愛着障害の支援において、
もっとも陥りやすい誤りは
「どうやって行動を変えるか」
から考えてしまうことです。
しかし、第3回で整理したように、
愛着障害とは
愛情が不足している状態ではなく、
愛情をため、使い、調整する学習が成立していない状態
でした。
つまり必要なのは、
行動修正ではなく
愛情の器が満ちる経験の再学習です。
本稿では、そのための基本原則と年齢別支援を整理します。
1.支援の順番を間違えない

❌ よくある支援の順番
- ルールを徹底する
- 約束を守らせる
- 行動を評価する
- 反省させる
これは前頭前野中心の支援です。
しかし、愛着障害の子どもでは
- 扁桃体の過敏性
- 安全感の不安定さ
- 情動の急激な高まり
が先に存在します。
情動が荒れている状態で
認知的統制を求めるのは、
空の器に「ちゃんと使いなさい」と命じることに等しいのです。
✅ 正しい順番
- 安全をつくる
- 感情を受け止める
- 関係は切れないと示す
- 落ち着いてから行動を整える
この順番が崩れると、
支援は不安定になります。
2.愛情の器を満たす「基本の声かけ」

ここでは全年齢共通の原則を整理します。
① 感情を先に言語化する
例:物を投げたとき
❌「なんでそんなことするの?」
❌「ダメでしょ!」
⭕「悔しかったんだね」
⭕「思い通りにならなくて腹が立ったんだね」
これは行動の肯定ではありません。
情動の存在を認めることです。
情動が言語化されると、
神経系は徐々に鎮静します。
② 行動と人格を分ける
❌「あなたは乱暴だ」
⭕「叩く行動は困る」
人格への攻撃は、器に穴を開けます。
行動の修正は可能でも、
自己否定は回復を遅らせます。
③ 関係は切らないと明示する
「でも、先生はあなたを嫌いにならない」
「怒っても、味方だよ」
これは甘やかしではありません。
安全基地の再学習です。
3.年齢別支援
🔹 幼児期(3〜6歳)

特徴
- 情動調整は他者依存
- 身体感覚が重要
- 言語理解が限定的
支援原則
- 声のトーンを一定に保つ
- 身体距離を近づける
- 長い説明をしない
具体例
【場面】順番を待てず押してしまった
❌「順番守れないなら帰るよ」
⭕(抱き寄せながら)
「待つの、むずかしかったね」
(落ち着いてから)
「順番は守るよ」
👉 幼児期では「理解」よりも
「落ち着く経験」を優先します。
🔹 学童期(7〜12歳)

特徴
- 試し行動が増える
- 表面的な反抗
- 自己評価が揺れる
支援原則
- 公の場での叱責を避ける
- 1対1の時間を意図的に作る
- 小さな成功を強調する
具体例①:宿題拒否
❌「いつやるの?」
⭕「やりたくないくらい疲れてる?」
(間を置く)
「10分だけ一緒にやる?」
👉 器が満ちると、行動は後からついてきます。
具体例②:嘘をついた
❌「嘘つき!」
⭕「本当のこと言うの、こわかった?」
嘘はしばしば、
関係を守るための防衛です。
🔹 思春期

特徴
- 無関心を装う
- 過剰な自立
- 感情否認
支援原則
- 詮索しすぎない
- 選択肢を与える
- 尊重を前面に出す
具体例
【場面】「別に」と返す
❌「ちゃんと話しなさい」
⭕「話したくない日もあるよね」
「話したくなったら聞くよ」
👉 思春期では
「尊重される経験」そのものが器を満たします。
4.やってはいけない関わり(前編まとめ)

- 条件付きの愛情
- 他児との比較
- 罰での統制
- その場しのぎの過剰な優しさ
これらは一時的に従わせても、
器は満ちません。
まとめ

愛着障害の支援とは、
- 行動を変えることではなく
- 安心を積み重ねること
です。
器が満ちれば、
自己制御はあとから育ちます。
後編では、
- 試し行動がエスカレートした場合
- 攻撃が続くケース
- 無関心・鈍麻の長期例
- 養育者面談での具体的やりとり
- 支援者が感情的になった場面の修正
までを扱います。


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