プログラミングは今後の必須科目になるだけでなく、プログラミングの思考そのものがとても役に立つものであると言えます。子どもだけでなく、大人でさえも。
今回は、いま教育で重要になってきているプログラミングについてお話していきたいと思います。
諸外国のプログラミング教育と日本
AI(人工知能)が大いに発達した現代、そして子どもたちが大人になる未来に向かって、コンピューターやAI、そして仮想現実の世界は進化していくでしょう。
諸外国では、すでに初等教育からプログラミングが必須教科となっている国々があります。
英国(イングランド) | 2015~ |
オーストラリア | 2016~ |
フィンランド | 2016~ |
ロシア | 2010~ |
今の子どもたちにとって、パソコンをあつかえることは必須です。
しかし、世界にくらべて日本は「令和2年度から小学校プログラミング教育が必修」となり、初等教育での授業が始まったばかりです。
アメリカ、イギリスと比較したときの日本の情報教育の問題点
ある論文では、特に初等中等教育における情報教育について、アメリカやイギリスと比較した時、日本には3つの問題点があると指摘しています。
・日本の小学校での情報学習内容には冗長さを生じる(無駄が生じる)可能性
・小学校から高等教育までの学習の継続性に関する問題
・教員の資質のばらつき
アメリカやイギリスが行っている情報教育と比較すると、日本の教育は無駄な部分があるかもしれないという指摘です。また、両国の情報教育に関するカリキュラムは5~16.17歳の間で継続して示されているのに対して、日本ではまだ継続的に学びにくい環境であるということです。
子どもたちには、学校教育以外でもプログラミングを学ぶ場が必要です。
21世紀の新リテラシー コンピュテーショナルシンキング
そもそも、なぜプログラミングを学ぶ必要があるのでしょうか?
ある論文では、このように述べられています。
すべての子供の分析的思考能力として,読み,書き,そろばんの他にコンピュテーショナルシンキングを加えるべきである (WING 2006)
「コンピューショナルシンキング」ききなれない言葉です。
この点について、文部科学省が求める学習活動の内容にわかりやすく書いてあります。
「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」 (文部科学省)
つまり、プログラミングを通じて、理論的な思考力を身に着けることが大切と述べています。
文部科学省も、このプログラミングの思考力を求めているわけです。
これからの子どもたちに必要な思考力
ITやパソコン、スマホなどが発達した現代はもちろん、この先の未来において必要とされるのが、このコンピューショナルシンキング、つまりプログラミング的な思考力です。
しかしながら、日本のプログラミング教育だけで、そのような思考力を身に着けることができるのでしょうか?
私自身、この記事を書いていて子どもたちの将来が不安になりました。
学校教育以外にも、遊びや習い事として学ぶ機会を増やしていく必要があるのかもしれません。
プログラミングを楽しく学ぶ
プログラミングを楽しく学ぶには、どのようなものが良いでしょうか?
プログラミングの超基本を学ぶおもちゃがあります。
「はじめてのプログラミングカー」
対象年齢は、3歳からあそぶことができます。
プログラミングの導入として、基本を学ぶために最適なおもちゃです。
命令カードで、車が進む方向をきめます。目的地に向かって、どのように車を進めたらよいのか、どのように命令を出せばよいのか、プログラミングの超基礎を学ぶことができますね。
おもちゃだけでなく、もっと学びたいという方へ!
もっとプログラミングを学びたい方に、ピッタリの講座があるんです!
レゴを使ったプログラミング講座
毎回のテーマに沿ってレゴブロックを使用した教材がご自宅に届きます。
センサーやモーターなどを取り付けたり、iPadや無線とつないでロボットを動かすことができます。
あなたやこどもの発想・工夫次第でさまざまな動きのレゴを作ることができるのです。
プログラミング的な思考力を、大好きなレゴで学ぶことができる教材です。
大好きなレゴを自分で動かせるとなると、子どもたちの興味の芽生えを大きく伸ばすことができそうです!
ちなみに、任天堂switchのゲームで遊びながらプログラミングを学ぶことができるソフトもあります。
ここからは、プログラミング的な思考について、掘り下げていきましょう。
これを読むと、もっとプログラミングの思考の重要性がわかりますよ!
プログラミングの思考は5つのパターンがある
では、いったいどのような思考や考え方が身につくのでしょうか?下のポイントをご覧ください。
・抽象化
重要な部分は残し、不要な情報は削除する
・パターン認識
類似性からパターンを見つけ、問題解決に利用する
・分解
問題の理解や解決できるように、細かく分けて考える
・一般化
問題解決のための合理的な手順を定型化する
・評価
問題掛いつの手順を振り返り、必要に応じて修正や改善をする
すこし難しい言葉が並んでいますので、わかりやすい言葉に変えてみてみましょう。
じつは私、これを調べていて驚きました。なぜかって?
知能検査にも、似たような思考能力が求められています
知能指数、いわゆる『IQ』を出すための知能検査では、次のようなことが求められます。
知能検査とプログラミング的思考の共通点
たとえば、言葉の意味を理解し説明するという検査があります。この検査で得点を得るには、端的にしかも言葉の持つもっとも重要な部分のみを抜き出して解答しなければなりません。
あいまいな答えでは、減点か得点を与えられないのです。
つまり、いくつかある情報のなかで重要だと思われるポイントのみを選択するという「頭の中の情報の整理」が重要になってくるのです。
別の検査も例にとってみてみましょう。こちらはもっとわかりやすい例です。
複数の絵柄からその絵柄に共通しているパターンを見つける検査です。これはそのまま、プログラミング的思考のパターンを見つけて問題解決に利用するにあてはめることができます。
知能検査のいくつかには時間制限があるものや、時間によって得点の配分が変わってくる検査があります。つまり、いかに問題を早く解くかが重要となってきますが、それを実現するためには、もっとも合理的な手段や方法を考え出すことが必要となります。 求められている問題に対して、最適な解答を得るための分析力も求められます。
知能検査を分析してみると、共通していることが多いと感じませんか?
知能検査では、言葉の理解による知能指数や目で見た情報をもとに物を操作する知能指数のほか、知覚した情報を使って問題を解決する能力とその情報の処理速度についても知ることができます。
まさに、言葉と知覚された情報を整理し、それをもとに問題を解決するための糸口にする。そのための高い情報処理能力。
プログラミングを学ぶことで、これらを培うことができるというわけです。
おもちゃで学ぶプログラミング的思考
プログラミング的な思考について、以前紹介した「プログラミングカー」を例にとって詳しく見ていきましょう。
すこし長いので、興味のある方はお読みください。
プログラミングカーは、プログラミングの超入門編としてちいさなお子さんから楽しくプログラミングを学べるおもちゃです。
しかしおもちゃだからといってあなどってはいけません。遊びと気につかう脳の能力は、実に複雑で、多くの知的な発達を促すことができるのです。
プログラミングカーは、車本体と指示カードがセットになっています。
指示カードには「前」「後ろ」「右」「左」「止まれ」などがあり、車にかざすことで、その命令をひとつインプットすることができます。
たとえば、前に3つすすむとしましょう。
「前」「前」「前」と指示カードをかざします。
こんな地図を用意しました。
4×5のブロックが書かれた地図です。赤いところから、青いところまで行くための命令を考えてもらいます。
ルートはさまざまありますね。
では、ひとつ問題を出してみましょう!
「もっとも少ない指示で、最短ルートで赤から青に行ってみよう」
(ちなみに答えは、この記事の一番下に記載!)
このような課題を出された時に、脳はどのようにはたらくのでしょうか。
①問題文を理解します。
②いくつかあるルートを比較し、もっとも重要である「最短」という言葉にあうルートのみを選択します。
③自分が選択したルートを一時的に記憶しておきます。
④記憶をもとに、命令文を考えます。
⑤作った命令文を記憶しておきます。
⑥記憶をもとに、指示カードを順番にインプットしていきます。
⑦命令を実行します。
⑧もし、車が目的地まで到達しなかったら、指示を細かく分けてひとつひとつ確かめていきます。
⑨問題のあった命令を修正し、再度実行します。
様々なルートを比較し、パターンを見つけていきます。その中でもっとも問題に適した情報を選び出すわけです。プログラミングの思考が使われています。
選び出したルートにそって動くように、今度はどのような指示を与えるか、ひとつひとつ順を追って考えていきます。そのときに、自分がどのような命令をどの順番で入力したのかを記憶しておかなければなりません。この時に脳はワーキングメモリを使用します。
実際に車を走らせてみて、思い通りに動けば成功!ですが、思い通りに動かない場合はどうしたらよいのでしょうか? 問題解決のために、与えた指示を細かく調べていきます。そして、問題がある個所を見つけてそれを修正します。ここにもプログラミングの思考が盛り込まれています。
このプログラミングカーで求められることは、次のとおりです。
・目的や課題を理解する
・課題にあう最適なルートを選択する
・ルートや車にインプットする指示を記憶する
・誤りがあった時、どの命令に誤りがあるのかを細かく調べ、修正する
プログラミングの超初歩というおもちゃでありながら、必要な情報を選び出し、問題解決のために細かく分析し、修正するといったプログラミング思考能力がふんだんに含まれています。
答え:青の線(指示7つ、移動ブロック6つ)です。
まとめ
プログラミングは学校の科目にもなっており、教育にも大変重要とされています。
タブレットやパソコンのゲームでプログラミングを学ぶこともできますが、プログラミングカーやレゴを操縦するといったリアルな体験をすることは、知覚を通じた体験として、子どもの成長にとってもっともポジティブに働きます。
お子さんの好きな事や得意なことに合わせて、プログラミングを親子で楽しく学んでみましょう!
引用文献
・印出井 知希:小学校におけるプログラミング的思考の育成を目指すプログラミング教育の実践.Tokyo University of Science.577-580
・文部科学省:令和元年度 市町村教育委員会における小学校プログラミング教育に関する取組状況等調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20200107-mxt_jogai02-000003715_001.pdf
・文部科学省:新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf
・太田 剛 他:諸外国のプログラミング教育を含む情報教育カリキュラムに関する調査 -英国,オーストラリア,米国を中心として-. 日本教育工学会論文誌 40(3),197-208,2016
・山本 利一 他:初等中等教育におけるプログラミング教育の教育的意義の考察.教育情報研究 第32巻 第 2 号.3-11.2016
・浅井宗海 他:日米英の情報教育政策等から考察する将来を見据えたIT人材育成について‐初等中等教育におけるICT教育を中心に-
・Prifitera, A., Saklofske, D. H., & Weiss, L. G. (Eds.). WISC-IV Clinical Assessment and Intervention (2nd ed.). New York, NY: Elsevier, 2008
・大六一志:WISC-IV知能検査― 改訂の趣旨と活用の変化 ―.第53回日本児童青年精神医学会総会教育講演
http://www.human.tsukuba.ac.jp/~dairoku/files/Resume121031.pdf
・木谷 秀勝 他:ウェクスラー式知能検査の臨床的活用 : WISC-IIIとWAIS-Rを用いた縦断的活用の効果.Bulletin of the Integrated Center for Educational Research and Training (27), 85-97, 2009
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