ASD・感覚特性のある子どもが「噛みたがる理由」を脳と感覚から考える

「服のえりをいつも噛んでいる」
「鉛筆の先をボロボロにしてしまう」
「おもちゃを口に入れる」
「爪や指を噛むクセがある」
子どもの「噛む行動」に悩んだ経験のある保護者は少なくありません。
大人から見ると、
- やめさせた方がいいのでは?
- ストレスがあるの?
- 発達障害と関係があるの?
と心配になることもあるでしょう。
しかし、子どもが何かを噛むとき、そこには単なるクセではなく、
「感覚を調整するための意味」
が隠れていることがあります。
今回は、感覚統合や神経発達の視点から、
- なぜ噛むのか
- どんな感覚が関係しているのか
- ASDやADHDとの関係
- 家庭でできる工夫
について詳しく解説していきます。
噛む行動は意外とよく見られる
まず知っておきたいのは、
子どもの「噛む行動」は決して珍しいものではありません。
例えば、
- 服の襟を噛む
- 鉛筆を噛む
- ストローを噛む
- 爪を噛む
- 髪の毛を噛む
- おもちゃを噛む
- 指を噛む
などがあります。
乳幼児期には口で探索することが発達上自然な行動ですが、
学齢期以降になっても続く場合には、感覚特性や自己調整との関連がみられることがあります。
「噛む」は口の感覚を使った自己調整
実は口の周りには、
非常に多くの感覚受容器があります。
唇
舌
歯ぐき
顎
頬
などは、身体の中でも特に感覚が鋭い場所です。
そのため噛むことで、
脳へ強い感覚入力が送られます。
つまり、
噛むことそのものが感覚刺激になる
のです。
口は脳に近い感覚器官

赤ちゃんが何でも口に入れるのは、
口から多くの情報を得ているためです。
実際に脳の感覚野(体性感覚野)では、
手や口は非常に広い領域を占めています。
つまり、
脳にとって口は非常に重要なセンサーなのです。
そのため、
- 噛む
- なめる
- 吸う
などの行動は、
感覚を得るための自然な方法とも言えます。
噛むと落ち着くことがある理由

これは多くの保護者が驚くポイントです。
噛む行為では、
顎の筋肉や関節に強い刺激が入ります。
この刺激は、
固有受容覚(こゆうじゅようかく)
と呼ばれる感覚に関係しています。
固有受容覚とは、
- 筋肉
- 関節
- 腱
から得られる感覚です。
身体の位置や力の入り具合を脳へ伝えています。
固有受容覚は「身体の地図」を作る感覚
固有受容覚は、
身体の存在を脳に知らせる重要な感覚です。
例えば、
- 重い物を持つ
- 抱きしめられる
- 押す
- 引っ張る
- 噛む
などで強く刺激されます。
この感覚入力は、
脳の興奮を整理したり、
身体の位置感覚を安定させたりする働きがあります。
そのため、
噛むことで落ち着く
子どもも少なくありません。
ASDの子どもに噛む行動が多いの?
比較的よく見られます。
ただし、
ASDだから必ず噛む
わけではありません。
ASDの子どもでは、
- 感覚入力の感じ方
- 感覚処理の仕方
に特徴がみられることがあります。
その結果、
- もっと刺激が欲しい
- 落ち着きたい
- 不安を減らしたい
という目的で噛む行動につながることがあります。
ADHDでも噛むことがある

ADHDの子どもでも、
- 鉛筆を噛む
- 消しゴムを噛む
- 爪を噛む
などが見られることがあります。
これは、
集中力を維持するために無意識で行っている場合があります。
実際に、
「考え事をするとペンを噛む大人」
もいます。
噛むことによる感覚入力が、
脳の覚醒状態を調整している可能性があります。
ストレスだけが原因ではない
噛む行動を見ると、
「ストレスかな?」
と思われることがあります。
もちろん、
ストレスや不安が関係する場合もあります。
しかし、
感覚特性のある子どもでは、
ストレスというより
感覚入力を求めている
ことも少なくありません。
ここは重要なポイントです。
噛む=問題行動ではない
感覚統合の視点では、
噛む行動は
「困った行動」
というより、
子どもなりの自己調整
として捉えることがあります。
もちろん、
- 他人を噛む
- 自分を傷つける
- 歯を痛める
などは対応が必要です。
しかし、
背景を理解せずに
「やめなさい」
だけでは解決しないことも多いのです。
噛む背景には不安が隠れていることもある
特に、
環境の変化や緊張が強い場面で、
噛む行動が増えることがあります。
例えば、
- 新学期
- 初めての場所
- 集団活動
- 人が多い環境
などです。
この場合、
噛むことによって安心感を得ようとしている可能性があります。
家庭でできる工夫

まず大切なのは、
「なぜ噛んでいるのか」
を観察することです。
例えば、
- 暇なとき?
- 緊張したとき?
- 集中するとき?
- 疲れたとき?
などを見ていくと、
背景が見えてくることがあります。
噛む以外の感覚入力を増やす

固有受容覚を必要としている場合には、
- トランポリン
- 綱引き
- 荷物運び
- クッション遊び
- マット運動
などが役立つことがあります。
身体全体へ感覚入力を入れることで、
噛む行動が減ることもあります。
「噛む」ことを通して見えてくるもの
噛む行動は、
単なるクセではなく、
脳や感覚の状態を教えてくれるサインであることがあります。
大人から見ると困った行動に見えても、
子ども自身は
- 落ち着きたい
- 感覚を入れたい
- 安心したい
という目的で行っていることがあります。
まとめ

子どもの「噛む行動」には、
- 口の感覚を求めている
- 固有受容覚を求めている
- 不安を調整している
- 集中を維持している
など、さまざまな背景があります。
大切なのは、
「噛むことをやめさせる」
ことだけではなく、
「なぜ噛んでいるのだろう?」
という視点を持つことです。
感覚の視点から理解すると、
これまで困った行動に見えていたものが、
子どもなりの工夫として見えてくるかもしれません。


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