最近、SNSでADHDの自己診断チェックなるものが流行っていました。
わたしは、これをみて自分で病気を判断してしまう人がいたら、ちょっと危険だなとおもいました。
病院で診断を受けていないのに、自分はADHDと思い込んだり。うちの子はADHDっぽいと、勝手にレッテルを貼り付けてしまう可能性があるからです。
それともう一つ、発達障害のような症状を呈していても、実は発達障害ではない重大な別の病気(脳の病気)が隠れていることだってあるかもしれません。
だから、適切な医師の診断が必要なのです。
もっと具体的な理由については、ご覧になりたい方のみお読みください。
発達障害や自閉症、ADHDなどの自己診断チェックは、インターネットをみるとたくさん見かけます。それはとてもわかりやすく、興味をひくキャッチーな内容でもあることから、利用されるかたも多いのではないでしょうか。自己診断チェックリストがけっしてダメというわけではありません。他の病気においても、そのようなセルフチェックシートは数多くあります。
チェックシートは発達障害を知るうえで、もしくは病院にいくきっかけの入り口として、有益かもしれません。しかしながら、医療に携わる立場からものを申しますと、それを見た人がそのチェックシートだけで自己診断をつけることに、すこし怖さを感じます。
理由は5つあります。
・診断をつけることができるのは、医師です
・発達障害ではなく、重大な病気が潜んでいることもある
・自分で判断、あるいは親の判断でレッテルを貼り付けてしまう可能性がある
・それをみて気分が落ち込んでしまう可能性がある
・うちの子は大丈夫かな?というった不安感につながる
医師はその専門性と高度な知識からお子さんの様子を診察し、診断します。
おなじ自閉症スペクトラムでも、お子さんによって出てくる症状はさまざまです。ADHDもそうです。うごきの激しいADHDのお子さんもいれば、大人しいADHDのお子さんもいます。
また、自閉症スペクトラムとADHDが合併した症例もあるため、簡単な自己診断のチェックリストでは測りきれないほど病態(病気の症状や様子)は複雑です。
自分でできるチェックリストでは、その病態の全てを網羅することなんてできません。
ゆえに、その結果から病気を推測したり、推定したりすることは、あくまで傾向としてとらえておく必要があります。
そして、冒頭にも書いたように発達障害ではなく、ほかの脳の病気が隠れている場合があります。発達障害だとおもっていたお子さんに対して、脳のCTやMRIといった画像診断をおこなったところ重大な脳の病気が見つかったケースがあります。私自身もほんの数例ですが、経験があります。
たとえば「肩や背中の痛み」がじつは「心臓の病気」だったということがあります。
発達障害も同じことが言えます。生まれつきの場合もありますし、脳の病気の場合もあります。ココロの問題の場合もあります。
だから、高度な専門的な知識をもったドクターがいるのです!
自己診断はとても便利です。でも、そのチェックだけ行い、医師の診断をうけずに終わってしまう方がいたら、適切な支援が受けられないかもしれない。大きな病気に気がつかないかもしれないという危険もあるのではないでしょうか。
わかっています。さまざまなチェック自体は、あくまで自己診断やセルフチェックですので、診断について言及しているわけではありません。参考程度にとどめておくべきということも、わたし自身理解しています。
ですが、それを見て不安になってしまったり、気分が落ち込んでしまうこともあるでしょう。また、自分はADHDなんだとか、うちの子は自閉症スペクトラムかもといったレッテル張りをしてしまう可能性も秘めています。しかし、そのココロのフォローは自己診断ではできません。
私自身は、きちんと医師の診察を踏まえたうえで、適切な支援を受けることを推奨します。
また、おこさんの発達や行動に気なることがあれば、専門の支援や相談サービスに相談することが大切だと考えます。
診断の結果よりも、それを支援するのか、あるいは支援や相談にどのようにつなげていけば良いのかが大切だと考えます。
わたしが「子どもの気になる様子チェックリスト」を作ったわけ
実を言うと、そういった自己診断ができるチェックリストがあると、わかりやすいよねという声も聞かれたりします。そこで、わたしは考えました。
自己診断ではなく、お子さんのいろいろな様子をみて当てはまることがあれば、受診もしくは相談を勧めることができる、目安となるチェックリストを作成しようと。
ただしく、発達障害を理解しましょう。
子どもの気になる様子 チェックリスト
このチェックリストでわかること
うちの子、もしかしたら発達障害かも?と心配になったあなた。
チェックリストに当てはまるものがあれば、なんらかの診断名が付く可能性があります。相談や受診を考えるひとつの目安におつかいください。
チェックの使い方
・運動面、生活・学習面、行動面、コミュニケーション面の4つに分かれています。
・おもに5、6歳以降の方を対象としています。(3,4歳までは成長の個人差が大きいため対象としていません)
・あてはまる、当てはまらないの判断基準は3段階です。
ほとんどいつも、常にあてはまる | 生活の中で70~100%あてはまる | ✔(チェック)をいれます |
時々あてはまる | 生活の中で40~69%あてはまる あてはまるときが半分くらいある | △(三角)マークです。注意してみていく必要がある項目です。 |
稀にある、ほとんどない | 生活の中で40%未満しかあてはまらない | チェックしないでください |
・各項目の最後には、☑がついた項目によって、生活や学業に影響が出ている、こまっているかの判断をする質問があります。必ず、ご自身で判断をつけてください。
結果のつかいかたはチェックリストのあとに記載しています。
チェックリスト 一覧
4項目すべてをPDFでもダウンロードできます➡
運動面 チェックリスト
生活・学習面 チェックリスト
行動面 チェックリスト
コミュニケーション面 チェックリスト
結果のみかた、つかいかた
あくまでも、発達障害がある、ないという判断をするためのチェックではありません。病院を受診する、もしくは、適切な相談を受けるための目安としておつかいください。
ひとつでも☑があり、生活に影響が出ている、こまっていると感じているに☑がついた場合
専門医の受診や子育て支援、相談サービスの利用、学校の支援員の先生等に相談するといったことをおすすめします。
また、かかりつけの小児科の先生方の中には、専門の医療機関に紹介状を書いて下さる先生もいますので、お近くの小児科にお問い合わせしても良いかもしれません。
☑がついた項目はあるが、生活に影響が出ている、こまっているには☑がつかない場合
チェックがついた項目は、注意して見ていく必要があります。 生活上で困っていないと親は感じていても、子供自身が困っていると感じている場合がありますので、お子さんにこういったことで困っていないかを確認することも大切です。
特徴的な行動は、その子の個性や性格として捉えることもできますし、もしかすると成長の過程の一部かもしれません。考え方はさまざまです。
もし、心配と感じるならば専門の医療機関や相談サービスなどの利用を勧めします。
△(三角)がついている項目
今後、注意してみていく必要がある項目です。
年齢があがるにしたがって、行動が目立ってくる場合もありますし、ぎゃくにおさまる場合もあります。
あなたのお子さんはいくつあてはまりましたか?
一つですか?それとも、複数あてはまることがありましたか?
もし、このチェックに一つでも当てはまることがあれば、相談する意味は十分あると考えられます。
このチェック項目は診断基準も取り入れていますが、じつは
実際に相談のあった内容をもとに作成しています。
もともと障害をもって生まれた場合は、早くからしかるべき支援の手が入ることが多いですが、軽度の発達障害やボーダーと言われるお子さんたちは、見過ごされてしまうことも多いのです。
チェックが一つついただけだけど、こんなことで相談してよいのかしら?
こたえは、「YES」
どんな些細な事でも、あなたが気になるのであれば相談すべきなのです。
だって、支援を受けているお母さんたちは、チェック項目に挙げられている内容で相談したのですから!
もっと言うと、
なんかわからないけれど様子がおかしい
成長がほかの子と違う
といったあいまいだけど、お母さんの勘で相談される方もいらっしゃいます!
成長や発達が気になる場合は、早めに相談を!
このチェックはあくまでも「診断」ではありません。チェックがついたからと言って、障害があると判断するのは危険です。
でも、きっと心配だったり、困っていることがあるからこの記事を読んでいるんですよね。
対処方法はただ一つ! 悩んでいるなら、早めに専門機関に相談しましょう。専門機関とは、発達障害を専門にみてくれる病院やクリニック、子育て相談、支援員の先生などです。
もよりの小児科さんに、こういった行動が気になるということを言っても良いかもしれません。その先生が、専門病院へ紹介状を書いてくれるかもしれないからです。
大事なのは、直感にしたがって動くことです。
親であるあなたは気がついているはずです。自分の直感を信じて、思い切って相談してみましょう。
障害があっても、なくても、相談すれば必ずものごとは動き出します。
まずは、あなたの第一歩をふみだしましょう!
まとめ
自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害などなど、発達障害いろいろありますが、お子さん一人一人、出てくる症状や困っていることも大きく異なります。
発達障害を病名で捉えるのではなく、何に困っているのか、どのような特徴があるのかを明確にして、然るべき支援を受けることがとても大切です。
このチェックリストが、いま困っている人や子どもの様子で悩んでいる人の背中を後押しする、ひとつの材料になれば幸いです。
最後に、どうしても医療機関や相談サービスにいくことをためらうのであれば…
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参考文献
・WHO.ICD-11
https://icd.who.int/en
・大井静雄 他:「発達脳専門外来」にみる発達障害100例の病型分類および自閉症経年症候推移分析法[Oi-PDD Chronology Score(versionⅢ)]考案による自閉症スペクトラムとADHDの自然歴からみた治療効果の解析法.Journal of kid’s Brain Science.vol1 No.1 43-56.2018
・河野政樹:認定発達障害コミュニケーション初級指導者テキスト.こころ印刷.2016
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