、ASDやADHDになるかどうかが分かるのでしょうか。
今回は、これらの疑問を、現在の遺伝学研究をもとに考えていきます。
1.遺伝と環境は、どのように関係しているのか?

発達について考えるとき、遺伝と環境を別々のものとして捉えがちです。
例えば、
- 遺伝によって脳の特徴が決まる
- 環境によって行動が変わる
という考え方です。
しかし、実際の発達は、もっと複雑です。
遺伝的な特徴は、脳や身体の発達に影響します。一方、本人が経験する環境や生活条件は、発達の過程や、特性が日常生活にどのように表れるかに関係します。
つまり、遺伝と環境は、互いに無関係な二つの要因ではなく、発達の過程で関係し合っているのです。
遺伝子と環境の相互作用
遺伝的な特徴によって、ある環境の影響を受けやすくなったり、反対に受けにくくなったりすることがあります。
このような関係は、遺伝子と環境の相互作用(Gene–Environment Interaction:G×E)と呼ばれます。
2024年に『Nature Reviews Genetics』で発表されたレビューでは、遺伝的な要因と環境要因の相互作用について、複雑な形質や疾患を理解するための重要な研究課題として整理されています。ただし、相互作用の大きさや具体的な仕組みは、対象となる形質や環境、研究方法によって異なります。
例えば、音に敏感な特性がある子どもを考えてみましょう。
大きな音や突然の音が多い環境では、本人が強い負担を感じることがあります。一方、音の刺激を調整できる環境では、負担が軽減される可能性があります。
この例で重要なのは、環境によって遺伝的な特徴そのものが簡単に消える、ということではありません。
同じ特性を持っていても、環境によって困りごとの現れ方や生活への影響が変わることがあるという点です。
なお、この例は遺伝子と環境の相互作用を理解するためのものです。音への敏感さが、特定の遺伝子と特定の環境との相互作用によって生じると、個別の事例だけから断定できるわけではありません。
環境を整えることは、遺伝を否定することではない
ここで、療育や子育てを考えるうえで大切なことがあります。
遺伝的な影響が大きいのであれば、支援しても意味がないのでしょうか。
もちろん、そうではありません。
例えば、注意を維持することに難しさがある子どもに対して、課題を短く区切る、手順を見える形にする、気が散りにくい環境をつくるといった工夫は、日常生活を支える方法になり得ます。
また、感覚刺激への負担が大きい子どもには、休憩場所を確保したり、刺激の強さを調整したりすることが役立つ場合があります。
こうした支援は、ASDやADHDの遺伝的な背景をなくすものではありません。
しかし、本人が持つ特性と生活環境との間に生じる負担を軽減し、学習や活動、対人関係に参加しやすくする可能性があります。
遺伝的な影響が大きいことと、支援によって生活が変わることは、矛盾しません。
2.なぜ兄弟姉妹でも発達特性が違うのか?

同じ両親から生まれ、同じ家庭で育った兄弟姉妹であっても、発達特性は同じとは限りません。
一人は注意の切り替えが得意でも、もう一人は苦手かもしれません。
一人は感覚刺激に敏感でも、もう一人はそれほど気にしないかもしれません。
兄弟姉妹で違いが生まれる理由には、いくつかの要因があります。
理由① 受け継ぐ遺伝的な組み合わせが異なる
子どもは、両親から遺伝情報を受け継ぎます。
しかし、兄弟姉妹が受け継ぐ遺伝情報の組み合わせは、基本的に同じではありません。
これは、卵子や精子が形成されるときに、染色体の組み合わせが変化するためです。
そのため、同じ両親から生まれた兄弟姉妹であっても、受け継ぐ遺伝的な特徴には違いが生まれます。
ASDやADHDのように、多数の遺伝的な要因が関係する特性では、その組み合わせの違いが、発達上の特徴の違いに関係する可能性があります。
ただし、特定の遺伝的な組み合わせだけで、その子どもの特性を完全に予測できるわけではありません。
理由② 発達の過程や経験が異なる
兄弟姉妹は同じ家庭で育っていても、まったく同じ環境を経験しているわけではありません。
例えば、
- 生まれた時期や年齢によって、経験する生活環境が違う
- 学校や保育園で出会う人や求められることが異なる
- 興味を持つ遊びや活動が違う
- 得意なことや苦手なことに応じて、経験する成功や失敗が異なる
- 睡眠や体調など、その時々の状態が異なる
といった違いがあります。
また、同じ出来事を経験しても、その受け止め方や負担の大きさは人によって異なります。
発達は、遺伝的な特徴だけでなく、成長の過程で経験するさまざまな要因と関係しています。
理由③ 同じ特性でも、困りごとの現れ方が違う
もう一つ大切なのは、発達特性と、日常生活で生じる困りごとは、必ずしも同じではないということです。
例えば、注意を持続することが苦手な子どもが二人いたとします。
一人は、好きな活動であれば集中でき、周囲の支援も受けやすいかもしれません。
もう一人は、学校生活で長時間の着席や複数の指示を求められることが多く、困難を感じやすいかもしれません。
この違いを、本人の努力や親の育て方だけで説明することはできません。
本人の特性と、求められる課題、周囲の理解、利用できる支援などが関係しているからです。
兄弟姉妹の発達特性が違うことは、育て方が正しかったかどうかを判断する材料にはなりません。
また、発達特性が異なることを、どちらかが優れている、劣っているという評価に結びつける必要もありません。
それぞれの子どもを理解するためには、家族内で比較するよりも、一人ひとりの特徴と生活環境を丁寧に捉えることが大切です。
3.ASDとADHDには、遺伝的な共通点があるのか?
ASDとADHDは、診断基準も中心となる特徴も異なる発達障害です。
ASDでは、社会的コミュニケーションや対人関係に関する特徴、限定された興味や反復的な行動などが診断上の重要な要素になります。
ADHDでは、不注意や多動性・衝動性が中心的な特徴です。
しかし、研究では、この二つの状態に遺伝的な共通点があることも示されています。
共通する遺伝的な要因と、それぞれに特徴的な要因
2023年に発表された研究では、ASDとADHDの遺伝的な関連が検討され、両者に共通する遺伝的な領域と、それぞれの特徴に関連する領域が報告されました。
同研究では、両者に共通する遺伝的な領域が7か所、異なる特徴に関連する領域が5か所特定されています。これは、ASDとADHDが遺伝的に完全に別々の状態ではない一方、同一の状態でもないことを示す知見です。
つまり、ASDとADHDには、共通する遺伝的な背景と、それぞれに異なる遺伝的な背景の両方があると考えられています。
ここで注意したいのは、「共通する遺伝的要因がある」ということと、「同じ遺伝子が、必ず同じ症状を引き起こす」ということは違う点です。
遺伝的な要因の働きは、他の遺伝的な特徴や発達の過程などとの関係によって異なり得ます。
また、研究で報告される遺伝的な関連は、集団全体の統計的な傾向です。個人について、遺伝子だけからASDかADHDかを判定できることを意味しません。
ASDとADHDが併存することがある理由
ASDとADHDの特徴は、一人の人の中に同時に見られることがあります。
例えば、対人関係や感覚処理に特徴がある一方で、注意の維持や衝動のコントロールにも難しさが見られる場合です。
こうした併存については、遺伝的な共通点が一部関係している可能性があります。
ただし、併存の理由を遺伝だけで説明できるわけではありません。発達の過程、環境、認知機能、生活上の経験なども含めて考える必要があります。
この研究分野は、ASDとADHDを単純に一つにまとめるためのものではありません。
むしろ、共通する部分と異なる部分を明らかにすることで、個々の特性をより詳しく理解しようとする研究です。
診断名が異なっていても、関連する発達上の特徴が重なることはあります。反対に、同じ診断名であっても、遺伝的な背景や日常生活での困りごとは一人ひとり異なります。
4.「遺伝子検査で発達障害が分かる」は本当なのか?

ここは、誤解が生じやすい重要なポイントです。
結論からいうと、一般的なASDやADHDについて、遺伝子検査だけで診断できるわけではありません。
一方で、遺伝子検査が診断や医療に役立つ場合もあります。
この二つを区別することが大切です。
① ASDやADHDの多くは、一つの遺伝子だけでは説明できない
前半で説明したように、ASDやADHDには、多数の遺伝的な要因が関係しています。
そのため、一般的なASDやADHDについて、特定の一つの遺伝子を調べれば診断できるという仕組みにはなっていません。
ポリジェニックスコア(PGS)も、多数の遺伝的な変異の情報を統計的に組み合わせ、集団における遺伝的な傾向を推定するものです。
現時点では、PGSを一般的なASDやADHDの診断にそのまま用いることはできません。
研究で統計的な関連が確認されることと、個人の診断に十分な精度で使えることは、別の問題なのです。
② 遺伝子検査によって、特定の遺伝性疾患が見つかる場合がある
一方、発達の遅れや知的発達症、先天的な身体の特徴、てんかんなどが見られる場合には、背景に特定の遺伝性疾患が存在することがあります。
このような場合、医師が必要性を判断し、染色体検査や遺伝学的検査を検討することがあります。
検査方法には、染色体の数や構造の変化を調べる検査、特定の遺伝子を調べる検査、エクソーム解析やゲノム解析などがあります。
エクソーム解析は、主にタンパク質をつくる情報を含む領域を調べる方法です。ゲノム解析は、より広い範囲の遺伝情報を調べます。
これらの検査によって、発達上の特徴の背景にある遺伝的な原因が特定される場合があります。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、先天異常や発達遅滞・知的発達症がある小児について、エクソーム解析やゲノム解析を初期または次の段階の検査として検討することを推奨しています。ただし、この推奨は、主に先天異常や発達遅滞・知的発達症を対象としたものであり、ASDやADHDのあるすべての人に一律に同じ検査を行うという意味ではありません。
③ 遺伝的な原因が見つかっても、すべての特徴が説明できるとは限らない
遺伝子検査で原因となる変化が見つかったとしても、それだけで、その人のすべての行動や発達上の特徴、将来の生活が予測できるとは限りません。
同じ遺伝的な変化を持っていても、症状や発達の特徴には個人差が生じることがあります。
また、検査を行っても原因が特定できない場合があります。
検査で原因が見つからなかったからといって、遺伝的な要因が存在しないと証明されたわけではありません。現在の検査方法では捉えられない変化や、医学的に意味を判断できない変化が存在する可能性もあります。
さらに、検査結果の解釈には専門的な知識が必要です。
検査を受けるかどうか、どの検査が適切か、結果をどのように受け止めるかについては、本人や家族の希望も踏まえながら、主治医や臨床遺伝の専門家などに相談することが大切です。
④ 遺伝子検査は、子どもの可能性を決めるためのものではない
遺伝子検査によって、発達上の特徴の背景にある疾患が明らかになると、健康管理や合併症の確認、家族への説明などに役立つことがあります。
しかし、検査結果だけで、子どもが将来どのような仕事に就くのか、何が得意になるのか、どのような生活を送るのかを決めることはできません。
遺伝情報は、本人を理解するための情報の一つです。
その情報を、子どもの可能性を狭めるために使うのではなく、必要な医療や支援を考えるために活用することが重要です。
5.エピジェネティクスとは何か?

遺伝と環境の関係を考えるうえで、もう一つ知っておきたい概念があります。
それが、エピジェネティクスです。
エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列そのものを変えずに、遺伝子の働き方が調節される仕組みなどを研究する分野です。
例えば、DNAのメチル化や、DNAが巻き付くヒストンというタンパク質の修飾などが、遺伝子の働き方に関係することが知られています。
遺伝子には、いつ、どこで、どの程度働くかという調節が関係しています。発達の過程でも、こうした遺伝子の働き方の調節は重要です。
ただし、ここで注意が必要です。
エピジェネティクスは、「環境によって遺伝子が自由に書き換えられる」という意味ではありません。
また、育て方や日常の経験によって、ASDやADHDの原因が簡単に変わるということでもありません。
エピジェネティクスの研究では、遺伝子の働き方と発達、環境要因との関係が調べられています。しかし、特定のエピジェネティックな変化が、ASDやADHDの原因なのか、発達に伴う変化なのか、他の要因を反映しているのかを区別することは容易ではありません。
したがって、現時点では、エピジェネティクスを根拠に「親の育て方が発達障害を引き起こす」と結論づけることはできません。
遺伝子の働き方を調節する仕組みが研究されていることと、特定の発達障害の原因や予防法が確立していることは、区別して考える必要があります。
6.遺伝率が高いなら、環境を整えても意味がないのか?
ここまでの内容を整理すると、遺伝率が高いという事実と、環境調整や支援の意味は、別の問題であることが分かります。
遺伝率とは、ある集団の中で見られる個人差のうち、遺伝的な違いと統計的に関連する割合を表す指標です。
特定の子どもについて、「発達特性の何%が遺伝で、何%が環境で決まっている」と示す数値ではありません。
また、遺伝率は、調査する集団や環境、年齢、研究方法などによって変わることがあります。
遺伝率が高いという結果から、次のような結論を導くことはできません。
- 支援をしても発達は変わらない
- 環境を整えても意味がない
- 本人の得意なことや苦手なことは変わらない
- 将来の生活や能力は生まれたときから決まっている
これらは、遺伝率という指標が示す範囲を超えた解釈です。
例えば、ある子どもが注意を切り替えることに難しさを持っていたとしても、指示の出し方や課題の構成、休憩の取り方、周囲の理解によって、活動に参加しやすくなる場合があります。
また、本人が得意な活動や興味を持つ対象を見つけることで、学習や生活の中で力を発揮できる場面が増えることもあります。
こうした変化は、遺伝的な背景が存在しないことを意味しません。
遺伝的な特徴があっても、その特徴が生活にどのような影響を与えるかは、本人の状態や環境、支援との関係で変わり得るのです。
これは、発達支援を考えるうえで大切な視点です。
7.「遺伝=運命」ではない理由

ここまで、ASDやADHDの遺伝研究について、遺伝と環境の相互作用、兄弟姉妹の違い、両者に共通する遺伝的な背景、遺伝子検査の限界などを見てきました。
これらの研究から分かるのは、発達が単純な一つの原因だけで決まるものではない、ということです。
その理由を、最後に整理しておきましょう。
理由① 多くの場合、多数の遺伝的な要因が関係している
ASDやADHDの多くは、一つの遺伝子だけで説明できるものではありません。
多数の遺伝的な変異が、それぞれ異なる大きさで関係しています。
そのため、一つの遺伝的な要因だけを見て、本人の特性や将来をすべて予測することはできません。
一方、特定の遺伝的な変化が大きな影響を持つ遺伝性疾患も存在します。したがって、「すべての発達上の特徴が多因子性である」と一律に考えるのも正確ではありません。
理由② 遺伝的な特徴が、同じ形で表れるとは限らない
同じ遺伝的な変化を持っていても、発達の特徴や健康上の影響には個人差が生じる場合があります。
遺伝的な背景だけでなく、他の遺伝的な要因、発達の過程、身体の状態なども関係するためです。
遺伝的な情報から分かることには限界があり、本人の状態を実際に観察し、必要な評価を行うことが重要です。
理由③ 環境と支援によって、生活上の困りごとは変わり得る
遺伝的な特徴そのものをなくすことが難しい場合でも、生活環境を調整することによって、困難を軽減できる場合があります。
例えば、本人に合った学習方法を工夫する、感覚刺激を調整する、見通しを持てるようにする、休憩を取りやすくするなどの方法です。
ただし、すべての困りごとが環境調整だけで解決するわけではありません。本人の状態に応じて、医療、療育、教育、福祉などの支援を組み合わせることが大切です。
理由④ 遺伝情報だけでは、本人の将来を予測できない
ポリジェニックスコアなどの研究は、遺伝的な傾向を理解するための手段です。
しかし、現時点では、一般的なASDやADHDについて、遺伝情報だけで個人の診断や将来の生活を十分な精度で予測できるわけではありません。
本人が何を得意とするのか、どのような活動に興味を持つのか、どのような環境で力を発揮しやすいのかは、実際の生活や経験の中で理解していく必要があります。
遺伝情報は、その人のすべてを表すものではありません。
8.発達支援において、遺伝研究をどう生かすのか?
遺伝研究の進歩は、ASDやADHDを理解するための重要な手がかりになります。
発達上の特徴に関係する遺伝的な仕組みが明らかになれば、将来的には、原因に応じた医療や健康管理、支援方法の検討につながる可能性があります。
一方、研究成果を日々の子育てや療育に生かすときには、注意したいことがあります。
それは、遺伝的な背景を知ることと、目の前の子どもを理解することは、同じではないということです。
例えば、ASDという診断が同じでも、感覚刺激への反応、コミュニケーションの特徴、興味を持つ活動、学習方法、疲れやすさなどは一人ひとり異なります。
ADHDについても、不注意、多動性、衝動性の現れ方や、日常生活で必要となる支援は人によって違います。
遺伝研究によって、集団全体に共通する傾向が分かっても、それだけで個人の特徴をすべて理解できるわけではありません。
だからこそ、日々の生活の中で本人の行動や反応を観察し、何が負担になっているのか、どのような条件で力を発揮しやすいのかを丁寧に捉えることが大切です。
子どもが苦手なことだけを見るのではなく、好きなこと、得意なこと、安心して取り組めることにも目を向ける。
そして、本人に合った環境や支援を考えていく。
こうした取り組みは、遺伝研究の価値と矛盾するものではありません。
むしろ、遺伝的な背景が多様であることを理解するからこそ、一人ひとりの特徴に合わせた支援が必要になるのです。
まとめ|遺伝を知ることは、可能性をあきらめることではない

ASDやADHDの遺伝研究は、近年大きく進歩しています。
多数の遺伝的な変異が関係すること、ASDとADHDに共通する遺伝的な背景があること、特定の遺伝的な変化が診断や医療に役立つ場合があることなど、さまざまな知見が蓄積されています。
一方で、遺伝的な情報だけで個人の発達や将来をすべて予測することはできません。
遺伝率は、個人の運命を示す数字ではありません。
ポリジェニックスコアは、一般的なASDやADHDを確定診断するための検査ではありません。
遺伝子検査も、すべての発達特性を説明できるわけではありません。
そして、遺伝的な影響が大きいことは、環境調整や支援が無意味であることを意味しません。
発達は、遺伝的な特徴だけでなく、成長の過程、本人の状態、経験、生活環境など、さまざまな要因が関係する複雑な過程です。
「遺伝=運命」ではありません。
遺伝研究によって分かってきたことを正しく理解しながら、目の前の子どもの特徴を丁寧に捉え、その子に合った環境や支援を考えていくこと。
それが、現在の遺伝学研究を子育てや療育に生かすうえで、大切な姿勢ではないでしょうか。
参考文献・参考資料
- Herrera-Luis, E., et al. (2024). Gene–environment interactions in human health. Nature Reviews Genetics, 25, 768–784. https://doi.org/10.1038/s41576-024-00731-z
- Identification of shared and differentiating genetic architecture for autism spectrum disorder, attention-deficit hyperactivity disorder and case subgroups. (2023). PubMed Central. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10848300/
- Manickam, K., et al. (2021). Exome and genome sequencing for pediatric patients with congenital anomalies or intellectual disability: an evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genetics in Medicine, 23, 2029–2037. https://doi.org/10.1038/s41436-021-01242-6
- American Academy of Pediatrics. (2025). Genetic Evaluation of the Child With Intellectual Disability or Global Developmental Delay. Pediatrics. https://publications.aap.org/pediatrics/article/doi/10.1542/peds.2025-072219/202230/Genetic-Evaluation-of-the-Child-With-Intellectual
- A meta-analysis of genetic effects associated with neurodevelopmental disorders and co-occurring conditions. (2023). Nature Human Behaviour. https://www.nature.com/articles/s41562-023-01530-y
※本記事は、遺伝学研究の一般的な知見を解説するものであり、個人の診断や遺伝カウンセリングに代わるものではありません。遺伝学的検査の必要性や結果の解釈については、医師や臨床遺伝の専門家に相談してください。


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